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限界社畜おじさんは魔法少女を始めたようです  作者: 蒼魚二三
フィールドワーク.4『限界卒論生大脱走! 締め切り間近の極限おしゃれコーデバトル!』

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第270話 リズール女史の威光&彼女の肉体に宿る神とは

「おはようございます屋上さん!」

「だ、誰……?」


 またしても初見で警戒される私。

 そうだった、姿が変わっているから別人なんだと思い出し、改めて事情説明。

 説明するたびに「……もう一回言ってくれる?」と何度も聞き返されたが、

 事件現場にいた魔法少女の結衣ちゃん、マリアちゃんのほか、

 デミグラシアメンバー全員で根気強く証言してくれたおかげで、

 屋上さんも、リズールさんボディの私が夜見ライナだと理解してくれた。

 ただしめちゃくちゃ深いため息を吐かれる。


「あなたはなんでそう思い切りがいいの……?」


「えへへ」


「まあ、でも、事件解決への決意と覚悟が伝わった。

 あなたは凄い。カッコいいわ。ライナさん」


「え、わあ。んふふ~ありがとうございま~す」


 褒められて嬉しい。ちょっと上機嫌になる。

 リズールさんボディと声なので、普段よりも色っぽい。

 だからか、技術支援チームの男性方が驚いてビクッとされる。

 むむむ、男性陣の趣味趣向を察知。

 私は急に気恥ずかしくなり、咳払いで誤魔化した。


「ともかくそれはそれ。謎世界に行きたいのよね?」

「あ、はい。そうです」


 もっとも謎世界事件への対応が一番緊急を要するので、

 私の容姿の話題はほどほどに流される。

 話を戻して屋上さん曰く、ここのオフィスビルの近くの路地に、

 エモエナ同好会が勝手に謎世界への移動穴を作ったらしい。

 通勤中や休憩時間の邪魔になるので追い払って欲しいとのこと。


「なるほど、分かりました。向かいましょう」


「場所はすぐそこ。案内する」


 屋上さんに先導され、歩いて移動した。

 キャンピングカーの後部ドアから様子をうかがっていた我が教徒の小学生たちも、

 マントを頭から被ってメジェドモードとなり、こっそり着いてくる。



 案内された先は、オフィスビルの城下町付近にあるコンビニ「マジマート」。

 高層オフィスビルが周囲に立ち並ぶ中にちょこんとある、

 社会人たちの貴重な休憩スペースだ。


 店の前には、だいぶんとガラの悪い学生――具体的に言えば、

 全員が髪を金と黒のメッシュに染めており、

 金回りがいいのか、金色のチェーンネックレスや、

 金時計をつけた不良らしき風貌の男子生徒が、数名たむろしていた。

 暇そうにタバコを吸ったりしつつも、周辺を警戒している。

 明らかになにかしらの秘密を抱えて隠している感じだ。


「あれがエモエナ同好会?」


「うん、そう。

 謎世界で取れるシャインジュエルのおかげで金回りがいいみたい。

 だからか、髪色とか、アクセサリーを統一し始めてる。

 全国制覇にでも乗り出すつもりなんじゃないかな」


「分かりやすくていいですね」


 少し離れた交差路の縁から覗き込む私と雪さん。

 顔を引っ込めて振り返り、デミグラシアメンバーを見た。


「これからエモエナ同好会を威嚇して追い払ってきます。

 私に使って欲しい武器とかありますか?」


「おっ! じゃ、じゃあ試しにこれを……」


 すると主任氏が赤い誘導棒を差し出してくる。


「これは?」


「試作武器、電光レッドブレード。

 万羽くんの固有魔法「ヒートソード」の火力を弱めて搭載してみた。

 柄を強く握ると赤熱して光る。刀身に触れたら火傷だ」


「暴徒鎮圧用にちょうどいいですね。ナイス試作」


 万羽ちゃんにビシッと親指を立てると、

 彼女と指揮者の木津裏くんも嬉しそうにグーサインを返してくれた。

 同時に、サンデーちゃんことマリアちゃんがぐるんぐるん肩を回す。


「夜見さん? 圧はより強い方がよくて?」


「サンデーちゃんはカラテが強すぎて試作テストにならないのでだめです」


「もう。せっかくの暴力チャンスなのに暇ですわ」


 しかし出鼻をくじかれて不機嫌そうに顔を背けた。

 ミロちゃんこと結衣ちゃんもぷうと頬を膨らませて不満表明。

 暴力チャンスて。


「じゃあ、私がダメだった時の保険として待機をお願いします」


「あらそう?

