56. チッパイ
「ウッヒョー! 肉うめぇーー!!」
俺とオリ姫とミーナは、女悪魔スルトとゴースト1万匹を撃退した後、ウッドデッキで祝勝会をしていた。
「やっぱり、仕事した後の肉とビールは上手いなーー!」
「キュイ!」
「ニャ~」
俺は、ジャンジャン肉を焼き、オリ姫とミーナに食べさせる。
と、そんな祝勝会を丸2日間。ぶっ通しでやっていたら、牛を引き連れたシロがお使いから帰ってきた。
「オッ! でかしたシロ! 早速、牛を捌くぞ!」
「ご主人様! 何言ってるんですか!
この牛はミーナさんに、新鮮なミルクを与える為に貰ってきた乳牛ですよ!」
「そうなの? だけど、美味そうだな……」
「絶対、食べちゃ駄目ですよ!
ご主人様が言ったんですからね。
ミーナさんの為に、新鮮なミルクを持って来いって!
だから、乳牛を育てれば、何時でも新鮮なミルクを、ミーナさんに飲ませる事ができるかなって」
シロは、話しながら牛の乳を搾り、ミーナにミルクを与えた。
「ニャ~」
ミーナは、美味しそうにミルクを飲んでいる。
「美味しいですか? これから新鮮なミルクが、何時でも飲めますからね!」
シロは、ミーナの頭をヨシヨシ撫でた。
「で、僕が居ない間、ちゃんとやってましたか?」
シロは、ミーナから目線を外し、俺の方を見る。
「当たり前だろ! 俺を誰だと思ってるんだ!
俺はハーレム勇者、この第22階層の支配者だ!クワッハッハッハッハッハッ!」
「その笑い方、勇者というより、魔王ポイですけど……シロは、ご主人様が勇者でも、魔王でも付いていきますから安心して下さいね!」
どうやらシロは、俺が魔王になっても問題ないらしい。
というか、シロは魔物なので、魔王に仕えるのが本来の正しい姿なのかもしれないけど。
「アッ! そう言えば、また、魔王の下っ端の女悪魔が、俺様に挑んできたぞ!」
「エッ!? ご主人様だけで撃退できたんですか?
あのスルトとかいう女悪魔、相当強かったですよ!」
俺が、女悪魔スルトを撃退したと聞いて、シロが驚いている。
「お前、俺の下僕の癖に、俺のこと過小評価してるだろ……」
「そ……そんなこと無いですって!
ご主人様は、偉大で至高なカッコイイ勇者だって思ってますから!」
「そうか……照れるな……」
俺は、ちょっと恥ずかしくなり、顔が真っ赤になった気がした……。そう気がしただけ。血が通ってない俺の顔が真っ赤になる筈無いのだ!
「ウオォォーー!! 早く、血が通った肉付き人間になりたいよぉーー!」
俺は、思わず叫んでしまう。
そんな俺を、完全スルーして、シロは話の続きを聞いてきた。
「で、どうやって、悪魔スルトを倒したんですか?」
どうやらシロは、実際、相当の実力者であるスルトを、俺が、どうやって倒したか気になっているみたいだ。
「オイオイ、シロ君。僕が下っ端悪魔のスルト如きに苦戦すると思うのかね?
敵はスルトだけじゃなく、魔王軍の精鋭1万人もいたのだぞ!」
「ま……魔王軍の精鋭1万人ですか……」
シロは思いの他、ビックリしている。
これは、俺の武勇伝を存分に聞かせてやるしかないな。
「おうよ! 俺はそいつらを、ちぎっては投げ、ちぎっては投げの大立ち回りで、皆殺しにしてやったのだ!」
「それ、本当ですか? そんなに激しい戦いだったら、第22階層は血の海になってる筈なのに、
第22階層には、魔物の腕の一本も、ましてや、敵が装着してた装備品の一つも落ちてなかったですよ?」
「まあ、それはだな……色々あったのだ……」
シロは、以外と鋭い奴だ。
というか、いつも鋭いか。
「ご主人様、本当の事を言って下さい!
僕にだけは、嘘を言わないで下さい!
そうじゃないと、ご主人様の事、嫌いになりますよ!」
シロは、少し涙目だ。
「俺は嘘など言ってない! 本当に魔王軍の精鋭1万人を倒したのだ!」
「だから、それは無理ですって!
もし、ご主人様が倒したとしたら、何か種があるんでしょ!
