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悲劇の主人公は悲劇のヒロインを見捨てられない  作者: 湯タンポ
王都 アークメリオス
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2.8 ベルの魔法

Side :ベル


学「じゃあ。次は空間魔法をどうやって習得したのか教えてくれるかしらん?あれ、人間では習得不可能って言われてるんだけど。」


 えー、人間では習得不可能ですか……?

 人間じゃない人に言っても無駄だと思うんですが。

 人間じゃない人って何なんだろうね?


学「空間魔法が人々に認知されているのは一部の強力な魔物や英雄と呼ばれる人並み外れた力を持つものたちが時々持っているから。それをぽっと出の新入生に「空間魔法使いました」って言われて納得出来ると思う?」


ベル「…………」


 何も言えない。

 正直言って便利だから使ってただけで調べてもないな。

 そういえばお母さんが持ってきた本の中には具体的な方法だったりおおよその魔力消費量も載ってなかった。

 ただこういうことが出来たとか英雄たちの冒険譚みたいなのしかなかった。

 なるほどそういうことだったのか。


学「英雄が使っているならと魔法が使える人はどんどん空間魔法に挑戦した。それでも使用者が少ないのはまず最初に使うには才能がいる。これは無属性魔法以外の属性魔法全部に言えるわ。でも、空間魔法の適正を持ってる魔法使いは他の属性と比べて少なかった。そして次の理由に、使えば使うほど使う人がいなくなっていくから。」


 あ、学園長の目は睨んでるのか分からないつり目っていうの?をしてるから睨んでるのかどうか分からなかったけど、今は分かる。

 瞳孔が閉じてる。

 目が笑ってないってやつだこれ。


学「使えば使うほど精神をやられる魔法使いが多いの。確かに空間魔法を習得して、使っていくとまず最初に使用感に驚く。

 そして次に頭痛が始まる。

 何故か、それはあまりの情報の多さに頭の処理能力が追い付かないから。

 本当は魔法というものは自分の見たことのある、知っているもの、思い描くものを魔力を使って再現する奇跡。

 でも空間魔法はまず最初に空間というものを理解しなければいけない。だから空間魔法はレベル5まで攻撃や補助、防御までも使えず自分から半径何メートルかを認識出来るようになるだけ。

 言葉にすれば簡単だけど、これは本当に辛いこと。

 自分から見て3時の方向に人がいる。

 人が歩いている。

 自分は椅子の上に座っている。

 自分の髪の毛一本一本まで隅々まで分かる。

 自分の背後に虫が飛んでいる

 これより圧倒的に多い情報が一瞬にして流れ込んでくる。

 だから空間魔法を使う魔法使いは最初の一回目に必ず気絶する。

 そして、レベル5まではただただ空間の把握範囲や精度が上がるだけこの意味が分かる?」


ベル「…………」


 ちょっと正直言ってあなたが言ってることが分かりません。


メア「ちょ、ちょっと待ってください!一瞬で気絶するするような情報量が増え続けるんですか?!」


学「そう。そして空間魔法スキル自体には負担を軽減するような効果はレベル5以上にも今のところ1つとして確認されていない。つまり優れた魔法使いが一瞬で気絶する情報量にどんどん負担がプラスされていくの。」


 うっわ、なにその魔法。

 使うやつなんているの?

 使えるとしたらまじで化け物しかいないよね。

 まぁ、僕の種族名化け物(フェイクモンスター)なんだけどね。


学「こんな魔法を使えるのは文字通り化け物か情報処理に適したスキルを持った空間魔法に適正のある。何て言うトンデモな奇跡の確率のもとに産まれた人間よ?」


 まぁ、僕は化け物のほうですが。


学「因みに言っておくけど、人間じゃなければいいからって魔物も出来るわけでは無いわ。テイマーたちが自分の魔物たちに仕込もうとしても覚えないか気絶して魔法の切り方が分からないまま死んでいくだけね。」


 あ、化け物でも駄目な場合があるんだ。

 いや、出来る方が珍しいのか。


学「で、だんまりじゃなくてそろそろ説明してくれない?ここまで私がしゃべった内容で中途半端な言い訳は通じないと分かると思うけど。」


 メアさん珍獣を見る目をしないで貰いたい。

 小心者には効くから。

 結構効くから。


メア「ば、化け物?」


 本当にそんな感じで見たんですね。

 多分僕が化け物っていうより、化け物と一緒ってことでしょうけど。

 結構効くから。


 まぁ、実際のところきちんとした理由は作ってある。

 僕が化け物うんぬんよりも信憑性はあるし、やってる人がいなかったのも分かるくらいの理由は。


ベル「……学園長。先に言いますが僕は空間魔法を使える化け物でも無いですし、並み外れた才能も持ってません。」


学「ふーん」


 興味が無いとかよりも速く結論を言えって顔をしてる。


ベル「まず僕の親は「知ってるわ。というか知らないわけないじゃない。人間兵器や救国の英雄なんて言われてる人の子供に教えることがあるのかどうか不安ね。」


 

