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第44話「家族の安定と、桃華の“母としての選択”」


朝・水上家


「……起きたか」



水上颯太は、慣れた手つきで三つ子の部屋へ向かう。



はやてさくら桃佳ももか



泣き声はもう“恐怖”ではない。



ただの合図になっていた。




「早いね、もう完全にプロじゃん」



桜井桃華がキッチンから声をかける。




颯太は苦笑する。



「プロって何だよ」




でも手は止まらない。




育児の安定



ミルク、着替え、寝かしつけ。



流れは完全に固定されている。




阿利佐も自然に手伝いに入る。



「この子たち、今日は機嫌いいわね」




桃華は少し笑う。



「昨日夜は地獄だったけどね」




颯太も笑う。



「日替わりかよ」




午前・大学と仕事



桃華はノートを開く。



大学の課題。



その横にスマホ。



仕事スケジュール。




「分裂してる感じするな」



颯太が言う。




桃華は少し考えてから答える。



「でも、どっちも私なんだよね」




その言葉に、颯太は頷く。



「そうだな」




“母としての違和感”



桃華はふと手を止める。



「ねえ」




「私さ」




颯太が顔を上げる。




「本当にこれでいいのかなって、たまに思う」




颯太はすぐには答えない。




桃華は続ける。



「仕事してる時の私と」



「母親の私」



「どっちが本当なんだろうって」




颯太の答え



少しの沈黙のあと。



颯太は言う。



「どっちもだろ」




桃華が見つめる。




「役割じゃなくて」



「全部まとめて“お前”だよ」




「切り分ける必要ない」




桃華はゆっくり息を吐く。




「……そっか」




少しだけ肩の力が抜ける。




阿利佐の一言



「悩むのはいいことよ」




「でもね」



「分けすぎると壊れる」




桃華は頷く。



「はい」




午後・小さな外出



スーパー帰り。



三人で歩く。




颯太が言う。



「こういうの増えたな」




桃華は笑う。



「普通の家族っぽいでしょ」




颯太も笑う。



「もう普通だな」






三つ子が寝る。



静けさ。




桃華はソファに座る。



「ねえ」




颯太が隣に座る。



「ん?」




桃華は少しだけ笑う。



「私、母親でよかったのかな」




颯太は即答する。



「よかったに決まってる」




「じゃなきゃ今ここにいない」




桃華はその言葉を聞いて、小さく頷く。




静かな確信



外の世界はある。



仕事もある。



大学もある。




でもこの家の中心は一つだけ。




颯太が言う。



「もう迷わなくていいだろ」




桃華は少し笑う。



「うん」




「たぶん、もう大丈夫」




夜は静かに続く。



でもその静けさは、もう“孤独”ではなかった。



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