第115話 「“朝の切り替え”と、止まらない日常」
■早朝のリビング
まだ外が薄く青い時間。
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家の中は静かで、
三つ子の寝息だけが小さく重なっている。
颯、桜、桃佳。
その三つの存在を見守るように、
桜井桃華はキッチンに立っていた。
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朝食の準備。
ミルクの温度確認。
小さな手の届く場所に食器を並べる。
その動きは慣れていて、自然だった。
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■“母”としての時間
桃華は子供たちの顔を順番に確認する。
布団のズレを直し、頬に触れ、体温を確かめる。
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その全てが静かな愛情だった。
「よし……大丈夫」
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小さく呟いたその時。
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■背後の気配
階段から足音。
ゆっくりと降りてくる影。
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水上颯太。
「……おはよう」
まだ眠気の残る声。
桃華は振り返る。
そこにいた“妻”は、まだ眼鏡をかけた桜井桃華だった。
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■切り替えの瞬間
颯太の視線と合う。
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ほんの一秒。
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桃華は何も言わないまま、
ゆっくりと眼鏡に手をかける。
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外す。
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空気が変わる。
同じ顔なのに、まるで別の存在になる。
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■ももへの変化
桃華ではなく、“もも”。
その瞬間、ももは静かに言う。
「……おはよう、颯太さん」
そして、何の迷いもなく――
服のボタンに手をかけ… ゆっくりと外していく動作。
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朝の空気の中で、その変化はあまりにも自然で、
同時に強烈だった。
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■颯太の動揺
颯太は一瞬固まる。
「……おい、ちょっと待て」
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声は出るが、止まらない。
ももは止めない。
ただ、そこにいる。
その姿に、理性が追いつかない。
(大学行かなあかんのに……)
頭では分かっているが体が動かない。
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■衝動
次の瞬間… 颯太は一歩近づく。
そして―― ももの唇に、強くキスをする。
深く、抑えきれないままのキス。
朝の静けさの中で、時間だけが一瞬止まる。
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■呼吸の余韻
「……っん」
ももは小さく息を漏らす。
それでも離れない。
むしろ、受け止めるように応える。
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■現実への引き戻し
やがて颯太はゆっくり離れる。
息を整える。
「……ほんま、あかんて」
そう言いながらも、視線はまだももに残っている。
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■朝の決断
颯太はカバンを掴む。
パンを口に加え… そして玄関へ向かう。
靴を履きながら、振り返る。
そこにはももが立っている。
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颯太は少しだけ笑って言う。
「帰ってきたらさ」
「桃華(眼鏡)で、ちゃんとキスするからな」
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ももは一瞬だけ目を細める。
そして小さく頷く。
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「……待ってる」
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玄関のドアが閉まる。
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朝の光。
子供たちの寝息。
そして、残る余韻。
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日常はいつも通り始まった。
だがその中身は、少しずつ濃くなっていく。
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