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第九十四話 消えた親友の居場所

最終回です。


 我は青竜が言っていた場所に来た。


『創造神がいつもいた場所』


 どうやらこの島には、獣人が住みついているようだ。大陸から南に離れた小さな島。ここの時の流れが好きだと白竜が昔言っていたのを思い出す。


 島の獣人達に見つからぬよう、暗闇に紛れて、ひと気のない森の中に降り立った。

 明かりもなく、月と星が空に輝いている。どこからか懐かしい香りが風に乗って我を包み込む。


「おや。こんな所に来たのかい?」

 突然声をかけられて、勢いよく振り返った。真っ暗な木々の間から影が近づいてくる。

 目を凝らしてその影を見つめる。

 雲の切れ間から滲み出る月明かりに照らされたその影は、小さな亀だった。亀の獣人だろうか。

 我に気付かれずに近づいたというのか……。


「誰ですか」

 どうせ分からないだろうと思いつつ話しかける。

「今はシマと呼ばれておる」

 返事が返ってきたことに驚いた。

「なぜここに来たのかな? 黄竜」

 その話し方に覚えがある。だがそんなはずはない。

 ゴクリと喉を鳴らし、脈打つ心臓を抑えながら声を出す。


「創造神……様……?」


 シマと名乗った亀はにこりと笑った。

「いつも皆を見守っていた。姿を変え、世界の一部として存在していた。白竜も黒竜も最後は幸せそうだった」

 伏し目がちに言葉を連ねる。

「あの人間の子がここまでやるとは思わなかった。初めて会った時は頼りなく、力もなかった。だが、違った」

 誰の話をしているのか分からない。それ以上に我は憤りと悲しみをぶつける他なかった。

「創造神様……なぜ今まで身を隠しておられたのですか! 白竜も黒竜も苦しんでいました!」

 自然と声色が強くなる。

 創造神様がいてくれれば……こんなことには……。何度も孤独の中でずっと考えていた。


 創造神様は悲しそうに笑った。

「許してくれとは言わない。だが、これで良かったのだと今は心から感じている。黄竜、お前もではないか?」


 我は言葉に詰まった。そして、また我は秘密を抱えなければならないのかと思った。だが、今までと違い、重荷だとは感じなかった。

 さっきまでの憤りは消えていた。

 風が草木を揺らす音だけが聞こえる。


「我は……ここにいてもよろしいでしょうか」


「好きな場所で好きに生きればよい」

 創造神様は答えると、ゆっくりとした動作で暗闇の中に消えていった。


「ありがとうございます」

 消え入りそうな声でお礼を述べ、空を見上げる。空に星が流れていった。





 ◆


 魔法室に入って、机の上にある小さな木箱に向かって足を進める。宝石や模様が綺麗に施された宝箱。それを手に取り、重みを感じながらゆっくり開ける。

 中には水色の便箋。表には『かなこ』。裏返すと『海』と書かれている。


 可愛いアライグマのシールを丁寧に剥がして中身を取り出す。綺麗に折りたたまれた紙を開くと、数行書かれているだけだった。


『ペンダントから手紙が出てくるの気持ち悪い。ヌルンって出てくる』


 一行目を読んだだけで口角が上がった。


『マスターの天昇の儀おつかれさま。うまくできたみたいだね。青い花にしてくれてありがとう。ダルシオンさんの号泣っぷり見たかったな』


 たったこれだけ。『元気?』の一言もない。

 でもこれがちょうどいい。私たちにはこれで充分。


 椅子に座って新しい紙を目の前に広げる。いつの間にか書きなれた羽ペンで文字を書こうとしたその瞬間、遠くで爆発音が聞こえた。

 窓から見える煙を見て、大きなため息が漏れた。


「カルロさん……また学校の授業で失敗したのか……」


 私はペンを置いて立ち上がった。

 そして、遠くからでもよく聞こえる、シルビアさんの「バカヤロー!」という言葉に引きずられるように、魔法室を後にした。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。


親友探しから始まり、たくさんの出会いと想いを重ねて、別れという形の新しい一歩を踏み出しました。全員が主人公になる物語です。


あと先考えず勢いのまま書き始めた作品です。何度も諦めかけ、何度も悩みました。そのたびに、背中を押してくれたのは読んでくださる皆様でした。

本当にありがとうございます。


もし楽しんでいただけましたら、評価やレビュー、感想を贈っていただけると嬉しいです。


次回作でもお会いできたら幸いです。

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