おひめさまごっこ ~ドンゲルザッカーのなぞ (1)
本編 ep.243 「第43話:うちの姉ちゃん -4-」の間の出来事です。
ロハスが姪と遊ぶだけ、with バルガス。最後までほのぼのです。
その家は、内海に面したルザの町の高台にあった。
朝、家長であるスガスは仕事に出かけた。妻のリリアは朝の家事をしたあと、町のご婦人たちの集まりへ意気揚々と出かけて行った。
家の中に残されたのは、夫妻の娘・セリア(二歳)。
そして旅の途中に立ち寄ったリリアの弟・ロハスとその仲間たちであった。
【パーティーの現状】
・ティンラッド(船長)(パーティーの統率者)
別に用事もないのに『港へ行く』と言って姿を消した。
・アベル(神官)
ティンラッドについて行った。
・ハールーン(魔物遣い/暗殺者)
『このキレイな子をみんなに見せて自慢するわ!』と鼻息を荒くしたリリアに強制連行された。
・オウル(魔法使い・攻撃魔法は使えない)
宿代の一部としてさまざまな面倒くさい雑事を家の中で行うという任務がある。
・ロハス(家主の妻の弟/商人)
『セリアの面倒を看ておくように』と姉から厳命されている。
使命が果たせなかった場合、おそらく死ぬ。
・バルガス(闇の魔法使い)
特に何も言いつけられていない。
ということで、ロハス、バルガス、そしてセリアが居間にいる状態で今回の物語は始まる。(オウルは風呂場のカビを取るという任務に向かった)
バルガスは暖炉の前に腰かけて、黙って古い魔導書の頁をめくっている。
「じゃあ、遊ぼうか。セリア」
ロハスはため息をついてから、幼い姪に向かい合った。
「うん」
セリアは生真面目にうなずく。
「おひめさまごっこして。セリアがおひめさまね」
「わかった。じゃあロハスおじちゃまは王子さまかな?」
にっこり笑った叔父の言葉に、彼の姪はきっぱりと首を左右に振った。
そして、
「ちがう。おじちゃまは、ドンゲルザッカー」
と厳粛に言った。
「ドンゲル…… 何?」
「もおー。しらないの?」
セリアは母親そっくりの口調で言って、眉を逆立てた。
「ドンゲルザッカーでしょぉ。わかる? ド・ン・ゲ・ル・ザ・ッ・カ・ー」
ロハスは助けを求めるようにバルガスを振り返った。
バルガスは素早く目をそらして拒否の意を示した。
ロハスはあっさり諦めた。相手の性格はわかっている。ドンゲルザッカーなるものが何なのか、知っていようがいまいが援軍は望めない、そういうことなのだ。
ならば孤軍奮闘するしかない。
ロハスは自分の武器を頭の中で確認する。
使えそうなのは『交渉力』・『会話術』・『情報収集』の三つの能力だ。
これらについてはどれも子供のころから鍛えぬいている。
今こそ、その力を発揮するときだ。
ロハスは敵(姪)(くどいようだが二歳)に向かい、最初の攻撃を放った。
「セリア、ごめんね。おじちゃま、ドンゲルザッカーって何かわからないんだ。セリアがおじちゃまに、教えてくれる?」
知らないことを素直に認めることで好感度を上げる。
さらに『教えてほしい』と依頼して相手の自尊心をくすぐる。
優位に立ったと感じることで、相手の口はほぐれやすくなる。これにより叔父と姪との距離感を縮めつつ、遊びに必要な知識を相手に提供させることが出来る。『情報収集』の基本技のひとつである。
「もおー、おとななのに、しかたないですねえー」
これも母親そっくりの口調だったが、セリアは見るからに得意げな表情になった。小さな子供が大人から教えを請われるのは嬉しいのだろう。
作戦はうまくいきそうだ。ロハスは内心、ほくそえんだ。




