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限界社畜おじさんは魔法少女を始めたようです  作者: 蒼魚二三
フィールドワーク.4『限界卒論生大脱走! 締め切り間近の極限おしゃれコーデバトル!』
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第256話 サポート体制もバッチリ! 配信開始!

 エレベーターで一階まで降りて、マジマート前へ。

 そこには中等部一年組がおり、そわそわと私を待っている感じ。

 するとふと、おさげちゃんと視線があった。


「誰や……? 夜見はんに似てるけど」

「新キャラですの?」

「ほんと? わ、かわいい~写メ撮っちゃお」


 そう言ってマジタブを取り出し、パシャパシャと写真を取り始める。

 私が近くの物陰から様子をうかがうポーズを見せると、

 腕の中のフェザーが嘴で「はよ行け」とばかりに腕をつつくので、

 仕方なくふざけるのをやめた。廊下に出て、堂々と振る舞う。


「ふう、一週間ぶりですね、私です!

 魔法少女プリティコスモスこと夜見ライナです!

 イメチェンしてみました!」


「この声……! 間違いない、夜見さんです!」

「ほんとですの!?」

「ミロはんが言うなら間違いあらへん!」

「ほんと!? 夜見~! 久しぶり~!」


 中等部一年組は私と分かるなり、ぱあっと嬉しそうな顔で駆け寄ってきた。

 サラサラロングになった紫髪の質チェックや、新品カーディガンをつまんで触り、

 そして最後は、若干増量した胸をじっと見てくる。


「……前より大きくなってない?」

「育ちざかりですわ」

「どこ見て言ってるんですかもう……!」


 フェザーで胸を隠すと、ピウと鳴く。

 中等部一年組もくすくす笑って、合流会は終わりだ。

 ひとまず近況報告もしておいた。主に名字の話。


「――西園寺家に認められて跡取りになったのね! やるじゃない!」

「えへへ、天津魔ヶ原の維持管理は大変かもですけど、

 一生食いっぱぐれなさそうで助かります」

「ま、当然やろ。うちが認めた子やし」

「わ。そう言えばそうでしたね?」

「はいはいお待ち。それより先にパトロール配信の話ですわ。

 どういう方針で動きますの?」


 いつもの雑談に入りかけたところで、サンデーちゃんが場を締めてくれる。

 どうしようかな、と全員が悩みだしたところで、

 ライブリさんが手を上げた。


「俺はプリティコスモスの指揮者だ。提案がある」

「「「提案?」」」


 ライブリさんが言うには、

 月読学園の特進コースで何らかの悩み事が発生しているらしい。

 今回はその問題の解決を中心に、パトロールするべきだと。

 ミロちゃんは真剣な表情で腕組みをしながらも、

 結論は出なかったようで私たちに投げてきた。


「どうしますか?」

「他にアテはあらへんしな」

「ですわね」


 目星もついてないことだしと、全員一致でライブリさんの案に乗ると決めた。

 で、四人専属の配信班がマジマートで買い物をしているらしく、

 少しだけ待つこと五分。

 裏世界用配信ドローン(プロペラのついた空を飛ぶ球体のやつ)とともに飛ぶ、

 彼女たちの聖獣ズが顔を見せた。

 ダント氏はライブリさんの肩に移動し、ペコっと頭を下げる。

 相手も無言で会釈し、それぞれの担当の近くへ戻った。

 するとテレパシーでも感じ取ったのか、ダント氏が私の方を向く。


「……夜見さん、許可が欲しいらしいモル。

 新しい裏世界――「謎世界」に関する事件を、

 高等部の魔法少女にも分けてもいいという許可を」

「わ、私の……?」


 あ、私が西園寺奈々さんの跡継ぎだからかな?

 裏世界繋がりで自動的に私の所有地になる可能性があるので、

 先に立ち入り許可が欲しいのかも。

 そろそろ楽がしたいし、解決を手伝ってもらおう。


「まあ、はい。いいですよ」

「感謝モル。ちょっと黙るモルね……」


 ダント氏はいそいそとライブリさんの頭上に戻り、

 中等部ズの担当聖獣ズに目線を向ける。

 彼らはグッと親指を立て、静かに目を閉じた。


 ピポピポピポ……

「どーも、派遣のご依頼受けてきました赤城でーす」

 その瞬間、マジマートから黒マスク姿の黒髪JK、赤城先輩が出てくる。

 後ろに続くのは、やっと合流できるとダント氏から聞いていた、

 金髪サイドテールのトランジスタグラマー。我がマブダチの州柿先輩のほか、

 聖ソレイユ女学院の三大陣営のうちツートップ――緑陣営と赤陣営、

 青メッシュ先輩と、

 サンデーちゃんの姉ことハムスター先輩がいた。

 ハムスター先輩は私たちを見ると、コホンと咳払いして胸を張った。


「赤城先輩? 今日の依頼はどのようにこなすべきですの?」

「私語厳禁。裏方のみ。報酬は謎世界での商業利権。行った行った」

「エレガントに稼がせてもらいますわね。では」


 ハムスター先輩は通りすがりに私に丁寧なお辞儀――カテーシーをし、

 颯爽と去っていった。

 そして次は青メッシュ先輩。彼女は不思議そうに周囲を見渡す。


「行動規範は把握したのだ。

 その上で一つだけ質問なのだ。屋形妹はどこに行ったのだ?」

「あの天邪鬼レディが夜見ちゃんとまともに顔合わせるわけないでしょ」

「それもそうなのだ。

 再会時の顔を激写してネットに晒してやるのだ。ぷくく」


 な、なんて悪い笑みのギークガール……と私がドン引くと、

 青メッシュ先輩は「サンキュー後輩! 謎世界でまた会おうなのだ!」と元気ハツラツに走って出ていった。

 私の想像と違って体力もある感じなんだ。先輩魔法少女なだけある。

 ……あれ、というかちょっと待て?

