寝具がない
誤字脱字の指摘大変助かっております。
結婚式の前日入りという話にはしていたが、クリスの母ちゃんの家には寝具がなかった。
作り付けのベッドなどはあったが、布団や枕は盗賊たちが寝ていたためか痛んでいたので撤去したのだ。
さて、どうするかね……。
思い浮かんだのは、ハリスさんの店。
早速扉でセリュックのハリスさんの店に向かった。
「お邪魔します」
店に入ると、そこにはハリスさん。
「マサヨシ様でしたね。今日はどのようなご用でしょうか?」
俺のことを覚えていてくれたようだ。
「寝具を買いたい。作り付けのベッドのサイズに合った布団が欲しい。今度俺のところで結婚式をやるようになって、その時にお客さんに泊まってもらうための寝具が欲しいんだ」
「それはおめでとうございます。どのような寝具がよろしいでしょうか?」
「比較的高級なものがいいんだが、どうだろう。俺のセンスではちょっと自信がない。悪いんだがドロアーテの近くの俺の家まで来てもらいたいんだがいいだろうか?」
「えっ、何を言っているんですか? ここからドロアーテまではどんなに急いでも一週間はかかります」
「俺は魔法使い」
そう言って指先に火を灯す。
「だから、魔法で移動する方法も持っているんだ」
そのあと、俺は扉を出した。
「この扉を通れば、俺の家に着く」
扉を開け向こう側に俺は行く。
そこには、クリスの母ちゃんの館があった。
「どうぞ、俺の家でベッドに合う寝具を見繕って欲しい」
俺は、軽く頭を下げるのだった。
「あなたは何者なんですか?」
ハリスさんは扉を通りながら聞いてきた。
「知っての通り、イングリッドとノーラの夫になる男。悪いんだけど、この屋敷のベッドルームに寝具を入れて欲しい。泊まる予定の人物は、ランヴァルド王夫妻、ドワーフのバルトール王、エルフのメイナード王、あとは、前ノルデン侯爵夫人、あと十名ほどは貴族ではなく平民だ。この辺の大きな部屋を各王に振り分け、あとの小さめの部屋をお付きや他の出席者ににまわす形になると思う」
館に入り内部を確認していると、ハリスさんの手が震え始める。
「マサヨシ様、まさか、これは……建築家アウグストの作品では?」
「おお、よく知ってるな。その通り、何十年なのか何百年なのかは知らないが古い舘を見つけて、全部ここに移築し補修したものだ」
「ああ、このベッド。この曲線が素晴らしい!生きてアウグストのベッドにお目にかかれるとは。ああ、この板が体重を分散させるのか。コレならマットが無くても布団だけでも十分に寝心地がいい。マットを敷けば、さらに寝心地が良くなる。何とも布団と枕が無いのが恨めしい。確か支店にグラスダックの羽毛布団があったな。毛布は……マサヨシ様式を行う日は?」
「十二月一日だ」
それを聞くと、ブツブツと言いながら歩き出した。
「冬になっている。マットレスを敷き、サンドキャメルのシーツと毛布で挟む。その上からグラスダックの布団。コレならどんなに冷えても暖かい。サンドキャメルの毛布を仕入れないと。しかし、サンドキャメルのシーツはゴワゴワしてしまう。上にもう一枚シーツか? すべすべして通気性のいい布」
「マジックワームの布なんてどうだ? あれならすべすべしていて通気性が良かったはずだが?」
「マッ、マジックワーム? あの幻の?」
俺の顔を見て唖然とする。
「幻かどうかまでは知らないが、マジックワームの幼虫から糸を取り、今、布を作っている。見てみるか?」
「はい、ぜひ!」
マジックワームたちが糸を出し、糸巻に糸がまかれていく様をハリスさんは見ていた。
「奥に居るひときわ大きい芋虫がマジックワームですか?」
「そう、あれがマジックワーム」
嘘だ、あいつらはヘブンワームとヘルワームだったが、あえて言わないことにした。
「次が機織り場だ。シルクワームとマジックワームの布を作っている。誰か済まない。マジックワームの布を持ってきてくれないか?」