 でしたら仕方ないですわね。待ちますわ」


 そういうとマリアちゃんは機嫌を直した。

 結衣ちゃんもならいいかという感じで静かに頷く。素直で助かる。

 すると銀髪高身長美女――ライブリさんが手を挙げた。


「俺も意見を言ってもいいか?」


「どうぞ」


「不良は群れる生き物で、容姿や身だしなみに基づく社会的カーストに敏感だ。

 魔法少女単独だと絶対に舐めてかかってくる。

 なのでインパクトと数で押すのが職務質問における常識(セオリー)だ。

 最低でも同人数の頭数は揃えて行った方がいい」


「なるほど。じゃあライブリさんも同行お願いします。

 あとあれ。ダントさんのバトルデコイを出して下さい。

 インパクト出ると思うので」


「「分かった」モル」


 ダント氏がバトルデコイフィギュアの底を押すと、

 彼の背後に重武装バトルデコイがズン……と地面を揺らしながら登場する。

 相変わらずの重量感と存在感に驚いていると、

 ダント氏が彼の肩についているパッチを開け、小さなスペースに乗り込んだ。

 するとビィオン――という音とともに眼光が入り、駆動音が鳴り始める。


「それって搭乗タイプだったんですか?」


『説明はまた今度モル。行くモル』


「あ、はい」


 重武装バトルデコイの分厚い手で肩を叩かれ、交差路の外に出る私。

 ライブリさんは非武装だが、ダント氏のことだ。上手くやる。

 まあともかく行動。二人+一騎で歩き出す。

 目標地点であるマジマートへと歩いて接近するたび、

 バトルデコイから鳴る駆動音が騒々しい。

 私の見た目といい、ライブリさんといい、当然ながらバカみたいに目立つので、

 エモエナ同好会の不良たちはすぐさま気づき、雁首揃えて並んだ。

 コンビニの駐車場で向かい合う。


「な……なにもんだ、テメェら!」


 威勢はいいが、明らかに困惑している。いやまあ、当然の反応。

 私はどうやって説明したものかと、困り眉で目をつむり、

 額に指を当てながら答えた。


「そうですね……説明すべきことは多いんですが、

 一言で言ってしまえば、仕事の邪魔です。

 ここ一帯から引き払ってもらえると助かります」


 同時に、重武装バトルデコイがグオオオ――ッと唸るような駆動音を出す。

 ナイスサポート、ダント氏。

 私も赤い誘導灯――電光レッドブレードの柄を強く握りしめると、

 ボオンと赤熱し、ぽかぽかと暖かくなる。不良たちの顔は一瞬で青ざめた。


「ひっ!? す、すみません……調子こきました……」

「な、なんでもお手伝いします……」


「ええ……?」


 なんでこんなに物わかりがいいんだ……?

 夜見ライナの時はこんなことなかった。やっぱり大人だからか?

 でもいいや。面倒くさいから、適当に追っ払おう。


「いや、改めて言いますが引き払ってくれると助かります。

 ここ近辺に謎世界への移動穴を作られて迷惑しているんです。

 実力行使させないでください」


 赤熱した電光レッドブレードを前に掲げ、ぐるぐると回すと、


「「「ヒィギャァァァ~~ッ!?」」」


 情けない悲鳴を上げ、わずかににじり寄ると、


「「「あばばばごぼぼ……!」」」


 不良たちは逃亡するどころか、その場で恐怖で足をガクガクと震わせ、

 失禁しながら白い泡を吹いて倒れた。気絶したらしい。

 私はまたしても困惑する。


「え、えええ……?」


 もしかして……リズールさんって私が思っているより人に怖がられてる?

 いや、思い返せば南区に、秘密結社ブラックマンデー関連の施設、あったな。

 ファストフードチェーン店「レッドフード」。

 エモエナ同好会のような不良界隈には、

 何かしらの刷り込みが行われたあと……だったりするのか?


「これ試作テストになりました?」


『まあ結果オーライモル。

 不良たちをふん縛って移動穴の場所を聞き出すモル』


「うーん……まあ話が早いし、いいかぁ」


 ダント氏の指示のもと、ライブリさんと共に不良たちをロープで縛って座らせる。

 その後、ぺちぺちと頬を叩いて起きてもらうと、

 不良たちはやはり絶望の表情で私を見て、情けない悲鳴を上げた。


「ひあああっ、おお、お許しください! 許して下さい!」

「こ、ここいらがああ貴方がた秘密結社さまの縄張りだと知らなくてっ」

「何でもします、ほんとに、ほんとですから」


「いや……」


 いま秘密結社さまの縄張りって言ったかこの不良たち。

 やっぱ不良界隈で何かしら恐れられる存在なのかブラックマンデーと思いつつ、

 さっさと話を進めたいので、真ん中の不良の口を手で塞いだ。


「「「……ッ!?」」」


 泣き叫ぶように謝罪の言葉を漏らしていた左右の不良たちも、

 恐怖で顔が引きつり、戦慄した表情で押し黙る。

 私は呆れた表情でこう伝えた。


「御託はいいので謎世界への移動穴の場所。教えて下さい」


 三人はガクガクと恐怖に震えながら、ゆっくりと近くの駐輪場を指差す。

 特に異常があるようには見えないが、

 なんとなく、蜃気楼のようなものが見える。もしかしてそれか?