 青メッシュ先輩、屋形光子先輩もここに来ているって言ったか?

 と、私の謎世界への興味が急上昇し始めた頃、

 最後の州柿先輩が上擦った甘ったるい声で、赤城先輩を呼ぶ。


「赤城せーんぱい♡」

「うぐ……」


 赤城先輩はものすごく嫌そうな顔をした。


「私はぁ、夜見ちゃんとペアでぇ、いいですよねー♡」

「今回だけは……許す。今回の事件はちょっと私だけじゃ手に負えない」

「わぁーハメられたんだぁ♡ 生徒会長に♡

 生徒会の会計だけはぁ、

 前任者の赤城先輩専用に空席のままですもんねー♡

 しょうがないなぁ、先輩が可愛そうだからぁ、私もお手伝いしまーす♡

 代わりにぃ、私を風紀委員長に推薦してくださいねー♡

 私なら会計のお手伝いもできますよ~♡」

「うぐぐ……分かっ……りました……」

「わー言質取れた~♡ 私の勝ち♡」


 何やら赤城先輩にも想定外の外堀り埋めが起きていたらしい。

 会計に復帰するということは、つまり赤城先輩は元高等部生徒会所属の魔法少女で、さらに元ザヤに戻るということだ。やっぱりすごく偉くなる。

 そこで私の視線でも感じたのか、赤城先輩は黒マスクを顎の方に軽くずらし、

 困り眉で笑いかけてくれる。


「ごめん今のオフレコ。聞かなかったことにしてくれる?

 じゃないとガチめの怒られが発生すんの。

 ドゥーユーアンダースタンド、中等部一年組?」

「「「分かりましたっ!」」」


 私たちが口を揃えると「ご理解ありがと~」とマスクを元に戻し、

 州柿先輩に「あの紫が夜見ちゃん。梢千代市まで死守してね」と伝え、


「んじゃ、ちょっとおしゃれコーデバトルの仕込みに戻るね。

 稼げる時に稼いどかないと紫陣営も立ちいかないんだわ。

 あ、夜見ちゃん西園寺の襲名おめでと~! またパーティしようね~」

「あ、はい! また!」

「んふふ、可愛い。愛してる」


 そう言い残し、ばいばーいと手を振って去っていった。嬉しい。

 残された州柿先輩はというと、無言でライブリさんを視認し、悟った顔をする。


「またかぁ……」

「ああ! 今回はプリティコスモスの指揮者だ!

 よろしく頼む!」

「ま、風紀委員長を目指してるんだし、

 これくらいは慣れないとダメだよね~……」


 ううむ、話したいことが色々とありすぎる。交流の大渋滞だ。

 でも、今日は中等部一年組との約束が最優先。

 サンデーちゃんに目配せすると、彼女はコクリと頷いた。


「と、ともあれ、先輩方のサポート体制も万全みたいですわ!

 いちごさん、これで安心してパトロール配信に集中できますわよ!」

「あ! そ、そうよねサンデー!

 私たちは先輩に負けず怖じけず、パトロールに集中しましょ!

 中等部一年組っ、エモーショナル茶道部ファイト~!」

「「「おー!」」」


 掛け声も合わせ、パトロール配信を開始する。州柿先輩も一緒。

 まずは見回りの主軸となる依頼を受けるべく、

 ライブリさん提案の特進コースからのお悩み相談会をすると決めた。

 ダント氏が交渉担当として相手にメッセージを送ると、

 向こうから「ここで落ち合いましょう」と、

 満月の銅像「月読モニュメント」の写真が返ってきた。

 どうやら中央自治区内にも存在しているようだ。全員でそれをじっと見る。


「夜見はん、なんなんこれ」

「月読モニュメント。月読プラントの所有地に立ててある銅像です」

「なんやえらい尊敬されたいみたいやね、これの建造決めた人ら」

「どこのモニュメント像ですの?」

「ええと、ダントさん?」

「任せるモル。日進月歩で画像検索するモル」


 フィールドワーク専用アプリ「日進月歩」で調べてもらったところ、

 このランドマークタワーにほど近い小さな公園に一つだけあるようだ。

 私が現金一括で購入した家の、道路を挟んで反対側にある。


「あ、私が買った家のお向かいにありますね、モニュメントのある公園」

「夜見の家!?」

「待ち。寄り道はあとやいちご……さっさと話し合いすませよか」

「そ、そうね……うう、夜見の家で遊びたい……」


 同意しかない彼女の発言はさておき、

 私たちは出発。中央自治区唯一の月読モニュメントの元へ向かった。

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赤城せーんぱい♡… 赤城「くっ、言質を取られてしまったorz」
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