第21話 ビルマ攻略戦
皇紀2602年(1942年)3月18日
ビルマ・タイ国境
~日本軍ビルマ攻略指揮所~
タイとの協定で、安心してタイ・ビルマ国境に待機している日本軍の陣地には、九三式中戦車と、九三式中戦車と姿は同じだが、大きさが全然違う戦車――新型の二式戦車が出撃の時を今か今かと待っていた。
「司令、全戦車師団、機械化歩兵師団配置に着きました」
「そうか。報告ご苦労」
テントに入って来た伝令の言葉にそう言って頷いたのは、史実ではインパール作戦に第15師団長として反対し、牟田口廉也中将に更迭された山内正文中将だった。
「全軍進軍開始!」
山内が無線でそう告げると、エンジンを吹かせて待機していた九三式中戦車、二式戦車、一式半装軌装甲兵車等の車輛群が一斉に動き始めた。
「さて、我々も行くとしますか。どうぞこれにお乗りください」
「有難う。ヤマウチ中将」
山内は一人の男性にそう告げると一緒に、一式半装軌装甲兵車乙型(指揮専用車)に乗り込んだ。この男性は、ビルマの独立運動勢力「タキン党」のリーダーであるアウン・サンである。今回の作戦では、史実と同様に義勇兵も参加していた。
「二式戦車を保有している第23戦車師団を先頭に前進!今日中にシッタンに到着するぞ!」
通信能力が強化された一式半装軌装甲兵車乙型で山内がそう言い、さらに日本軍は速度を上げてイギリス軍とドイツ軍が守るシッタンに迫った。
ビルマ シッタン
~イギリス。ドイツ軍防衛戦~
「日本軍が直ぐに来るぞ!防衛戦を固めろ!」
現在、防衛陣地では必死で陣地の構築が行われていた。日本軍の侵攻を阻止するためにドイツやイギリス本国から派遣されたのは、80両のマチルダ、90両の6ポンド砲を装備したチャーチルや今月に入って試験的に生産され始めた70両のⅣ号戦車F2型だった。
「戦車隊は、何時でも動けるようにしておけ!」
「機関銃弾を持ってきてくれ!」
「対戦車砲の配置急げー!」
「8.8cm砲の弾薬は此処だ!此処に持ってきてくれ!」
「敵戦車を先遣隊が確認した!戦車隊はこれを迎撃せよ!」
弾薬や銃火器を急いで運ぶ兵士達より先に、戦車隊が日本軍の戦車を迎え撃つ為に前に出た。
~日本軍 第23戦車師団~
「師団長、敵戦車発見!あれは・・・ドイツ戦車です。確か、Ⅳ号戦車!さらに、後方にチャーチルとマチルダも確認!」
「全車戦闘開始!但し、単独行動はするなよ!」
『『『『『了解!』』』』』
師団長の言葉で全二式戦車が敵戦車に向かって行く。
「目標、二時の方向!撃てー!」
ズドオォーン
二式戦車に搭載されている65口径125mmライフル砲が火を吹き、向かって来ていたⅣ号戦車を吹き飛ばす。
「絶対に止まるな!進み続けろ!」
師団長がそう言う間も行進間射撃が可能な二式戦車は主砲を放ちながら確実に敵戦車を葬る。
ガガアァーン
「ちっ、被弾したか・・・操縦手、被害は?」
「装甲が弾いたので被害は軽微。戦闘可能です」
二式戦車の最大装甲厚は295mmである。長砲身の75mm砲を搭載しているⅣ号戦車、6ポンド砲を搭載しているチャーチル歩兵戦車もこの装甲を撃ち抜く事はまず不可能である。
「よし、このまま敵戦車を駆逐するぞ!」
隊長がそう言い、二式戦車の群れは敵の戦車をガラクタに変えながら敵の防衛ラインまで迫った。
~イギリス・ドイツ軍防衛部隊~
「くっそ、前衛部隊は何をしていたんだ!?敵車両が全く減って無いじゃないか!」
ドイツ軍砲兵隊の隊長はそう叫び、
「対戦車砲、先頭を走って来るあいつを狙え!」
砲手達にそう告げ、その言葉に従い7.5cmPaK40、3.7cmPaK36、5cmPaK38、6ポンド対戦車砲が接近して来る戦車にそれぞれ照準を合わせる。
「フォイエル!」
ドン ドン ドン
砲兵隊長の号令で息を潜めていた砲が各所で一斉に火を吹き、それぞれの目標としていた戦車に命中し、撃破したと思われたが、
ガキーン ガキーン ガキーン
「何!?は、弾かれた・・・」
「あれは化け物か・・・」
3.7cm砲や5cm砲はともかく、7.5cm砲、6ポンド砲までもが装甲に弾かれた光景を見て、砲兵達は一気に恐慌状態に陥り始めた。
「落ち着け貴様等!8.8cmを持って来い!」
隊長が部下達を落ち着かせ、後方に待機させていた8.8cm砲が引っ張り出され、戦車に照準を定める。
「装填完了!」
「フォイエル!」
ドオォーン
8.8cm砲が火を吹き、先頭を走る戦車に命中し撃破!とドイツ・イギリス軍兵士は思ったが、
ガキイィーン
戦車の装甲はいとも簡単に連合国最強を誇る8.8cm砲の砲弾を弾いた。
それと同時に、ドイツ軍とイギリス軍の期待も簡単に崩れ去った。
「も、もう駄目だー!」
「逃げろー!」
自分達の持つ全砲が敵戦車に敵わないと悟った兵士達は我先にと逃げ始めたが、
「くっそ、もう一発撃ち込むぞ!装填急げ!」
一部の砲兵達は諦めず、もう一度砲弾を当てようと考えていた。
「装填完了!」
「よし!うt・・・」
グワアァ―ン
此方よりも先に、敵戦車である二式戦車が榴弾を放ち、砲兵陣地を吹き飛ばす。
~日本軍 第23戦車師団 隊長車~
「隊長、1時の方向アカ(敵対戦車砲)!」
「心配するな!踏み潰せ!」
「了解!」
メリメリメリ
隊長の言葉通り、敵が砲撃準備をしていた対戦車砲は踏み潰された。
ガキーン
「ちっ、また貰ったか!被害報告!」
「被害なし!」
「よし、2時の方向!撃て!」
ドオォーン
125mm砲が火を吹き、敵対戦車陣地は粉々に吹き飛ばされた。
日本軍は、連合国軍が予想していなかったスピードで防衛ラインを突破し、経った1日でシッタンに拠点を置いていたドイツ・イギリス連合軍を包囲、降伏させ、そのままビルマの首都であるラングーンを占領し、ビルマ攻略戦は日本軍の大勝利として終結した。
マニラ占領後、アウン・サン率いる「タキン党」が政権を作り、日本の支援を受けながら新たな国づくりを懸命に取り組み、日本軍も「日本軍人として、一人間としての誇りを忘れるな」と言う天皇の言葉により、規律正しく丁寧に現地の人と接し、独立を達成した現地の人々からは「解放軍」として歓迎され、友好な関係を築いていた。
また、この時初陣した二式戦車の情報をドイツでは断片的ではあるが受け、新たに重戦車であるティーガーⅠ、ティーガーⅡの制作に取り掛かり始めた。
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