閑話⑤(後編) 「今の距離と、あの日の答え」
少し… この回は刺激的です。
颯太の思いがここで爆発します。
好きな女性と(昔)繋がれた事に、今こうして妻として…
世界一大好きな女性との子供が出来る事に感無量の颯太の話…
病室・夜
静かな空気の中で、颯太は少しだけ天井を見上げていた。
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「……あの時さ」
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ぽつりと続ける。
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「ファン感謝祭のこと、ずっと覚えてる」
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桃華は、何も言わずに聞いている。
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回想の続き
鎌倉の旅館。
特別なイベント。
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“距離が近すぎる現場”。
旅館の一室を借りて、スタッフやカメラマンに…
プロデューサーや照明係何人かで撮影が始まって、
男性30人の中に颯太が…
斉藤ももと30人が一人一人身体を重なり合って…
その中の1人が颯太。斉藤ももと繋がれた瞬間。
その時は本当に感動した。好きなAV女優が…
目の前で世界一好きな女性と出来た事に。
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それでも颯太にとっては――
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ただの刺激的な体験じゃなかった。
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「本物なんだ」
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その一言がすべてだった。
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画面越しじゃない。
遠い存在じゃない。
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目の前にいる、“憧れそのもの”。
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現在・病室
「正直さ」
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颯太は少し笑う。
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「夢みたいだった」
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「本当に、同じ空間にいるだけで限界だった」
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桃華が小さく目を伏せる。
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「でも」
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颯太は続ける。
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「その時からずっと思ってた」
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「この人のこと、ちゃんと見たいって」
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沈黙
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桃華は、ゆっくりと息を吐く。
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「……変だよね」
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小さく笑う。
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「そんな始まり方なのに」
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颯太は首を振る。
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「変じゃない」
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「むしろ、そこからだから今がある」
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桃華の答え
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少しの間。
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そして――
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「ねえ」
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桃華が静かに言う。
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「今も、ちゃんと見てる?」
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颯太は迷わず答える。
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「見てる」
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「昔より、ずっと」
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その言葉に、桃華は少しだけ目を細める。
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「じゃあ……いいや」
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ゆっくりと身を起こす。
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そして――
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颯太の頬に手を添える。
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次の瞬間。
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短く、でも確かなキス。
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「ありがとう」
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小さく呟く。
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それは過去への感謝でもあり、
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今を選んだ自分への肯定でもあった。
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病室の静寂
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外の世界では、まだ騒がしさが残っている。
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でもこの部屋だけは――
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“始まり”と“現在”が静かに繋がっていた。
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