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第102話 「“特定”と、“守るための選択”」


■朝・静かな部屋の中で


ドアが閉まる音が、ゆっくりと部屋に残る。


ついさっきまでそこにいた気配。

温もり。空気。


“斉藤もも”として外へ出ていった桃華。

その余韻の中で、水上颯太は一人、リビングに立っていた。


⸻


■静かな朝


静かすぎる朝。


(これが……始まりか)


昨日までと同じ家のはずなのに、どこか“質感”が変わっている。

日常がそのまま続いているようで、確実に一段階だけ現実が深くなっていた。


⸻


■スマホの振動


机の上のスマホが震える。


画面を開く。


SNSの投稿。

掲示板のスレ。

匿名の書き込み。


「例の男、大学のやつじゃね?」

「食事会にいたって情報一致してる」

「写真の角度的に顔見えるかも」


⸻


■加速する現実


(ここから一気に来る可能性があるな)


特定。

それは一度始まると止まらない。


だが、颯太は慌てない。

深く息を吐く。


(まだ確定じゃない)


“疑い”の段階。

ならば、まだ守れる範囲は残っている。


⸻


■スタジオへ向かう車内


同時刻、都内。


「斉藤もも」は車内にいた。

助手席で外を見ている。


運転しているのはマネージャー・岸田ほのか。


車内は静かだが、空気は重い。


⸻


■ほのかの一言とももの反応


「……ちょっといい?」


視線は前のまま。


「昨日の件、広がってる」


短く、しかし重い。


「……だよね」


驚きはない。

むしろ想定の範囲内だった。


「一部で、“特定しようとしてる動き”がある」


⸻


■覚悟の温度


「来ると思ってた」


ももの声は静かだった。


軽いようで、もう後戻りはしない響き。


⸻


■ほのかの問いとももの答え


「……怖くないの?」


「怖くないって言ったら嘘になる」


少し間を置いて、続ける。


「でもさ、もう隠れる前提で生きてないから」


「バレるなら、それはそれで考える」


「今は、やることやるだけ」


⸻


■ほのかの視線ともも


横目で見ながら、少しだけ息を吐く。


「ほんと変わったね」


「環境が変わったからね」


短く、それだけ。


⸻


■家での颯太


ソファに座り、スマホを見つめる颯太。


「○○大学の○年じゃね?」

「講義の時間一致してる」

「知ってるやついたら教えて」


点が増えていく。

あと少しで“線”になる流れ。


(……動くか)


何もしないという選択もある。

だが“守る”なら、最低限の行動は必要だ。


⸻


■整理と判断


投稿の流れを追う。

情報の重なりを確認する。


(特定材料はまだ弱い)


写真は不鮮明。

名前も出ていない。


(まだ止められる)


⸻


■夜・再会


玄関のドアが開く。


「ただいま」


「おかえり」


“斉藤もも”として帰宅した彼女は、部屋に入った瞬間ふっと肩の力を抜く。

そこにはもう“桜井桃華”がいる。


⸻


■夜の会話


「今日、結構広がってる」


颯太が言う。


桃華は小さく頷く。


「うん、聞いた」


「怖い?」


少しだけ間を置いて。


「……ちょっとだけ」


正直な声。


でもすぐに続ける。


「でも、それ以上に」


「今の方が大事」


⸻


■隣に座る距離


桃華がゆっくりと隣に座る。


肩が触れるか触れないかの距離。


言葉は少ない。

それでも十分だった。


外では“特定”が進み、

内では“覚悟”が固まっていく。


⸻


その二つが交わるとき、

日常はもう一段階、形を変える。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


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皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。

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