第255話 正義のヒーロー(女体化)が仲間になる②
そうだった、騎士爵の貰い物で本題からそれていたけど、
今のライブリさんは戦闘装備を全て没収されたうえ、
実家から勘当されて傷心中だった。慰めなければ。
「あのあの、ライトブリンガーさん。
今日は大事なものを届けてくれてありがとうございました。
そのお礼にですけど、私にできることがあれば何でもお手伝いしますよ?」
「何でも……?」
「例えば……あの、あれ!
このあと中等部一年組のみんなとパトロール配信をするんですよ!
今のライブリさんって、特進コース生じゃないですか!
私の指揮者になってくれれば、
配信をお手伝いしてくれる人手が増えて大助かりだなぁって。
ダントさんもそう思いませんか!?」
「おお! それめっちゃいいアイデアモル! 僕は大賛成モル!」
「でしょ!?
ライブリさんは仕事熱心ですし、いろんなことに詳しいし、
ちょっと抜けた部分がある私をしっかり支えてくれそうですし。
は、配信を手伝ってくれませんか? なんて、えへへ」
にっこりと笑うと、ライブリさんは目尻の涙を拭い、
決めポーズらしき右手を上げて強く握りしめるポーズを取る。
「君の申し出を喜んで受ける……!
俺は君の指揮者になり、配信活動に協力することを約束しよう!
どんなときでも一緒に現場に出るぞ!」
「やったー!
これからよろしくお願いします!
契約の握手しましょう握手! ほら!」
「うおおっ!? よ、よろしく……」
私が彼(彼女)の右手を掴むと、彼は少しだけ頬を赤らめた。
同時に、彼のエモ力が少し上がったような気がした。
ともあれ、まずは一息。みんなでいちごジュースを堪能。
その後、ライブリさんとダント氏の指揮者契約を済ませるべく、
この待合所の隅っこに置かれた証明写真機に入る。
指揮者になるライブリさんの個別写真と、
コンビを組んだ私・ダント氏・彼の集合写真を撮れば、
画面に「登録完了」と表示が出る。
コトンと出てきた顔写真付きの「指揮者カード」を手に入れて、
彼は指揮者の役職を得た。一緒に片手ガッツ決めポーズ。
「また正義の味方を名乗れるようになった!
プリティコスモス、君の優しさに感謝する!
全身全霊でサポートしよう!」
「えへへ、どういたしまして!
じゃあフィールドワークに出ましょうか。
中等部一年組を待たせてるんですよ」
「分かった!」
ライブリさんは言葉がハキハキしていて元気なので、
私まで釣られてやる気が出るなぁ。
するとダント氏、ふわふわと飛んでライブリさんの頭に乗った。
ライブリさんは「む」と驚いて静止する。
「夜見さん、僕いいこと思いついたモル」
「わ、どうしました?」
「これからライブリさんとペアで行動して夜見さんを支援するモル。
雇ったバトルデコイ「ヘビィ―ガード」の武装を、
ライブリさんと共有すれば、
戦闘員が実質二倍になるモル」
「何!? 君たちはバトルデコイを雇っているのか!?」
ライブリさん声がデカい。聞こえたのか、
特進コースからコフィンの開く「ブシュウゥゥ……」という音が鳴り始めた。
大学生らしき人の他、見たことのないクリスタル製のドローンが、
待合休憩所に何騎も飛んできて、私たちを監視し始めた。
「ええと、ライブリさんはどうですか?」
「君たち魔法少女を支援できるだけじゃなく、
共に戦えるなんてこれほど嬉しいことはない!
ぜひ君の聖獣と行動させてくれ!」
「わ、分かりました。ライブリさんにも自衛用の武装は必要ですもんね。
ダントさん、しっかりフォローお願いします」
「任せるモル! ライブリさん!
僕と一緒にプリティコスモスのフォローを頑張ろうモル!」
「ああ! 共に平和な世を目指そう! 聖獣ダント!」
秒で意気投合する男子二人。ちょっとだけジェラシー。
やっぱり私みたいなおじさんよりも、
若くて熱意のある男子の方がダント氏と息が合うのかな、とヘラりつつ、
ほどほどで気持ちを切り替えて、
ご迷惑をかけた特進コースの方々に手を振っておいた。
「すみません、お仕事の邪魔をしちゃいました。
お気になさらず」
「――」
すると特進コース生、すべてを理解した表情で立ち去り、
監視ドローンも光学迷彩らしきものを起動し、姿を消した。
いや、監視はやめないんかいと思いつつも、
それが彼らの仕事なので諦めるしかないかな、とため息。
すると立ち去ったはずの特進コースの大学生が足早に戻って来る。
その手には名刺と、「月読ストリーミング部門」という部署名が乗っていた。
「すみません。新入生の西園寺ライナさんと、九条霧夜さんですよね。
私どもは特進コースのライブ配信部門で、
パトロール配信を計画的に行い、月読生徒会に報告する業務をしています。
特進コース内で何か不足しているもの、
作戦立案での悩み、必要な人員があれば、監督補佐の私に申し付け下さい」
「わあ、ありがとうございます……」
私が名刺を受け取ると、ダント氏とライブリさんが代わりに名刺を返した。
そして二人と握手をし、監督補佐を名乗った生徒は今度こそ去っていく。
ライブリさんの上のダント氏は、ペタンとしながらぼやいた。
「すごいモル。秒で媚を売りに来たモル」
「期待の星である魔法少女プリティコスモスに、
元公爵家の俺と、西園寺家の名字襲名まで揃ったんだ。
期待も大きいだろう。何より、彼らから助けを求める気配がした」
「助けを求める気配……!?」
す、すごい。ライブリさんはそんなものを感じ取れるのか!
「頑張らないとだめですかね!?」
「いや、自然体でいこう。
気負いすぎると疲れて失敗しやすい。
ダントもそう思うだろう?」
「そうモル。夜見さんは自然体の方が可愛くてバズるモル」
「えへへ、ならまだ頑張らなくていいや」
私はほどほどに力を抜いて頑張ると決めた。
ともあれ、特進コースでやるべきことはなくなったので、
中等部一年組に「合流しまーす。今どこですかー?」とメッセージ。
一階のマジマート付近で待ち合わせすることになった。




