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紫島姉妹に効果あり  作者: 釜揚げ製菓
エピローグ
42/42

そしてプロローグ

 色々考えた結果、新たなタイトルで続編を書いていこうと思います。  まだ内容は決まっていませんが、タイトルは「○○○に効果あり」といった風にしようと思います。


その後について少し話そう。


 紫島家の門を通り過ぎると同時に、俺は気が抜けたのか急に睡魔に襲われた。


 犬たちのことは気になったものの、やはり眠気には勝てず俺はそのまま部屋に戻ってベッドに飛び込んだ。多分、もう大丈夫だろうという安心感もあったのだろう。


 部屋に行く途中、花梨や菖蒲さんがうるさく俺に詰め寄ってきたが、事情を知っている蓮香がそれを止めてくれた。

 

 まだ体が痛かったが、眠気の方がまさり、俺はすぐさままどろみの中に落ちた。


 で、次に眼を覚ました時、カーテンの隙間から朝日が差し込んでいた。忘れていたが今日からまた学校だ。


 俺は制服に着替えて部屋を出た。いつもより早く起きたこともあって、居間には黒須さんと蓮香しかいなかった。


「よっ」


「あ……おは……よ……」


 意外なことに、蓮香は挨拶を返してくれた。おそらくこれが初めてなんじゃないだろうか。


「えっと……その……」


 そのまま蓮香は俺に何かを言おうとするも、ダッと俺の横を通りすぎて玄関へ向かった。


 残された俺に黒須さんはテーブルに座るよう促す。見るとテーブルの上には朝食が置かれていた。


 腹も減っていたこともあり、俺はすぐさまテーブルに座り貪るように朝食を食べ始めた。


 そして食べ終わったところで、黒須さんは俺が寝たあとのことについて教えてくれた。


 菖蒲さんが犬を連れて帰った後、怪我した犬は葛城先生によって応急処置されたらしい。黒須さんいわく、葛城先生は「生物」というくくりにいるものならば、大抵のものに対応できるとのことだ。にわかに信じられないが、犬が無事なら今はそれでよかった。


 それでその怪我した犬を含めた子犬たちは、そのまま知り合いの動物病院に運ばれた。


「決して悪いようにはしません」


 犬たちの今後が心配だった俺に、黒須さんは力強くそう言ってくれた。黒須さんは市役所といった、犬たちを探していた方面にも連絡をし、捜索活動を取り下げたらしい。俺は心の底から頭を下げた。


「ただ、一つ困ったことが……」


 黒須さんはちらりと窓へと視線を向ける。なんだろうと思い、俺は目を凝らし見ると、ぽかんと口を大きく口を開いてしまった。


「……飼うことにしたんですか?」


 そこには、鎖に繋がれたあの白い犬がいた。白い犬は俺の姿を見ると同時に、「キャンッ!」と鳴いた。


「そうではないんですが……」


 黒須さんは珍しくため息をついた。黒須さんが言うところ、この白い犬は動物病院に行くことを激しく拒み、頑として動こうとしなかった。


 あまり無理に連れて行こうとすれば、また危険があると感じた黒須さんは仕方なく白い犬に首輪をし、鎖で動きを封じた(これだけでも大変だったようだ)。


 だが当然、このままにしとくわけにもいかず、黒須さんは絶対に今日は連れて行くと覚悟を決めた。


 白い犬はまだキャンキャンと鳴いている。俺は試しに庭へ出た。


 白い犬は他の人と同じように、俺にも警戒心をあらわにするかと思った。だがそれは杞憂だった。白い犬は俺を見ると同時に、腹を上にして寝転び、激しく尻尾を振った。


 俺はおそるおそると白い犬の腹を触れてみる。すると、白い犬はさっきよりも激しく体を振り、嬉しさをアピールした。


「……きゃあ可愛い! ……って待て待て?」 


 素直な気持ちを吐露するも、俺はこの白い犬は別の犬じゃないかと疑った。それほど、昨日の野性味あふれる感じとギャップがあった。


 だが黒須さんが近づくと白い犬は本気で警戒し、あの時と同じような目つきになったので、やはり本物だった。


 どうやら白い犬は俺になついたようだ。昨日の件もあったのでわからないことはないが、ここまでなつかれると逆に驚く。ちなみに、白い犬はメスだった。


 などとしている内に菖蒲さんや花梨、そして菫ちゃんが起きてきた。三人は俺を見ると同時に、ぐぐっと近づき質問を投げかけてきた。時計を見るともうそろそろ登校しないといけない時間で、俺は三人の質問攻めから逃れ、学校へと向かうことにした。



