11 新居はまさしくホテルのような
桔花、千尋さんと別れたあと、私達は受付に戻ってきた。
「あれ、段ボールが二つ…?」
送ったのは一つだけどな、と呟いて見覚えのない箱の送り状を確認する。依頼主に父の名前が書かれていた。
「お父さんからだ!」
「中身は部屋に着いたら見ましょうか。
段ボールは私が運びますね、それでは付いてきてください」
よいしょ、と段ボールを持った佐野さんに続いてエレベーターに乗った。
ツミキちゃんは私よりも終始そわそわとして、部屋どこなんだろと呟いては、くるくると回っている。
7階に着いて、佐野さんは708号室のドアに自身の鍵を近づけた。
カチャリという音を聞いてドアを開ける。
「わぁ、…え、すごい…」
キッチン脇のトイレや風呂のあるスペースを抜けると7帖ほどある洋室があってその奥のベランダからは都会の夕景が見える。
ホテルさながらの雰囲気を持つ、12歳が住むには広すぎるほど充分な綺麗な部屋だった。
しかも家具付きの優良物件。
「ここ…わたしの部屋の隣じゃ〜ん☆☆
やったーー!!!!!
今日から隣人さんだよかなでっち!!!!」
ツミキちゃんにきゅっと手を握られて、私も嬉しくて笑って握り返す。
ぴょんぴょん飛び跳ねるツミキちゃんを見て佐野さんも荷物を降ろしながら笑っていた。
「さて、と…筒崎さん。
ポースクレイスを出してください」
そういわれて私が自分の鍵を取り出すと、それに佐野さんの鍵をかざされた。
「ーkinisiー」
淡い光が二人の鍵を包み込む。
光は私の鍵に吸い込まれ、やがて収まった。
「よし、もう片付けてもらって結構ですよ。
これでポースクレイスを使ってここの鍵も開けられるようになりました」
「かなでっち!
明日わたしも荷物出すの手伝うよっ☆☆」
「ありがとうございます…!
ツミキちゃん、よろしくおねがいします」
にこりと口角を上げて二人に礼をした。
礼なんかいいってぇ、とぱしぱし背中を叩くツミキちゃんを見てまた笑みが溢れた。
衣類と書かれた段ボールを開けて備え付けのタンスに服を詰める。
ここで、私が未だに魔法少女の衣装を着たままだったことを思い出す。ツミキちゃんも桔佳も千尋さんも衣装のまま出歩いていたので違和感が無かった。
「ツミキちゃん、これ脱ぐ時ってどうやってますか…?」
「かんたんだよ!!
着た時みたいに両手で鍵を掲げるの☆☆」
なるほど〜、と返事して言われた通りに鍵を掲げた。
魔法省に来た時の服に戻った、だが…。
「変身解いても髪の毛はそのままなんですね……」
頭に触るとぷるるん、とスライムが揺れた。
ぷよんと髪の毛を触り続ける私を見てツミキちゃんは「うーん」と口元に手をやり考える動きをした。
「でもね〜魔法少女は寝る時とお風呂の時以外は脱がないこと多いんだよん☆
かなでっちも着てたほうがいいよ〜☆☆」
「そうなんですか!…まぁたしかに着心地すごい良かったですし」
「なんかね、魔法が掛かってる特別な布を使ってホーセイされてるんだって〜!」
だから装飾が多くても重さが少なくて動きやすかったんだ。私は納得して、元の衣装にまた着替えた。
私は服をタンスに詰めるのを再開した。ツミキちゃんはキッチンで皿やコップを片付けていく。
まだ段ボールは散らかっているけど、寝具とパジャマ、晩ご飯の用意ができるだけの食器類は片付けられた。