 あと、人間兵器とか救国の英雄とかはルイセントの冒険者のおっちゃんたちが言ってたな。

 正確に人間兵器がどっちとかは知らないけど。

 ついでに言うと友達に自慢できないし信じられない二つ名だよね。

 そして学園長、人が話してるところに被せるのは良くないと思います。

 ほら、メア先生も目を丸くして学園長を見ているでしょ。


メア「人間兵器と救国の英雄も私は聞いてないですよ!」


学「普通は知ってるわ。あとそれでも差別は良くないわ。」


メア「…………」


 今度別にやってくれないですかね?

 これでも緊張してますよ?


学「それより私は空間魔法が気になるから聞いていいかしら?」


 それってほぼ命令だよね。


 学園長は話を聞きたそうにこっちを見ている


 ………ふざけちゃいけないよね。

 これからはふざけません。

 ちょっと真面目にします。


ベル「僕はスキルに並列……」


 今考えると並列思考スキルって入手経路訊かれるよね。

 並列思考もよく調べてないからなー、言わない方がいいよね。

 さっきは言ったけど忘れてくれているのことを願う。


ベル「……思考とか負担軽減なんて言うスキルは持ってません。」


学「………」


 ならなんでそんな話をしたんだよって顔をしてる。

  並列思考の話をしないなら意味の無い話になるから本当に話した意味は無いね。


ベル「ただ、もちろんご存知だと思いますが、空間魔法以外にも使用者に情報を送る魔法は存在します。」


メア「五感としての聴覚の音魔法、視覚の色魔法、嗅覚の香魔法、味覚の料理スキル、触覚の空間魔法ですよね!」


 メアさんクイズは終わりましたよ。



学「使用者に情報を送るのは料理スキルを抜いた4つの魔法と魔法以外は探知系統ね。」


 メア先生マイナス一点だそうですよ。


学「でも、知らないなら言っておくけど空間魔法はそのなかでも異質。普通、触覚なんて自分から体を動かさない限りは無いものなの。目を開ければ勝手に入って来る視覚や空気に乗った匂いを嗅ぐような嗅覚でもない。」


 言葉では簡単だから分かりづらい感覚だよね。


学「触れなくても、動かなくても感じられる触覚以外はあくまで感覚の延長線上よ。空間魔法は異質。空間魔法を使うには情報と現実は一ミリもずれてはいけない。空間魔法以外は負荷を減らすために精度を落とすことも出来るけど、空間魔法は出来ない。空間魔法以外の魔法が使えるからって理由にはならない。」


 やっべ、『音魔法使えます』作戦が敗れた!

 実行する前に敗れた!

 ふむ。

 だが……あ、危ない。ふざけてしまうところだった。


ベル「もちろんそれだけではないんですが、理由の1つにはなるかと、僕は5歳ほどから今まで音魔法をメインに練習していて今はレベル6です。」


 まぁ、メインで練習って言っても魔法のなかでだけどね。


学「へぇ、結構頑張ったね。それで?他の理由は?」


 メア先生は驚いてくれてるのになー。

 誉めてくれてもいいんだよ?

 そんなに威圧感出さなくてもいいんだよ?