俺がそう言うと、機織り場の責任者の銀狼のおばちゃんが、
「これでいいかね?」
と言って出来上がったばかりの真っ白な布を持ってきた。
「どうぞ」
俺はハリスさんにその布を見せる。
「これがマジックワームの布。この肌触り、この光沢、この通気性、これならシーツにしても気持ちよさそうだ。これを一枚布にしたら、いくらぐらいになりますか?」
俺に聞いてきた。
「その辺のことは詳しくなくてね」
「マジックワームの服があれば金貨五十枚と聞きます。シーツですから金貨十枚程度はかかりそうですね。なかなか売れる物ではない」
ハリスさんは首を振っていた。
高すぎて売れないってことか。
「ハリスさんにマジックワームの服を売ってもらおうかと思っていたんだが。売るのは難しいのかぁ……。王が使ったスーツって事で売れないかな。シルクワームの服もあるから、そっちを主で売るって手もあるかな?」
「えっ、マジックワームの服? シルクワームの服? それを私が売る?」
「そう、前にお世話になったから、利益になるような物を売ってもらおうかと思ったんだけど。確かにマジックワームってのは防具としては有名だが服としてはね。染色なんかで模様を作ればこんな風にもなるんだが」
俺は飾ってあったラウラのドレスにかかった布を取る。
「これは……」
真白な布地に刺繍、レースで飾られた一着のドレス。
「俺の妻になる人が着る服の一つ」
「見事ですね」
「ああ。こういうのも作れるってことだ。防具を兼ねた服」
「私には防具はわかりません。ただ、布地の良し悪しはわかる。私は元々寝具屋です。服屋までが限界でしょう。シルクワームのシーツや服を主に売らせてもらうということではいけませんか? 冒険者や貴族などに在庫が無いかと聞かれた時に、こちらから依頼してマジックワームの服を作ってもらうということでどうでしょうか?」
「欲が無いんだな」
「商人には欲が必要ですが、身の丈を越えると身を滅ぼします」
ニコリと笑うとハリスさんはそう言った。
「それでは、早急に寝具の手配をします。マサヨシ様のほうでもシーツの作成をお願いしますね」
「ああ、わかった。どの程度の時間がかかりそうだろうか?」
「質のいいモノを捜しますので、そうですね、一カ月ぐらいかと」
「わかった、それで手配を頼むよ」
俺は再びハリスさんの店に扉を繋ぐ。
「それでは、私のほうで手配しておきます。物が集まった時はどのようにすれば?」
「ノーラ・ノルデン侯爵に伝えてもらえれば問題ない」
「畏まりました」
そういうと、ハリスさんは店に戻っていくのだった。
「マサヨシ様、マサヨシ様の服が出来上がってるんだが、合わせてみるかい?」
機織り場に来ていた仕立て担当のおばちゃんが声をかける。
ああ、ヘルワームの布を使ったやつだな。
「たのんます」
俺は仕立て場に行くと、今着ているマジックワームのスーツにそっくりなヘブンワームのスーツをおばちゃんが持ってきた。
「まず脱いでもらおうか」
俺は言われるままにマジックワームの服を脱ぐ。
「ほら、着てみな。ここでしかできないヘルワームの真っ黒な服だ」
俺はヘルワームのスーツを受け取って着てみた。
「軽いな」
「ああ、マジックワームよりも軽い。ただ防御力は知っての通り折り紙付きだぞ」
オリハルコンのハサミや針がないとできないような服だ。当然だろうな。
マジックワームの服に感謝し収納カバンへ仕舞う。
俺は今後ヘルワームのスーツを着ることにした。
家に戻ると、
「主よ、服を改めたのか?」
リードラが俺に聞いてきた。
「ああ、ヘルワームの糸でできている」
「男前が上がったのう?」
「そうか? 容姿は自信がないがね」
「我がそう思っているからいいのじゃ」
「さて、飯を食おうかな」
「我も付き合おうぞ」
俺たちはテーブルに向かうのだった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。




