第67話 「広がる反響と、“近づく距離”」
朝・静かな違和感
「……なんか増えてるな」
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水上颯太がスマホを見ながら呟く。
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画面には、ニュース記事とSNS。
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“斉藤もも 本格復帰で話題”
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コメント数、拡散数。
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どれも昨日より明らかに増えている。
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桃華の反応
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桜井桃華は軽く覗き込む。
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「そんなに?」
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颯太は画面を見せる。
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「普通にトレンド入ってる」
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桃華は少しだけ苦笑する。
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「……実感ない」
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“外”と“内”のズレ
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リビングには、いつも通りの朝。
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子どもたちの声。
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食事の準備。
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でも、外の世界では――
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“斉藤もも”が再び注目されている。
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保育園・何も変わらない場所
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三人を送り出す。
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先生も、周りの保護者も、
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何も知らない。
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ここでは“桜井桃華”。
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完全に切り離された空間。
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午前・仕事側の動き
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マネージャーの岸田ほのかから連絡。
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「オファー、かなり増えてます」
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「雑誌、特集、インタビュー……」
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桃華は少し考える。
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「全部は受けません」
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「今のペース守ります」
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“距離”の調整
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増やせば、広がる。
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でもその分、家庭との距離も変わる。
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桃華はそれを理解している。
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午後・颯太の視点
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大学の休憩中。
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友人たちの会話が耳に入る。
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「最近さ、斉藤もも復帰したよな」
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「見た?やっぱレベル違うわ」
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颯太は何も言わない。
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ただ、静かに聞いている。
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(すぐ隣にいるんだけどな)
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少しだけ、不思議な感覚。
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夕方・帰宅後
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「ただいまー!」
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子どもたちが帰ってくる。
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桃華はいつもの笑顔で迎える。
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「おかえり」
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この瞬間、
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“斉藤もも”の気配は消える。
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夜・二人の時間
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子どもたちが眠ったあと。
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リビング。
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颯太がぽつりと聞く。
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「なんかさ」
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桃華が見る。
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「距離、近くなってないか?」
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意味
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「距離?」
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颯太は少し考えて言う。
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「外の“もも”と、今ここにいる“桃華”」
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「前より繋がってる感じする」
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桃華の答え
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桃華は少し考えてから答える。
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「かもね」
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「隠してるわけじゃないし」
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「ただ、分けてるだけ」
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境界の変化
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颯太は頷く。
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「でも前より、その境界薄いな」
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桃華は小さく笑う。
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「慣れたんじゃない?」
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締め
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外では広がる“斉藤もも”。
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内では変わらない“桜井桃華”。
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でもその二つは、
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少しずつ距離を縮めている。
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桃華が静かに言う。
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「ちゃんと戻る場所があるからね」
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颯太は頷く。
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「それが一番大事だな」
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