第57話 「家庭と仕事の再バランスと、“新たな選択”」
朝・静かに始まる違和感
「……今日、少し早い?」
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水上颯太がキッチンで聞く。
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桜井桃華は支度をしながら頷く。
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「うん、午前から打ち合わせ入ってる」
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その一言に、少しだけ“忙しさ”の気配が混じる。
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三つ子の準備。
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保育園。
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大学。
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仕事。
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すべてが同時に動いている。
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午前・それぞれの現場
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颯太は大学。
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講義を受けながらも、頭の片隅で考える。
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(このまま増えていくな)
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一方、桃華。
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マネージャーの岸田ほのかと打ち合わせ。
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「復帰後の反応、かなり良いです」
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桃華は静かに聞く。
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「でも無理はしません」
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はっきりとした意思。
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“選択”の必要性
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ほのかは少し真剣な顔になる。
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「今なら、もっと広げられます」
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「仕事量も増やせますし、露出も」
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桃華は少しだけ考える。
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“母としての自分”
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“仕事としての自分”
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どちらも本物。
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昼・一通のメッセージ
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颯太のスマホに通知。
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桃華から。
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(今日、少し話したいことある)
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短い文。
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でも内容は重い。
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(……来たか)
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夕方・家族の時間
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保育園のお迎え。
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三つ子は元気に走ってくる。
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その姿を見ながら、颯太は思う。
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(守るべきものは増えてる)
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夜・向き合う時間
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子どもたちを寝かせたあと。
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リビング。
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桃華が先に口を開く。
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「仕事の話なんだけど」
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颯太は静かに頷く。
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「うん」
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本題
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桃華はゆっくり言う。
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「増やそうと思えば、増やせる」
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「でも……」
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少し間を置く。
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「今のままでもいいとも思ってる」
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迷いの正体
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颯太は聞く。
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「どっちで迷ってる」
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桃華は正直に答える。
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「どこまで“仕事の私”を優先するか」
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「どこまで“母の私”でいるか」
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颯太の答え
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少し考えてから言う。
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「どっちか選ぶ必要あるか?」
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桃華が見る。
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「……どういう意味?」
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颯太は続ける。
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「比率を変えればいい」
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「ゼロか百じゃなくて」
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新しい考え方
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桃華は少し驚いたように笑う。
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「また調整って言うんでしょ」
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颯太も少し笑う。
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「その通り」
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決断
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桃華は深く息を吐く。
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「じゃあ……」
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「今は、このままにする」
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「増やしすぎない」
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理由
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桃華は続ける。
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「今の生活、崩したくない」
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「でも、仕事もちゃんと続けたい」
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その答えはシンプルだった。
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共有
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颯太は頷く。
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「それでいい」
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「今の最適だろ」
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締め
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夜は静かに流れる。
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すべてを選びきる必要はない。
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その時々で、最適を選ぶ。
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桃華が小さく言う。
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「また変わったら、その時考えよ」
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颯太は頷く。
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「それでいい」
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