例えば、敵が全員ゴーストだったとか?」
「クッ! 何でお前は、そんな事が分かるのだ!
まさか、俺の思考を読んでいるのか!?」
「そんな訳無いじゃないですか。ご主人様が無双できるのって、死霊系の魔物を倒す時だけでしょ!
で、全く装備品も転がっていなかったら、それは、幽体であるゴーストしか思い浮かばないですよ!」
シロが、的確な推理を、俺に示してきた。
「お前、頭がいいな……脳ミソが無い俺は、とてもお前が羨ましいよ……。
俺なんか、脳ミソないせいで、名前まで忘れてしまったんだぜ……」
「ご主人様が、脳ミソ無くても、僕がフォローしますから大丈夫ですよ!
ご主人様は、僕に、無理難題を押し付けて、ふんぞり返っていたらいいんです!
僕が、何でも、必ず解決してあげますから!」
シロが、でん! と、無い胸を張る。
チッパイが、とても可愛らしい。
「シロ! お前はなんてよく出来た下僕なんだぁーー!」
「だから、いつも言ってるでしょ!
僕が、ご主人様の一番の下僕だって!」
ーーー
そんな寸劇を、俺とシロがやってる頃、
アムルー冒険者ギルドに、また新たな衝撃が起こっていた。
それは、アムルー冒険者ギルドが誇るS級パーティー『鷹の爪』により、もたらされた情報で、何と、アムルーダンジョンには、金色の魔王とは別の一派の魔王が存在するという情報だった。
一応、金色の魔王と、アムルー冒険者ギルドは、『鷹の爪』を通して、秘密裏に協力関係を結んでいるので、利益はあっても害が無かったのだが、その新たに現れた魔王一派は、人間に敵対してるようなのである。
実際、新たな魔王は、アムルー冒険者ギルドに所属するB級冒険者を捕まえて、猫にしてしまったらしい。
幸い、金色の魔王一派に救われて、今は行動を共にしているらしくて安心なのだが、しかし、人を人とも思わぬ所業。人を愛玩動物の猫に変えて、ダンジョンに解き放ち、魔物に襲われる様子を面白がって観察するなど、もはや鬼畜としか思われない所業である。
しかしどうやら、人間と融和政策を取る金色の魔王と、新たな魔王一派は敵対関係であるようで、現在は、新たな魔王が地上に出てくる事を、金色の魔王が抑えつけてくれてるようであるのだ。
だがしかし、ここで一つ大きな問題がある。
その金色の魔王に喧嘩を売ろうという、馬鹿な国があるのだ。
その国とは、ハルマン王国の南に位置するレスター王国。
レスター王国は、何がなんでも、失墜した王家のプライドを取り戻したいのだ。
事件は、数週間前に遡る。
レスター王国の王子が、アラクネの編んだ製品を求めて、アムルーダンジョンに近衛隊を引き連れて第5階層を探索していた所、金色の魔王とアラクネに遭遇した。
大人しく魔法の鞄を渡して、アラクネが編んだ製品と交換して貰えばよいものを、欲に眩んだレスター王国の王子は、金色の魔王とアラクネに攻撃を仕掛けてしまったのだ。
結果は、その日、金色の魔王とアラクネに戦いを挑んだ他の冒険者達と一緒。
素っ裸で簀巻きにされ、挙句に、ケツの穴に木の枝を突き刺されてしまったのだ。
一応、この事実は、一国の王子までもが被害に遭ってしまった為、箝口令が敷かれたのであるが、こんな面白すぎる話が、広まらない筈は無い。
あっという間に、ハルマン王国は疎か、アトレシア大陸中に広まってしまったという訳だ。
まあ、そんな訳で、レスター王国は、金色の魔王への復讐に燃えている。
既に、レスター王国のプライドを掛け、大軍をアムルーダンジョンへと向かわしているのだ。
そして、今現在の状況なのだが、アムルーダンジョンがあるハルマン王国が、レスター王国軍がハルマン王国に入国する事を拒んでいる。
まあ、ハルマン王国としても、他国に、自国領を勝手に荒らされるのは良しとしないので、ハルマン王国とレスター王国の境界の街。ナムル城塞都市に軍隊を編成して、レスター王国軍と、一触即発の状態で睨みあっているのだ。
そして当然、その時の俺は、第5階層でパンツを脱がして、ケツの穴に木の枝を突っ込んだぐらいの些細な行為が、国家間に跨る大問題になってしまっているとは、流石に思っていなかったのであった。
ーーー
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