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あなたの『謎』、聞きます  作者: 佳景(かけい)
第3話 メッセージカード
31/62

―31―

 相変わらず『ペンタブ』さんの意図はよくわからなかったけど、私はとりあえず訊かれたことに答えた。


「赤です。クリスマスっぽくしたくて、わざわざ緑色のペンを買ってメッセージを書いたそうなんですが」

「なるほど。多分、謎が解けました」


 『ペンタブ』さんはある程度の確信を得たみたいでそう言ったけど、私には何が何だかさっぱりわからなかった。


「すみません、私にもわかるように説明してもらえますか?」

「わかりました。結論から言うと、その彼はきっと色覚異常者なんですよ」


 と言われても、色覚異常なんて聞いたことくらいしかない私には、どうにもピンと来なかった。


 色の見え方が独特なら、例の彼が色違いの靴下を履いていた理由としては納得できるけど、書かれている文字が読めないなんて、そんなことがあるのだろうか。


「色覚異常の人って、みんな赤いカードに書かれた緑の文字が読めなかったりするんですか?」

「色覚異常にはいくつかのパターンがあるそうなので、色覚異常者の人が全員そうとは言えないようですが、赤の色と緑の色――それぞれを感じる視細胞の感度が低かったり、視細胞自体がない人はいるそうですよ。緑色のペンで書かれた字が読めなかったなら、その彼は緑の視細胞の感度が低いか、もしくは緑の視細胞がない人なのでしょう」

 

 そういうことなら、『まっしー』のメッセージが読めなかったのも納得だ。


 でも、まだわからないことがある。


「世の中の人全部が色覚異常って訳じゃないんですから、自分で読めないなら誰かに読んでもらえば良かったのに、彼は何でそうしなかったんでしょうか? そしたら友達も『嫌われてるかも』なんて思わずに済んだのに……」

「その彼の人となりを知らないので、推測でしかありませんが、単に気恥ずかしかったのではないでしょうか? 恋愛経験があまりない不器用なタイプの方なら、家族や友達に女性からもらったカードを見せることに躊躇いを覚えてもおかしくないと思いますし……他に考えられる可能性としては、そもそも興味がなくてカードを見ていないとか、何らかの理由でカードを失くしてしまったというのもありますが、こういうことはマイナスに考えない方がいい方向に進んで行けると思うので、そのお友達には是非ポジティブな伝え方をしてあげて下さい」

「そうですね。そうします」






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