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夏に向けて。

誤字脱字の指摘、たいへん助かっております。

 夏になると欲しい物……エアコン。

 空気を圧縮し、圧縮し温度が上がった空気を常温まで冷却、その後常圧まで膨張することで冷えた空気を作るというもの。

 俺は風の精霊に頼んで圧縮。水の精霊に頼んで冷却。そして再び風の精霊に頼んで膨張……。何なら水の精霊に頼んで加湿もしてもらえるようにした。


「あ゛ーーーー」

 リビングのソファーの背もたれに体を預け伸びをする。

 程よい風が俺の周りを流れる。

 声が気になったのか、サラが調理室から顔を出した。

「あ゛?」

 俺と目が合う。

 あっ、躊躇した。

 サラは見てはならないものを見たように、すっと調理場に戻った。

 ダラダラした姿ぐらい別に見られてもいいけどね。


 夏かぁ……。

 ビルの間から見上げる空が青かったのを覚えている。

 一人暮らしの洗濯は大変だ。

 入道雲を見つけゲリラ豪雨に怯えていた。

 布団を干していた時に降られると最悪だった。

 休みの時にでもすれば良いだろう? って思うんだが、朝起きてしまうとどうしても洗濯機のボタンを押してしまう。

 そういえば自動乾燥機能がついたドラム式の洗濯機を買っても、

「お日様の光で乾いた洗濯物が一番気持ちいいんだよね」

 と言って、元妻はその機能を使っていなかったな。

 結局俺も物干しに洗濯物を干すのが習慣になっていた。


 こっちに来てからは、マールが俺んちの洗濯は取り仕切っていた。

 ありがたいことだ。

 晴れていればお日様の下に物干しに干された洗濯物が並ぶ。

 まあ、雨が降ったら、俺が乾燥させるんだが。

 そう言えば、洗濯ばさみを作ると、マールに喜ばれたっけな。

 でも、やっぱりお日様で乾燥した服は気持ちいいと思う。


「マサヨシ様、何をなさっているのですか?」

 ソファーでだらけている俺を背もたれ側からマールが見降ろしていた。

 丁度顔が反対に見える感じだね。

「ん? ボーっとしていた」

 俺はマールを見上げ答える。

「そう言えば、この家の中が外よりも涼しくて気持ちいいのですが……」

「ああ、精霊に頼んだんだ。俺の知識を使って涼しくしてもらった」

「それでですか」

「夏に向けて頼んでみたんだ。精霊も上手くやってくれている」

 マールが何か思いついたようだ。

「マサヨシ様、でしたら孤児院のほうにもつけてはどうでしょうか? 我々よりも子供たちのほうが体力は無いですから」

「そうだな、寄宿舎と校舎に付けるようにするか」

「夜、暑くて寝られないのは体が疲れます。ジメジメしていないだけでも違いますからね」

 気が利くマールだった。


「そう言えば、マール。夏と言えばっていうお菓子とかはあるのか?」

「わかりません。私が思い浮かぶのは蜜を水に溶かしたような甘い水ぐらいでしょうか。それでもぬるくなっています。氷が流通している訳ではありません。この家のように氷が入った冷たい飲み物など贅沢になってしまいますね」

「ふむ、冷たいお菓子を食ってみたいか?」

「お菓子ですか? はい、食べたいです!」

 マールは嬉しそうに返事をした。

「いつも働いているマールとサラ、そしてサラの弟子にご褒美かな? 多分匂いにつられていろいろ集まってきそうだがね」


 アイスクリームを作るかね。

 俺は、牛乳を出し、鍋に砂糖を入れて火にかけた。コカトリスの卵がデカいため、牛乳の量も多くした。

 確か、卵黄を使ったよな。

 砂糖が溶けきったところで、別の容器に入れていた卵黄に混ぜる。

 目の粗い布で液を濾しながら鍋に戻すと再びとろみが出るまで煮た。

 氷水に塩を溶かし氷点降下を利用した冷媒を作って、そこに鍋を漬けた。

 ミスリル製の鍋は熱伝導率がいいのか、直ぐに固まり始める。

 あとはヘラで混ぜ混ぜだねぇ。

 空気がいっぱい入るといいね。

 さらにほどほど混ぜた生クリームを入れる。

 バニラエッセンスやビーンズがあればいいんだけど、そんなものは無いからここまでだ。

 ほどほど固まって、粘っこくなったらおしまい。

 マールは嬉しそうに、サラと弟子たちは真剣に、俺が作るアイスを見ていた。


 小さな皿を取り、スプーンでアイスクリームを載せる。

 小さな椀をとって、そこにゴッペ(いちご)ジャムを入れる。

「ほい、出来上がりだ。最初はジャム無しで食べてみて。要ると思ったらジャムをかけていいから」

 俺はスプーンを四本……じゃないな八本準備した。

「お前らいつの間に」

 エリス、アイナ、リードラ、クリスが入口から。

 フィナが来ないのは子供相手中かな? 

「私は調理場からお父さんの匂いがしたから。もしかしたらッて思って……」

「ん、マサヨシが調理場に居ると何か美味しいものができる」

(われ)は甘い匂いがしておったのでな、誘われてきた」

「私はリードラと話をしていたらリードラがいい匂いがするって言うからここに来たの」

「仕方ないねぇ」

 アイスクリームを四皿追加した。

 結局、ご褒美にはならなかったようだ。


「マサヨシ様、美味しいです。冷たくてねっとりして甘くて、口の中ですッと溶ける。これを私のために」

 嬉しそうなマール。

「これは美味しいですね。マサヨシ様、このお菓子に最初からジャムを入れてもいいのでしょうか?」

「俺はやったことは無いが、やってみればいいんじゃないかな? 今度氷が作れる魔道具を作ろうか。そうすればこのお菓子も作ることができる。作り方はあまり難しい物じゃないしな」

「はい、工夫してみます」

 既に次のことを考えるサラ。

「「コレ、美味しいです。作って下さってありがとうございます」」

 素直に感謝の弟子たち。

「お父さん、コレずっと食べられる」

「駄目だぞ、お腹冷やして壊してしまうから」

「うーん、残念」

 子供な反応のエリス。

「マサヨシ、美味しい。ありがと」

 淡白な反応のアイナ。

「んー、(ぬし)よ、これはいいな」

「そうね、暑いときにこれを食べたら気持ちよさそう」

「一応、働いている者へのご褒美だからな」

 ちょっとばつの悪そうな、リードラとクリス。

「まあ、いいよ、みんなが美味しいと言ってくれるんだ。俺も嬉しいよ」

 二人はホッとしたような顔になる。

 そして周りの者もニコニコだ。

 俺は周りを見回しニヤリとすると、

「ただ、これあんまり食べると、太るやつだからな」

 そう俺が言うとピキンと空気が張りつめるのだった。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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