ベル「それとここだけの話にしていただきたいのですが、僕のユニークスキルは四文字なんです。」


学「何が言いたいの?」


ベル「産まれた時点からユニークスキルを持っている人は稀です」


学「ええ、本当に稀ね。学園だから多くのユニークスキル持ちが集まるだけであって、一つ都市に5人もいればいい方ね」


ベル「つまりは研究は進んでない訳です」


学「だからどう………えー、つまりはユニークスキルは名前が判明前の?の時点から効果が出ているって言うことを言いたいの?」


ベル「はい」


学「なるほど、あなたのユニークスキルは発動に特定の行動が必要なアクティブスキルではなく常時発動型のパッシブスキルだと。」


ベル「はい」


学「そして、そのパッシブスキルの効果が空間魔法が使えるようになる効果だと。」


ベル「はい」


学「更に、名前が判明する前から効果が出てると。」


ベル「はい。それ以外考えられないかと。」


学「よくそんなことが言えたわね。自分がユニークスキルを持っていることくらいしか証拠は無いのに。」


 しょうがないでしょ、僕は魔物なんだから。

 既にスペックがヤバいんだから。

 神様に会って来たって言っても信じないでしょ。


ベル「それともう1つ。空間魔法は使えています。」


学「使える。でも理由はこれぐらいしか考えられないってこと?」


ベル「はい」


 どちらと言うとあなたに言える理由がこれぐらいしかない。ですが。


学「難しいことは後で考えようかしら。」


メア「学園長。そろそろ戻って生徒たちの魔法を見に行かないと今日中に終わりません。」


 威圧感がなくなったとたんに退出をするのか。

 さて、これが天然なのか計算づくなのか。


学「大丈夫。3組は2組のウォーレン先生に任せてるから。」


 ウォーレン先生仕事が二倍かー。

 頑張れとしか言えないな。

 誰目線なんだって感じだけど。


メア「なら大丈夫ですね。」


 大丈夫なんだね。


学「そういえばベルさんは終わったの?」


ベル「?」


 何が?


メア「爆発したのだけですね。」


学「じゃあ何が残ってるの?」


 授業の魔法見せるやつね。


メア「防御と得意な魔法一つずつ残ったんですが防御は結界で分かってるしこれ以上確かめるのは……」


学「面倒ね」


 もうちょっと言い方ってもんがあるでしょうに。


学「そしたらここでやって貰ってもいい?」


メア「え?室内だと危険ですよ?」


学「さっき音魔法をメインにしてるって言ってたじゃない。どう?ベルさん」


ベル「攻撃性の無いものももちろん使えますよ。」


学「じゃあお願い。」


 じゃあ何をやろうか。





◎●○◎●○◎●○◎●○◎●○◎●○◎●○◎●



ベル「じゃあいきますよ。」


 まぁ、やっぱりこれしかないよね。

 ってことで僕が好きなボカロ曲を。


―――♪


―――♭



ベル「ご清聴ありがとうございました。」


学「何今の?」


 言葉も出ないって?

 嬉しいね。


メア「音魔法って人間の声を出せましたっけ?」


学「身近な人の口癖は出来るけど歌は覚えてられないでしょ。人間は歌う度に音程は変わるんだから音魔法じゃ自然に出来ないわ」


 『あいつ』に勝てた少ない中の一つがカラオケですし。

 絶対王政との合わせ技ですし。

 いわばそのままカラオケで歌ったのを自分で録音しただけでできますし。

 ついでに言うとボカロだから常に一定の音が出せますし。



学「でも、吟遊詩人になるつもりかしら?そしたら学園には教えるような教員はいないからね」


ベル「もちろん僕は冒険者を目指していますが」


学「確かに綺麗であったし、技術もすごいとわかったけど、冒険者には全くいらない技能ね」


 おっしゃる通りですけどね。

 子供にそんなこと言うならけっこう嫌われてるだろうなー。


メア「学園長。確かにいらないかもですけどすごいことはすごいと誉めた方がいいですよ。そうしてるから結婚相手が見つからないんです」


 やっぱり?

 そんな気はしてたけどやっぱりかー。

 この人は「自分以上の人にしか嫁がない!」とか言いそうだもん。


学「どうしてみんな結婚しろ結婚しろって言うの?別に結婚しなくても良くない?ベルさんはどう思う?」


 生徒に結婚に関しての話をふるなよ。


ベル「別にいいんじゃないですか?僕も結婚する気は無いですし。」


 男と結婚するわけないだろう、気持ち悪い。


学「ほら!やっぱりそういうことを言う人もいるじゃない!」


メア「いいですか、そういう人は少数派です。そういう人は大抵何か理由があったり病気があったりします。」


 性同一性障害とかは不治の病とされている。

 この世界は外傷に対して回復魔法が使えるから精神だとかの治療はやってるところが極端に少ないんだよね。


メア「でも学園長はそういうのないじゃないですか!この前もはっきり理由はないってあなたが言いましたよ。」


学「だってしょうがないじゃない。そう思うんだから。」


メア「だからって人を誉めない理由には………



 はぁ、痴話喧嘩は余所でやってほしい。

 痴話喧嘩?

 まぁ痴話喧嘩でいいや。




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拙い文章ですが、これからも読んで頂けると作者が喜びます。
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