2.14 異世界転生者 Part豊葵
これからPartのあとの文字がその回の主人公です。(実際は一人ですが)
恐らくこれからは真っ直ぐ一本の物語ではなくいくつかのストーリーが交わり合うようなものになると思うので見返すとき用にPartをご活用ください。
Partがついているのは準主人公(語り手として出る回数が多いキャラクター)だけですのでベルの分身体が多めです。ベルには付きません主人公ですし。
Side:あつき
街道で寝ていたら人に捕まって(保護されて)しまった。ホームレスに見えたのかも……実際にホームレスだったね。
「それじゃあカミシロさん。ここに寝るまでどこで何してたのか思い出せるっすか?」
「えっと、ルーと一緒に森から街道に出て。それから眠くて歩けなくなって。そこからは覚えてません。」
「そこまで覚えてたら十分っす。ルーってのはそのスライムっすよね。」
「はい。ルーにはすごい助けられて。オークに襲われたときも僕を守ってくれたんです。」
それがデフォルトなのか険しい顔をしたリュークさんが訪ねてくる。
「オークと会ったのか?」
「は、はい」
「一体どこにオークが居た?」
「地図は持ってなかったので、詳しくは……でも大体それから半日まっすぐ歩いたはずです。」
「歩いて半日か……こりゃ面倒だな。」
「え? なにか不味いことしましたか?」
「いや、あんたがなにかしたわけじゃない。ただ、報告をギルドにしなきゃならなくてな。不確実でも異変の報告が義務付けられてる。ちょっと話をするだけだから気にすんな。」
「ギルド? ギルドってなんですか?」
「ギルドを知らない? こりゃ相当箱入りだったんだな。
ハッチ、どうせ他のメンバーもすぐ帰るだろうし、先に街ん中行こうか。カミシロには行く途中で説明してやるよ………ハッチがな。」
言われたとおりに歩きながら、リュークさんがあたりの警戒をしながらハッチさんが色々説明してくれた。
ルールが云々や、伝説の冒険者の武勇伝や現存してる冒険者のトップの話。
その間ルーは僕の頭の上でぽよんぽよんしてた。
武勇伝やトップの話は興味深かったが、冒険者のルールや説明を聞いたのは二度目なので適当に聞き流しておく。
「おい、ハッチ。出てきたぞお前がやれ。」
リュークさんが言うや否や、顔を引き締めたハッチさんが森から飛び出してきた緑色の小さな醜悪な小人のようなモンスターを次々と切り倒して行く。
ルーは僕の影に隠れてぽよんぽよんと震えている。
すると、みるみる敵はハッチさんの剣で切り倒されていった。
それをぼうっとルーと一緒に見ていると、こちらを見もせずにリュークさんが言った。
「あれを知らないのはどうかと思うが、あの化け物はゴブリンだ。よく、子供でも倒せるとか抜かしてるやつもいるが、それは運が良ければの話だ。運が悪ければハッチのほうが死ぬ。自分でも勝てるとは思わないことだな。」
なるほど。
実際に遭遇したわけじゃないモンスターの説明はためになる。
その後何も無く街道を抜け、街に入れた。
門番には森に何日も迷い込んでいたから記憶が曖昧だとリュークさんが代わりに説明してくれた。
どっかの貴族の箱入りだと説明するよりも楽だと笑いながら教えられた。
そして、それを告げられたのは、リュークさんたちがパーティーで使ってる宿屋に招待されたときのこと。
「俺らは別に金に余裕があるわけじゃない。むしろ宵越しの金を持たない冒険者にしては金を持ってる自信はあるが、それでも人、一人を養うほどの余裕がない。」
「……そう…ですか。」
この世界は別に作り物じゃない。
ご都合主義なんて都合の良いものは存在しない。
と、ルーは僕の頭の上で嘆いているようだ。
「そんな! リュークの兄貴。どうにか独り立ちするまで面倒を見ることは出来ないっすか!」
「そうだな。確かに出来る。だがな、それは本当に一人だ。その枠は既にハッチに使っている。これからもパーティーで活動していく有望なメンバーと行きずりに拾ったただの他人。どっちにそれを使った方がいいかは明らかだ。」
「……」
「でも!「それが嫌なら、ハッチはここを抜ければいい。それで万事解決だ。」
「いえ、リュークさん。あそこで寝ていたところを街に送っていただいただけで結構です。」
「カミシロさん、あんたはそれでいいんすか?」
「仕事もあてが見つかったところです。」
「それは冒険者か?」
「そうです。今からでも仕事を探してきます。」
「なら、今日は一緒に行くっす。それならいいっすよねリュークの兄貴。」
「それくらいなら構わない。何なら俺も一緒に行こう。」
そう答えたリュークには、ハッチの行動が正解だったのか、嬉しそうな苦笑いをしていた。
★☆★
Side:あつき
なんとも大きく豪華で立派な建物……の隣に建っていた年季の入った建物に入る。
建物は冒険者ギルドらしく、そこに着くと、あれよあれよと言う間にギルドカードを作られた。
ちなみに受付嬢は可愛かった。
カウンターのすぐそこの酒場に移動してから、カードを見てみると。
上白豊葵Lv. 18 18歳
種族:人種
職業:魔法使い見習い
HP1512/1512
MP2106/2106
力 :1044
防御 :1070
敏捷 :1386
体力 :1422
魔攻 :1368
魔防 :1368
賢さ :1656
器用 :1458
運 :180
ユニークスキル
??
スキル
魔力感知Lv. 1
無属性魔法Lv.1
空間魔法Lv.1
直感Lv.1
テイムLv.1
魔力制御Lv.1
言語理解Lv.1
感覚共有Lv.1
念話Lv.1
回復魔法Lv.1
称号
異世界人
世界を超えし者
ルーの主人
うむ。なかなかどうして、我ながら出来が良いな。
「こりゃ、すげーな」
「カミシロさん異世界人っすか!」
異世界人って何? から普通始まらない?