 教室に着くと、案の定クラスメイトの何人かが俺の右手人差し指のことを尋ねてきた。俺は正直に「犬に指を噛み千切られた」と言った。するとクラスのほとんどがドン引きした。


 失敗だったかな……そう思っていた俺だが、そこに蓮香が「私を守るためにそうなった」と、上手い具合にフォローしてくれた。


 蓮香の発言力は大したもので、クラスのみんなの思い一転し、俺に賛辞の言葉を送ってきた。まあ、嘘ではないんだが、どうにも居心地が悪かった。

 

 で、学校を終えて教室を出る際、俺は蓮香にいっしょに帰ろうと誘われた。あまりに突然のことに、俺だけじゃなく、クラス全員が固まった。俺は蓮香に引っ張られるような形で教室を出た。


 蓮香と並びながら帰る途中、蓮香は今後のこと――主に「能力」のことについて話してきた。どこで練習するか、どういった練習が効果的なのか、役に立つ資料・もしくはビデオがあるかといった、蓮香は新たな信念――「『能力』を完全に自分のものにする」にということに熱心だった。


 それに対し俺は俺で真剣に応えた。あまりいい事は言えなかったが、蓮香は嬉しそうだった。

 

 屋敷に帰るとまだ白い犬がいた。どうやらまだ黒須さんはどう連れて行くか格闘していたようだ。もしかしたら黒須さんは――。


「いっそのこと飼っちゃったらどうですか?」


 白い犬の頭を撫でながら、俺は半ば冗談のつもりでそう提案した。


「……いいかもね」


 だが蓮香は賛同した。「え?」と俺が困り顔になっている間に、蓮香はおもむろに携帯を取り出し、どこかに電話をかけ始めた。しばらくの通話後、蓮香は「両親に許可をもらったわ」とだけ言った。


「……」


 さすがに何も言えなかった。蓮香はゆっくりと震えながら白い犬の頭に手を向かわせた。危ないと思うものの、白い犬は決して噛み付こうとはせず、俺の時とは反応が違うものの、大人しいまま頭を撫でさせた。蓮香に対しても子犬を救った恩を感じ取っているらしい。


 黒須さんは最後まで納得いかなそうな顔をしていたが、諦めたのか、他の姉妹たちにもこのことを伝えに行った。


「本当にいいのか?」


 今ならまだ間に合うぞと俺は蓮香を見る。しかし蓮香は「――もう、逃げたくないの」と、はっきりと言った。


 菖蒲さんたちがやって来きた。


「アタシもイイよ」と菖蒲さん。


「ほう……これは中々良き魔獣ではないか。我がしもべにふさわしい」と花梨。


「…………頑張ります!」と菫ちゃん。


 一応、三人とも白い犬を飼うこと自体には反対ではなかった。俺は白い犬の頭を再び撫で、「よかったな」と言ってみる。白い犬は「キャンっ!」と元気よく叫んだ。


 ――とまあそんな一日が終わり、アッという間に次の週の木曜日がやって来た。


 その間、あまりに多くのことがあったので省略するが、要は犬の注射やら犬小屋やら犬のエサや犬の名前やら……犬のことばかりの日々だった。


一応、蓮香と花梨、さらに菫ちゃんの「能力」の練習にも付き合った(あと左手でご飯を食べる練習も)。


 そして明日の金曜日から来週の水曜日まで、それなり……いやかなり長いゴールデンウィークを迎えることになる。


 そんなウキウキ気分な真夜中のことだった。


 俺は、中学時代の親友に再会した――。

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