「ご協力どうも。……消しておくかな」


 やり方は分からないが、結界の基本は干渉だ。

 歩いて接近して、接触を試みる。も……


 ドッ――

「痛っ……な、なんです? 空中に、壁?」


 なぜか、なにもない空間のはずなのに、

 全身が壁のような見えないなにかにぶつかっているようになって、

 目の前にある駐輪場にどれだけ歩いても走っても近づけなくなった。

 うーん……武器を振ってみるか?


「ふんっ……あれ?」


 ブオンッ……と赤いラインを引きながら宙を切る電光ヒートブレード。

 特になにかを切った感触はなかったし、

 歩いても歩いても近づけない。なんだこれ。


「なんですこれ?」


「「「ヒッ、ヒッ、ヒィィイ~~ッッ!」」」


「なっ!?」


 すると背後の不良たちが突然一斉に暴れ出す。

 火事場の馬鹿力でロープをぶつんと切ったとたん、

 バトルデコイやライブリさんの静止も振り切り、

 汗と涙とヨダレをだくだく流しながら今にも死にそうなほど怯えきった表情で、

 駐輪場前にいる私めがけて全速力で飛び出してきた。

 やる気かとブレードを向けたものの、私のことなど意に介さず左右に避け、

 そのまま駐輪場に全力でダイブし、跡形もなくシュンと消えた。


 ――結果、私たちと、不良たちが全身全霊で千切ったロープだけが取り残される。

 なのでただ、困惑した。


「これどういう状況ですか?」


『分かんないモル。

 とりあえずエモエナ同好会は追い払えたモルから、

 みんなを呼んで調査するモル』


「ですね。おーいみんなー!」


 交差路の方に隠れているデミグラシアのみんなを手を振って呼ぶと、

 こっそり着いてきた小学生たちとともに、小走りで駆け寄ってきた。

 万羽ちゃんが興奮した様子でまっさきに尋ねてくる。


「し、試作武器の性能はどうだったぜ!?」


「うーん……まあ、見ていた通りの結果ですね。

 今の容姿の人がちょっと、一般の方よりも圧が強い方でしたので、

 威圧効果が強まりすぎてしまいました。戦闘テストは次回です」


「ひとまず威圧効果があるとは分かったぜ」


 ポジティブに反応し、ノートにメモを取る万羽ちゃん。

 本物リズールさんも遅れて顔を出し、偽物な私を見て誇らしげに笑う。


「ふふ」


「いや普段何やってるんですかねリズールさん?

 不良たち死にそうなほど怖がってましたけど」


「秘密結社ブラックマンデーの縄張り作り……ですかね?

 この世には暴力で治安を乱し、

 人々を虐めることが大好きな方が多いので、

 より強い力で殴り返すのがナターシャさまとの日課でした」


「あ、悪の秘密結社……」


「違いますよ、非政府治安維持組織です。一般の方は救済対象ですよ。

 正義の味方は政府非公認で治安を守るのが普通でしょう?」


「で……ですね」


 綺麗事を言ったところで、政府の手が届かない場所はある。

 ひ……秘密結社ブラックマンデーはそういう場所に手を伸ばして、

 みんなを守っているんだろうなぁ、と聞かなかったことにした。

 するとリズールさんはハッと思い出したように、ポンと手を叩く。


「ああ、そうそう。ライナ様に伝え忘れていたことがありました。

 その肉体に宿っていただいている神さまのことですが」


「え、……え?」


「笑いの神、ライジングさんです」


「なんていいました?」


「笑いの神、ライジングさんです。

 面白みを嗅ぎつければすぐに出てきてくれますので、

 ぜひ配信活動に活かしてください」


「は?」


 急に意味不明なことを言われ、思考が止まる。

 神の宿る肉体って比喩だったのでは……?


『んっふぅぅぅん~ッ! 面白みの予感ッ!』


 瞬間、脳裏に響くオカマティックな男性の声。

 ちょっと待ってくれと懇願する間もなく、

 耳が尖ったヤケにメイクの濃いムキムキマッチョの男性のイメージがよぎる。

 意味不明すぎて寒イボが出た。……なんだこの、なに?


 ……同時に、小さくなったフェザーが天空から降りてきて、私の頭に乗る。


「ピウ」

「お、おお」


 これ褒め要素なのか? 信じていいのかフェザー?

 何度目ぶりか分からない意味不明の現象に巻き込まれながらも、

 とにかく既読無視(スルー)、謎世界事件の解決に尽力すべきだと結論づけ、

 駐輪場の調査を開始したデミグラシアメンバーの輪に混ざった。

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― 新着の感想 ―
バトルデコイ… 見た目がパト○イバー、98型イングラム•アルフォンスだったり? 失禁… 触りたくない(泣) 笑いの神… オーディエンス(民衆)を笑わせると経験値が入ります。 一定値以上の経験値が貯…
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