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第39話 ラバウル航空戦

大日本帝国領 ラバウル島


~大日本帝国陸海軍航空隊飛行場~


ウゥゥーー!


ラバウルにある海軍航空隊の基地では現在、空襲警報が鳴り響いていた。


「対空電探に感ッ!敵機およそ50が此方に向かって航行中!迎撃隊は直ぐに迎撃態勢を整えよ!」


「回せー!回せー!」


「対空砲員は配置に付けー!」


「弾運べー!手の空いている奴も手伝え!」


整備員はそれぞれの機体を簡単に点検し、パイロットが点検を終えた愛機に乗り込み高空へと駆け上がって行く。それと同時に、対空陣地でも弾薬が運び込まれ、兵士達が慌ただしく手の空いた兵士も動員し、対空戦闘準備を始める。


「弾を早く持って来てくれ!」


「第3機銃用意よし!」


「第4機銃用意よし!」


「第1高角砲用意よし!」


迎撃機が全機上がった後、基地では対空戦闘用意が整えられていた。


「司令、全攻撃隊の退避が完了しました。対空陣地の準備も後数分で完了します。しかし、アメさんも諦めませんね。これで5回目ですよ・・・」


「後少しの辛抱だ。今、独艦さんがこっちに増援として向かって来てくれている。独艦さへ到着すれば、この航空戦も無くなるさ」


「そうですね。司令も急いで防空指揮所に」


「うむ」


副官にそう言われ、司令も防空指揮所に向かった。





~アメリカ陸海軍 攻撃隊~


アメリカ軍攻撃隊は、B-25が25機、B-24が15機と護衛のF6F20機がラバウル基地爆撃の為に迫っていた。


「全機に告ぐ!この作戦は大統領も関心を示している。この作戦が成功すれば我々は勲章を授与されるかもしれん。全員気合い入れて行くぞ!」


『しかし隊長、これまで出撃した攻撃隊は尽く撃墜されたと聞きましたが・・・』


部下の一人が不安げな声を漏らした。


「不安がる事は無い。情報部の報告ではジャップの報告では対空レーダーは粗悪だと報告が入っている。今までは護衛が居なかったから地上の対空砲火に晒されただけだ。我々には新鋭のヘルキャット隊が護衛している。大船に乗ったつもりで敵の基地まで行こう!」


体調がそう言い、後少しで敵航空基地が見える距離に近づいた時、


『隊長!太陽から敵機!突っ込んで来る!』


無線機から兵士の慌てた報告が入って来た。


「迎撃しろ!護衛隊、しっかりと頼むぞ!」


隊長がそう言い、10機のF6Fが編隊を離れ、向かって来る敵機に攻撃を仕掛ける。




~日本軍迎撃隊~


「お前等!敵の爆撃機に爆弾1発落させるんじゃねえぞ!1から12番機は向かって来る敵護衛機の相手、それ以外は爆撃機を狙え!」


迎撃隊隊長である赤松貞明中佐がそう叫び、迎撃機である旭光を急降下させてF6Fに狙いを定める。


「悪いが、俺達迎撃隊はお前等と違って新兵(ルーキー)じゃないんでね!」


赤松はそう言うと、照準器に敵機を合わせ、機銃発射ボタンに軽く触れる。


ドドドドドドドドドッ


空母に搭載されている烈風よりも小型の20mm機銃だが、アメリカ軍機に対しては未だ絶大な威力を持っていた。


ガン ガン ガン・・・ドオォーン


多数の20mm弾を受けてF6Fが爆散する。


赤松の予想通り、ガ島のヘンダーソン飛行場に配備されたF6F隊の殆どの人間が新人で、優秀なパイロットは空母搭載機の人員として引き抜かれているのが実情だった。陸軍の航空隊にも派遣を要請したが、ハワイなどの防備を固める為に派遣は断られていた。


対する日本の航空隊は必ず一回は実戦に全パイロットが出撃しており、ロッテ戦術を採用している事もあって敵の新人のパイロット達を弄び、撃墜していくが、数機のB-25とB-24が迎撃隊の攻撃を掻い潜り、航空基地へと迫っていた。





~ラバウル 陸海軍航空基地~


『対空電探に感ッ!迎撃隊の攻撃をかわした敵機8機接近中!』


スピーカから流れる電探室からの報告に合わせて対空陣地の兵員達は対空砲の砲身を敵機が来る航路に向ける。


「全砲弾種は三式対空散弾だ。間違いは無いな!」


対空砲隊長が各砲の班長に尋ねる。


「はっ!全砲、三式弾の装填は完了しております!」


「そうか。敵機を確認し次第砲撃開始だ。敵に目に物見せてやれ!」


そう話している内に、


「敵機確認!」


「高射砲、放てぇー!」


ドン ドン ドン ドン


隊長が叫び、オート・メラーラ76mm砲と対空電探を二式戦車の車体に搭載した二式自走高射砲が火を吹く。


グワアァーーン グワアァーーン


対空電探によって正確に放たれた砲弾は近接信管の助けもあって、爆撃コースにのっていたB-25、B-24を撃墜する。


「機関砲放てぇー!」


ドドドドドドドドドドドドドドッ


87式自走高射機関砲をモデルに作られた一式自走高射機関砲(40mm機関砲2門装備)が射程距離に入った爆撃機に濃密な弾幕を張り、その弾幕に捉えられた爆撃機は蜂の巣になり爆散した。


「残存の敵機、引き返し始めました!」


「今回も防衛成功したみたいだな。独艦さん、早く来てくれよ」


司令は白煙を吹きながら引き返す2機のB-25を見ながら呟いた。





~独立連合艦隊 旗艦瑞樹長官室~


「刹那、ラバウル基地が5回目の攻撃を受けたって通信が入ったわよ」


通信の内容が書かれた紙を持った小夜が長官室に入って来た。


「そうですか。アメリカ軍も中々諦めませんね・・・空爆も全て防いでいると言うのに。それで、基地に被害は?」


「敵は爆弾一発投下できなかったそうよ。小百合さん達が制作した二式自走高射砲と一式自走高射砲のお陰ね。前線の兵士も使い勝手が良いから喜んでいるみたいよ」


「母さん達も頑張ってくれていますからね。小夜、ラバウルには後どのくらいで到着するかしら?」


「このまま順調にいけば明日までには到着するわ」


「そう。少し乗員に休息を取らしてからガ島攻略になりそうですね」


「その方が良さそうね。一日も早く攻略したいところだけど乗員も少なからず疲労がたまっている筈よ」


小夜の言葉に頷き、


「ラバウルに一日だけ停泊して、明朝ガ島に向かいます。各艦への連絡をお願いします」


刹那の言葉に頷き、


「分かったわ。じゃあ、失礼するわね」


小夜はそう言い、刹那に一礼すると長官室を後にした。


「この作戦が終わったらハワイ・・・ハワイが陥落して講和にアメリカが応じてくれればいいけど、応じなかった時は・・・」


刹那はそう呟き引き出しの中から【機密】と書かれた封筒を眺めていた。


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