「え? はい、そうみたいです」
「だからゴブリンを知らないわけだ」
「なんかユニークスキルもあるっすね」
異世界人珍しくないのかも。
「は、はい、そうですね」
「これは完全な後衛だな。テイムした魔物の感覚を共有して、命令を出したり魔法での援護もできる。ただ、6属性の一つも持ってないのは惜しいな。だが、回復魔法は使えるぞ。頑張んな」
「すげぇっす! 回復魔法はそれだけで食べていけるっすよ! なんだか、俺らの手助けもいらないくらい優秀っすね!」
「空間魔法っていうのはどうなんですか?」
「あー、やめといたほうが無難だな。うまく使えるやつの話は聞いたことがない。」
「使ったら最後、死ぬまで激痛が続くって話っすよ。」
お〜、怖っ!使いたくないわー。
と、ルーが震えている。
「なぁ、テレパシーってのはこいつの言いたいことを知ることができるってので合ってるか?」
言いながらリュークはルーの上に手を置いた。
ルーはリュークの手のひらの重量に押しつぶされてる! 必死にルーが抵抗しているが、リュークの怪力には勝てないッ!
ぽよんぽよんと、波打つように抵抗を続けている!
ある程度押し出したところでリュークさんが更に力を入れるせいでなかなかルーは勝てていない!
「俺の言いたいことも分かるっすか?」
「あー、多分ですけどテイムしたモンスター限定だと思います。」
ルーを潰しながらもリュークは余裕の表情で会話をつづける。
「こいつは今何を?」
「多分『や、やめてー!』って感じじゃないっすか?」
「『このおっさんが! 図体でかいからって全てが許されると思ってんじゃねぇぞ! ゴブリン程度を手下に任せやがって! お山の大将気取ってんじゃねぇ!』って言ってますね」
言った瞬間僕とルー以外が彫刻のように固まった。
ハッチさんはジョッキを持ったまま、汗をかいている。
ルーは構わず動きの止まったリュークさんの手から抜け出し、顔に向かってぽよんぽよんと跳ねている。
近くで聞いてた野次馬は席に戻って、聴かなかったことにするらしい。
リュークさんは…
「おれはまだおっさんじゃねぇ!!」
ルーがぽよんと一回震えたあと、ぽよんぽよんと跳ねながら全速力でリュークから離れていく。
「今更逃げんじゃねぇ! スライム風情が!」
「あっちゃー、ピンポイントに地雷を踏みに行ったっすね。」
リュークさんが憤怒の表情でルーを追いかけ回している。
「言ったのは僕じゃないですからね?」
「俺は……俺はまだ『お兄さん』だ!」
ルーが小さな体で色んなテーブルの上の食べ物や椅子、果ては人を使って逃げるため、いろんな人に笑われながら追いかけっこをしている。
「ちなみに今はなんて言ってるっすか?」
「『ハッハー! やっぱりおめえ、図体だけじゃねぇか! こんなスライム風情も捕まえられない馬鹿がよぉー!』って言ってますね」
「ォォオオオオオオオォォ!」
リュークさんが雄叫びを上げながらルーに迫っていく。
「あ、聞こえたみたいっすね。」
「地獄耳ですね」
「ォォオオオオオオオォォ!」
「はっはっは!」「ぎゃはは!」
雄叫びに混じって笑い声が聞こえる。
悲鳴はないみたいだから一種のパフォーマンス扱いかもしれない。
スライムを追いかける中年冒険者。
うん。見世物だね。
「うちのパーティーの斥候っすから耳は特別いいっすよ。」
「なら下手なこと言っちゃだめじゃないですか」
「待てや、コラァ!」
「ははは、流石にお遊びっす「てめぇ! 逃げんじゃねぇ! ど頭かち割ってやる!」……本気かもっすね、ははは……はは…」
ハッチさんは力なくテーブルにジョッキを置いた。
しばらくすると、だんだんと椅子やテーブルごと投げられてる音が聞こえ始めた。
リュークさんはルーに椅子を投げたりテーブルを使って範囲攻撃をしたり、果ては冒険者を投げている。
「あ〜〜れ〜〜!」
………投げられる方は楽しそうだ。
ついに身の危険を感じ取ったのか、ルーは一直線に僕の方に向かってくる。
「やばいっすカミシロさん! ルーがこっちに来てるっす! 早く逃げましょう!」
「あ、いい忘れてたけどカミシロじゃなくてアツキの方がファーストネームね。カミシロは家名」
「え? あっそっすか。」
ハッチは気が抜けたようで、向かってくるルーを眺めている。
ルーが僕もとにやってきて頭の上でぽよんぽよんと堂々と居座っている。
「やっと、諦めたのかぁ?」
ゆらっと、ダイブしたテーブルの下からリュークさんが這い出てくる。
「あ、もうやばいかもっす。アツキさん頑張ってくださいっす。俺はもう逃げるっす。」
ハッチはそう言い残してスキルを使って全速力で逃げていった。
酷くない? もう僕逃げれないよ?
「ルーさんよぉ!」
ギラッと目が光ったと思えば髪で顔が見えない某、○○さんのごとくこちらに迫ってくる。
「『お兄さん』と呼べぇ!!」
目をギラギラおっさんに両手で頬を潰された。
軽くトラウマ物だ。
……と思ったら
「ゲボらぁ!」
意味のない叫び声を上げながら、横に吹っ飛んでいった。
誰かが救ってくれたらしい。
救世主がいるであろう方を見てみると、そこには…




