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限界社畜おじさんは魔法少女を始めたようです  作者: 蒼魚二三
フィールドワーク.4『限界卒論生大脱走! 締め切り間近の極限おしゃれコーデバトル!』
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第254話 正義のヒーロー(女体化)が仲間になる①

 フリードリンクスペース――つまり休憩待合所に行き、適当な場所に座る。

 まずフェザーを受け取り、ダント氏には人数分のドリンクを任せた。

 彼はふわふわと飛び、自販機へ。

 するとライブリさんが意を決したように私を見つめ、


 「は、はっきりしなければならないことがある!」


 と言った。

 私は少しびっくりしたが、「はい」と返す。

 彼は話を続けた。


「まず、騎士爵である君が持つべき騎乗動物、

 大霊鳥ガルーダだが、態度を改めた結果、小さくなってしまった」


「態度を改めたから小さくなった?」


「ああ、大霊鳥の性質として、

 静かな室内では大人しくなって小さく、

 うるさい屋外ではストレスで大きくなるんだ。

 それを業界用語で態度と呼び、サイズと危険度を示しやすくしている」


「な、なるほど!」


 私が感心すると、「これは警告だが」と前置きが出る。


 「君たち魔法少女や聖獣と同じく、

 感情エネルギーと魔法を扱う聖なる鳥だから、

 飼育ではストレスをため過ぎないよう気をつけてほしい。

 大きくなって暴れてしまう」


「わかりました……意外と危険な面もあったんですね、フェザー?」


「グワッ」


 それが不服だとでも言うように、ムクムクっと少しだけ大きくなる。

 ストレスを感じたのかなと、心配して抱きかかえる腕を緩めると、

 今度はそうじゃないとでもいうように、より深く私の腕に沈み、

 二の腕と横腹の間に顔をずっぽりと突っ込んだ。

 どうやらうるさいのが嫌いらしい。話しかけるときは気をつけよう。

 次にダント氏が「ただいまモル」と飲み物を三つ持って帰って戻ってきた。


「いちごミルクで良かったモル?」


「それはどこの企業の商品だ?」


「これモル? 株式会社エモミルクって書いてあるモル。

 どうかしたモル?」


「いや、今から大霊鳥のエサの話をしようと思ったんだ。

 ソレイユ製の飲料にはエモーショナルエネルギーが含まれていて、

 それらを含めたすべての感情エネルギーは大霊鳥のエサになる。

 飲食をする際はその子の分も用意してほしい。

 ただ、その子はダークエモーショナルエネルギーを喜んで食べる。

 むしろそちらの方が主食だろう」


「なるほど、僕の知識不足モル。すぐに買ってくるモル」


 ダント氏はそう言った後、テーブルにジュースを置き、自販機に戻った。

 私はジュースを一本手に取り、ストローを付け、

 うるさくて拗ねちゃっているフェザーをポンポンと叩いて呼んだ。


「フェザー? ジュースだよー」

『グワッ』


 ムクッと少しだけ大きくなる。話しかけるなってことらしい。反省。

 仕方がないのでジュースをライブリさんに渡すと、彼は驚いた様子だった。


 「プリティコスモスが俺のために……ああ、いや、

 次は君に授ける剣の説明をしよう」


 ライブリさんは剣の話に移し、

 裏ポケットから剣のキーホルダーを取り出した。

 その剣は柄を押し込むと大きくなる特別なものだったらしく、

 ポン、と音を立てて遠井上家本家の家紋――十六葉裏菊じゅうろくよううらぎくの家紋付き鞘付き直剣(ショートソード)になった。


「君に託された剣だ」


「わわ、ありがとうございます」


 ライブリさんに剣を貰うと、

 顔を出したフェザーが「ピウ、ピウ」と可愛く鳴いてサイズが小さく戻る。

 機嫌がいいときは可愛く、悪いときはグワって鳴くっぽい。覚えた。

 そこで「少し骨が折れたモル」とダント氏が返ってくる。


「ふう、ただいまモル」


「あ、おかえりなさいダントさん。時間かかりましたね?」


「ライブリさんの話を参考に、

 ダークエモ力の入ったジュースを探していたモルけど、

 ミステリストエキスが5%入った野菜ジュースしかなかったモル」


「バカになるエキスが入ってる……」


 特進コースの生徒はこれを飲んで何をするんだ?

 少し気になるけど、フェザーの機嫌がいいうちに与えておきたいので、

 ダント氏から受け取ってストローを指し、フェザーの前に見せる。

 すると「ピーウ!」と嬉しそうな鳴き声を上げ、

 ストローの先を啄み、原理は不明ながらちゅうちゅうと吸い上げ始めた。


「フェザーも、特進コースの生徒も、

 なんでこんなものを喜んで飲むんだろう……?」


「少量だとアルコールみたいな酩酊感があるらしいモル。

 いわゆる嗜好品モルね」


「マジですか!?

 あ、ダントさん多めに買い込んでおいて下さい!

 私も……じゃなくて、

 フェザーのストレス解消用の嗜好品がほしいです!」


「自販機は一人一本までの制限があるからダメだったモル。

 ネットで探して箱買いしておくモル」


「助かります!」


 ダント氏はテーブルに乗り、

 いちごミルクに自分でストローを指して飲み始めた。

 私はというとハッとして、改めてライブリさんと向き直る。

 おそるおそるいちごミルクを飲もうとしていた彼も、

 態度を改めて凛々しい表情を向けてくれた。


「す、すみませんライブリさん、少し話がそれました。

 まだ続きがあれば、どうぞ」


「……あ、ああ。剣の説明だな!

 それは現行で唯一、軍事用として製造されている魔法兵器だ」


「軍事用の魔法兵器!?」


「騎士爵を持っている魔法少女にのみ所持が許され、

 光の国ソレイユから自衛権発動の許可が降りた場合のみ、

 マジカルステッキと融合する機能が開放される。

 具体的に言うと、君のメインカラーであるピンク色に変化する。

 でも、普段は鞘から抜けないただの文鎮だから、

 戦闘には使えないかもしれない。

 ただ危険なのは間違いないから、取り扱いには十分に気をつけてくれ」


「わあ、わ、分かりました。

 騎士爵の重みがすごい……」


「君の肩には光の国ソレイユだけじゃない、日本の運命も乗っている。

 国防の要としての尽力を期待し、剣を託されたんだ。

 魔法事件の積極的な解決と、怪人や魔獣など、

 国民に対して害を及ぼす、危険な怪物退治を進んで行って欲しい、とのことだ」


「分かりました! 悪は成敗、正義は勝つですね!

 がんばります!」


「その調子だ! ……はあ、そしてこれで俺の仕事も終わりだな」


「わ、わあ、萎えちゃった」


 すべてをやりきったライブリさんは、完全に燃え尽きたようで、

 目尻に涙を浮かべて座席により掛かるだけの銀髪美女生徒になってしまった。

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― 新着の感想 ―
ガルーダ… 純粋に戦闘用なら、大きくて気性が荒い方が有利だけど、ライナの乗騎にするには扱いやすさも必要なのかな。 ダークエモーションエナジーが主食… バカになるミステリストエキスが(笑) ガルーダっ…
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