9 なんでなったの?魔法少女
ツミキちゃんが、「ねぇ!!!!」と突然大きな声を上げた。
優雅にカモミールティーを飲んでいた全員がビクッと肩を揺らしてから、なんだなんだとカップを置いて一様にツミキちゃんを見た。
「かなでっち☆☆☆
今日はどうする?お泊まり???」
「え?…ううん、私はこのままこの街に住みますよ」
「「……ええ!!?」」
ツミキちゃんと桔佳の声が揃った。
桔佳の手からドライフルーツがこぼれ落ちる。
みやこさんと千尋さんも、まぁ、と顔を見合わせていた。
「そ、そんなに、変ですか…?」
「いや…変じゃないけど、親御さんよく許してくれたね!
ここに住むってことは最前線で活動するってことじゃん?私がここに住んで戦うって言った時もお母さんめっちゃ渋ってたし」
千尋さんも、ティーカップを持ち直してうんうんと頷いた。
「そうね…私が母親だったら、子供を前線に立たせるのは躊躇うかな」
「かなでっち!!気になってきた☆☆
どーやってパパとママを説得したの???」
ばっ、と乗り出して疑問をぶつけてくるツミキちゃんに、私は少し返事に迷ったあと、お父さんのことを話すことにした。
「私のお父さん、私が小さいころから奏はすごい魔法少女になれるぞって、何度も言ってたんです。
だから…、なんていうか、私が魔法少女になるのはむしろ推薦されてたというか…」
まぁ、とみやこさんと千尋さんの声がまた揃う。
「おとうはん、これまたえらい…、けったいな性格やねぇ…」
みやこさんらしからぬ、深く困惑した表情を見て、なんだか不思議な気分になる。
小声で「魔法少女の私達がいうことじゃないわよ」と千尋さんが耳打ちしていた。
「ママは???ママもそんな感じ??☆」
「あーー…、お母さんは、私を産んだ時に死んじゃって、顔も覚えてなくて…」
一瞬空気が冷えたのを感じて「実家の遺影見ればわかりますから…」と取り繕った。
さらに冷えそうになる場を見て千尋さんがわたわたと話題を変えた。
「ま、まぁ…ご家庭の都合はそれぞれだから、ね!
……そうだ!皆、魔法少女になるぞーって決めた時のこと覚えてる?」
その言葉を聞いた瞬間、ツミキちゃんがガタンと立ち上がり輝く笑顔で言った。
「わたしはね〜☆☆☆
やっぱり魔法に憧れてたから!!!!
魔法少女なる!!!って言った時パパとめっっっちゃケンカしたけど、なるーーー!!って言ってむりやり納得させた☆☆」
「私も憧れです!
私の場合は、お父さんにずーっと魔法はすごいって教えてもらってたし…魔法使いが出てくる絵本を読んでもらったこともあって…!
小学校を卒業したら手続きしようって言ってたから、ずっと今日を待ってて…!!!」
つい私も手をあげて話に乗った。
それを聞いた桔佳も、食べようとしたカシューナッツを一旦手元に置く。
「やっぱりみんな魔法に憧れちゃうじゃんね〜カッコいいもんね〜!
私の家の話も聞いて!」
ツミキちゃんと私は何度も頷いて桔佳の思い出話を聞いた。みやこさんは師弟さんにカモミールティーのおかわりをもらいながら、微笑んで聞いている。
「私んとこ、家族経営で小さいふれあい動物園をやってるんだ。
ほんとは継ぐつもりだったけど、15歳の時ドロモスが湧いちゃってさー、そのとき園を助けてくれた魔法少女にもう一目惚れ!
私も魔法少女になるぞって思ったんだー!」
憧れや夢を語る私達の顔をみて千尋さんはにこにこと楽しそうに笑っていた。
ちらりと後ろを見たら、師弟さんの3人もお給仕しながら魔法少女になったときの思い出話に花を咲かせているようだった。




