第24話「暴かれる兆しと、選択の時」
⸻
昼・大学構内
「……桜井さん」
⸻
呼び止められる声。
⸻
振り返ると――
⸻
相沢玲奈。
⸻
その目は、真っ直ぐだった。
⸻
「少し、いい?」
⸻
断れない空気。
⸻
「……うん」
⸻
静かに頷く。
⸻
⸻
人の少ない廊下
⸻
「最近、体調悪いよね」
⸻
いきなり核心。
⸻
「……ちょっとね」
⸻
曖昧に返す。
⸻
「休学するって聞いた」
⸻
(やっぱり……)
⸻
完全に、嗅ぎつけている。
⸻
「うん、考えてる」
⸻
「病気?」
⸻
間髪入れずに来る質問。
⸻
「……まあ、そんな感じ」
⸻
嘘ではない。
⸻
でも、本当でもない。
⸻
「……」
⸻
玲奈は、じっと見つめてくる。
⸻
逃げ場がない。
⸻
「ねえ」
⸻
一歩、近づく。
⸻
「隠してるよね?」
⸻
その一言で、空気が張り詰める。
⸻
「……」
⸻
何も言わない。
⸻
それが、答えみたいなものだった。
⸻
「無理に聞く気はないけど」
⸻
少しだけトーンが落ちる。
⸻
「周り、気づき始めてるよ」
⸻
その言葉は、現実だった。
⸻
「……うん」
⸻
小さく頷く。
⸻
「でも」
⸻
顔を上げる。
⸻
「言えないこともある」
⸻
はっきりと言う。
⸻
その目は、揺れていなかった。
⸻
「……そっか」
⸻
玲奈は、少しだけ息を吐く。
⸻
「そこまで言うなら」
⸻
「もう聞かない」
⸻
意外な言葉。
⸻
「え……」
⸻
「でも」
⸻
少しだけ鋭くなる目。
⸻
「無理して倒れたら、意味ないから」
⸻
「ちゃんと休みなよ」
⸻
その言葉は――
⸻
責めるものじゃなかった。
⸻
ただの“心配”。
⸻
「……ありがとう」
⸻
自然と、そう言えた。
⸻
「じゃあね」
⸻
玲奈は、それ以上追わなかった。
⸻
⸻
(助かった……)
⸻
でも同時に分かる。
⸻
(ギリギリだった)
⸻
⸻
数日後
⸻
事務手続き室。
⸻
「こちらで大丈夫です」
⸻
差し出された書類。
⸻
休学届。
⸻
「……」
⸻
ペンを握る手が、少し震える。
⸻
(これで……)
⸻
“普通の大学生活”は、一旦終わる。
⸻
でも――
⸻
(守るため)
⸻
ゆっくりと、名前を書く。
⸻
桜井桃華。
⸻
「お願いします」
⸻
書類を渡す。
⸻
これで、決まった。
⸻
⸻
病院
⸻
「安静が必要です」
⸻
医師の言葉。
⸻
「三つ子ですし、負担が大きい」
⸻
「……はい」
⸻
「しばらく入院しましょう」
⸻
その一言で、現実が確定する。
⸻
⸻
病室
⸻
白い天井。
⸻
静かな空間。
⸻
「……ここか」
⸻
ベッドに横になる。
⸻
少しだけ、不安。
⸻
でも――
⸻
「守るためだもんね」
⸻
お腹に手を当てる。
⸻
小さく、笑う。
⸻
⸻
一方その頃
⸻
颯太の部屋。
⸻
静かな夜。
⸻
机の上に並ぶ、DVD。
⸻
その一枚を、手に取る。
⸻
「……」
⸻
画面の中には――
⸻
“斉藤もも”。
⸻
自分が、ずっと追いかけてきた存在。
⸻
「……すごいよな」
⸻
小さく呟く。
⸻
あの頃は、ただの“ファン”だった。
⸻
遠い存在。
⸻
触れることもできない人。
⸻
でも今は――
⸻
(隣にいる)
⸻
“桜井桃華”として。
⸻
そして――
⸻
“妻”として。
⸻
「……信じられない」
⸻
何度思っても、同じ気持ちになる。
⸻
再生ボタンを押す。
⸻
画面の中の彼女を、じっと見つめる。
⸻
真剣な表情。
⸻
(ずっと、これを見てきた)
⸻
憧れ。
⸻
好きという気持ち。
⸻
全部が詰まっている。
⸻
でも今は――
⸻
(それ以上だ)
⸻
ただの“推し”じゃない。
⸻
守るべき人。
⸻
支えるべき存在。
⸻
そして――
⸻
(家族)
⸻
「……俺、やばい人生だな」
⸻
少しだけ笑う。
⸻
でも――
⸻
その顔は、どこか誇らしかった。
⸻
⸻
病室・夜
⸻
スマホが震える。
⸻
【颯太】
⸻
「もしもし」
⸻
「桃華、大丈夫か?」
⸻
「うん、入院した」
⸻
「そっか……」
⸻
少しの沈黙。
⸻
「ちゃんと守ろうな」
⸻
その一言。
⸻
「うん」
⸻
迷いなく、答える。
⸻
⸻
“隠すこと”は終わらない。
⸻
でも――
⸻
“守ること”は、もっと強くなっていく。
⸻
⸻
二人の物語は、次の段階へ進んだ。
⸻
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——
ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!
その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。
読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。
「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!
皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。




