第1話 異世界で勇者だった俺、なぜかモブ男子高校生に転生してしまう
新作です。
よろしくお願いします(*- -)(*_ _)ペコリ
「大魔王エクリプス! これで終わりだ!」
勇者ユータリアは全力の聖魔力を込めた聖剣を眼前の敵へと叩き込んだ!
大魔王エクリプス。
数多の中魔王・小魔王を従え、長きにわたって人類と衝突してきた魔族の親玉を、最強勇者がついに追い詰めたのだ!
「矮小な人間風情が、小癪な!」
大魔王エクリプスが対抗するように魔剣を振るう!
強大な闇の魔力が込められた魔剣と、勇者の聖剣が真正面からぶつかった!
「おおおおおおおおっっっっ!!」
「ガァァァァァァァッッ!!!!」
勇者と大魔王による最終決戦。
互いに全力の魔力を注ぎ込みフルパワーとなった聖剣と魔剣がぶつかり合った瞬間、大爆発が起こった。
「く――っ!?」
あまりに過剰すぎる聖魔力と闇魔力が激しく反発し合ったことで、この空間の魔力飽和量を大幅に超過し、溢れた魔力が暴走したのだ!
それでも勇者ユータリアは渾身の力を大魔王へと叩き込む!
魔剣を吹き飛ばし、聖剣が大魔王の身体へと到達する!
聖なる魔力に焼かれて絶叫する魔王!
ついに大魔王を倒した――そう勇者が思った瞬間、目も眩むほどの閃光と、天地がひっくり返ったかのような激しい衝撃波が巻き起こり。
勇者ユータリアは戦いの最中に意識を失った――――
――――などという前世の記憶を思い出したのは、俺――伊佐美勇太が、高校入学直後の校舎脇で、チャラそうな不良3人組にナンパされている女の子を助けようとし、情けなくも突き飛ばされ、地面で顔面を強打した時だった。
『そ、そういうのやめなよっ!』
なけなしの勇気を振り絞って、強引なナンパを震え声で止めに入った俺は、
『誰だてめぇは? すっこんでろよカス!』
不良チャラ男にあっけなく突き飛ばされて転倒したのだ。
そんな風に地面に這いつくばりながらも、俺の中では勇者ユータリアの記憶が次々と蘇っていた。
平凡な高校生・伊佐美勇太と最強勇者・ユータリアが融合し、一つになる。
俺はむくりと立ち上がった。
「いきなり突き飛ばすとは穏やかじゃないな」
顔についた砂を軽く払い落としながら、俺は不良チャラ男たちを見据えた。
着崩した制服、派手な金髪、ピアス。
さすがに入れ墨まではしていないが、どこに出しても恥ずかしくない不良チャラ男どもである。
俺はさりげなくポケットのスマホに手をやり、記憶を頼りに操作して録画モードをたちあげた。
もちろん、これから起こることの証拠にするためだ。
「なんだてめぇ。そのネクタイの色、1年だろ。下級生の分際でたてつくとか調子乗ってんのか? もう一回、地面に這いつくばりたいのか? オラッ!」
不良チャラ男の一人が突き飛ばそうと俺の胸を押した。
だがさっきと違って俺はピクともしなかった。
勇者の力――聖なる魔力が俺の身体の中を巡っている。
大魔王と戦うための力だ。
不良チャラ男に小突かれた程度はそよ風未満だ。
「よし、先に手を出したな。これで正当防衛が成立だ。言っとくが今の会話は全部スマホで録音しているからな」
突き飛ばされたときは録音してなかったからな。
改めてこれが正当防衛の証拠だ。
「録音だと? 調子こいてんじゃねぇぞ! そんなもんてめぇをぶちのめして、スマホのデータを消せば終わりだろうが!」
「ありがとう、さらにあれこれしゃべってくれて。まさに動かぬ証拠だ、話が早くて助かるよ」
さっきのやりとりだけじゃ、証拠としてはちょい弱かった。
さっきのとこれで合わせて一本だ。
自分から説明してくれるとは手間が省けてありがたい。
「さっきからすかしてんじゃねぇぞ! おい、おまえら! 先にこの舐めた1年をボコすぞ! 口の利き方を教えてやる!」
「へへっ、ちょっと後輩を可愛がってやるか」
「顔はやめろよ顔は。いろいろ面倒だからな」
不良チャラ男3人が笑いながら近づいてくる。
だが、鍛えていない身体。
素人丸出しの足運び。
まったく連携の取れていない動き。
なにより、小突かれてもビクともしなかった俺との実力差を全く理解できていないこと。
「論ずるに値しない。お前ら相手なら5秒で終わる」
「なんだとゴルァ! あがっ!?」
「舐めんなよオラァ! うぐっ!?」
俺は1人目、2人目と立て続けにレバーブローを打ち込んで悶絶させると(軽くだぞ軽く、こいつらが痛みに耐える訓練をしていなさすぎるだけだ)、
「いてててててっ!?」
リーダー格の3人目の腕を後ろ手に捻り上げて、そのまま地面に押し倒した。
この間わずか3秒。
まさに一瞬の制圧劇だった。
「5秒もかからなかったか。相手の力量を見誤るとは、俺もまだまだだな。やりすぎて正当防衛が過剰防衛にならないように気を付けないとだ」
正当防衛だと改めて言葉にする。
俺に防衛の意思しかないことは、これでスマホの録音に記録としてはっきりと残った。
念には念を入れた。
これで俺の無実は完ぺきに証明される。
「離せ! てめぇこら、離しやがれ――あががががっ!?」
俺の下で必死にもがく――後ろ手に捻り上げているのでほとんど動けないのだが――リーダー格先輩の腕を、俺はさらに強く捻り上げた。
「さて、先輩がた。女の子を無理やりナンパしたり、でかい声ですごんだり、暴力やに物を言わせるのはやめようぜ? お前らは気持ちいいかもしれないが、されてる方は最悪の気分になるだろ? もう高校生なんだ、それくらいの分別は付けろよな」
「何を偉そうに――あぐっ、痛い、痛いっての! ぐあっ、ぐっ!」
「だからそういうのは金輪際やめようぜ? な?」
肩の関節が外れる寸前まで捻り上げながら「説得」すると、ついにリーダー格の先輩は涙声で叫んだ。
「わかった! わかったから離してくれ! マジで痛いんだ! 骨が折れちまう!」
「ばーか、この程度じゃ骨は折れねぇよ。人体舐めすぎだ」
「アガガガっ!?」
「いいか、これからは社会のルールを守って生活する。約束だぞ?」
「や、約束するぅ!」
「絶対の約束だぞ。今日は優しく相手してやったが、次やったらこんなもんじゃすまないからな?」
「絶対に約束するっ!」
「ならばよし」
俺が手を離すとリーダー格の男は肩を押さえながらよろよろと立ち上がった。
「いってて……」
その瞳に怯えがあることを見て取る。
腰は引けており、情けないほどにビビっていた。
「反省して心を入れ替えるなら、今日のことは特別になかったことにしてやる。イキっていても高校を退学にはなりたくないだろ? 親御さんが泣くぞ?」
「あ、ああ……、そうしてくれると助かるよ……」
「ならもう行け」
「おまえら、行くぞ……」
「あ、ああ……」
「おう……」
不良チャラ男3人がふらふらと立ち去っていく。
去り際にリーダー格が俺をチラリと見て、俺と目が合うと慌てて目を逸らした。
こういうイキがっているだけの小者は、わかりやすい力に弱い。
上下関係はこれ以上なくハッキリさせた。
これでこいつらも少しはマシになるだろう。
あとは少しでも改心してくれたら言うことはない。
うん、いいことをしたな。
俺は勇者(元)。
一日一善、積み重ねていこう。
というわけで不良チャラ男たちを難なく退けた俺は、女の子へと視線を向けた。
女の子――というか、同じクラスのクラスメイト。
ふわふわの髪で、シュシュからサイドポニーが右だけぴょこんと飛び出ていて、ちょっとギャルくてアイドルみたいに可愛いと評判の牧村香澄だった。
お読みいただきありがとうございました~(っ ॑꒳ ॑c)
気に入ってもらえたら
ぜひぜひ、ブックマークへ&評価(☆☆☆☆☆)を入れていただけると嬉しいです(っ ॑꒳ ॑c)




