37. 猫耳娘再び
「何なんだ! ここは?!
俺の知ってる第5階層と違う!」
俺は、不快の叫びが効かない冒険者パーティーを素っ裸にした後、再び、別の冒険者パーティーに襲われている。
というか、コイツら、俺の不快の叫び声を対策してきている。
「骨野郎! 死ね!」
俺は、冒険者の攻撃を避けつつ、第3階位闇属性魔法ナイトメアを放った。
すると、
「うわぁぁーそのまま食べないでぇーー!」
「僕は美味しくないですぅーー!」
「肉棒だけは、勘弁して下さい!」
どうやら、闇属性魔法ナイトメアが効いたようだ。
それにしても、何で、みんな肉棒を食べられる悪夢を観るのだ?
悪夢は、夢を観ている者の深層心理が、悪夢となって出てくるのではないのか?
どう考えても、闇属性魔法ナイトメアは、術者である俺の深層心理も関係している気がするのだが……。
と、脳ミソも無いのに考えていると、
「ご主人様、お待たせしました!」
と、シロが合流して来た。
「って! 何で、ご主人様が、冒険者に襲われてるんですか?!」
シロが、俺に襲いかかろうとして、そのまま悪夢を見せられている冒険者を見て、驚いている。
「知るかよ! 何か、見た事もない冒険者が、やたらと俺に挑んできて、迷惑してんだよ!」
「おかしいな……。知り合いの冒険者が言うには、アムルー冒険者ギルドは、ご主人様とは争わない事を決めたと言ってたんだけどな?」
シロが、首を傾げて悩んでいる。
「それなら、コイツら、アムルー冒険者ギルド所属の冒険者じゃないぜ!
全員、俺が見た事ない奴らだ!」
「成程……じゃあ、殺しちゃいますか!」
「殺すかよ!」
「じゃあ、どうするんです?」
「身ぐるみ剥いで素っ裸にして、森の木にでも吊るしといてやれ!」
「了解!」
シロは、命令されると、手際良く作業していく。
まあ、こんな恥ずかしい状態で、助けられたら、もう恥ずかしくてアムルーダンジョンでは活動出来ないだろう。
いや待てよ!
もしかしたら、これぐらいではコイツらめげないかもしれない。
わざわざ、アムルーダンジョンに、シロの服を求めてやって来たのだ。
戦利品をゲットしなければ、アムルーダンジョンまで、わざわざ来た意味無いし。
これは、完全に心をへし折ってやらねば。
そうしないと、ハーレム勇者を目指すこの俺が舐められてしまう。
「シロ! 素っ裸にしたら、コイツらのケツに、木の棒でも差し込んでやれ!」
「可愛いい女の子の僕に、普通、そんな事命令しますか……」
「俺も汚いから自分でやりたく無いんだよ!
俺がやりたくない事をやるのが、俺の下僕だろ!」
「ハイハイ、分かりましたよ。僕は、ご主人様の下僕で間違いありませんよ!」
シロはブツブツ言いながらも、しっかり仕事をこなした。
ーーー
「それにしても、どんだけ俺に挑んでくるんだ……」
「そうですね……僕も、男性のお尻に木の棒を突っ込むの、もうイヤなんですけど……」
俺とシロは、今日、六組目の冒険者パーティーを返り討ちにした所だった。
「しかしだな、これをやるかやらないかで、今後、変わってくると思うぞ!
俺に歯向かう奴は、木の棒をケツに突っ込まれると思ったら、これからは俺に歯向かうのを止めようと思うだろ!」
「確かに……ご主人様の事を、誰しも鬼畜なスケルトンだと思うようになりますよ!
折角、僕が今まで、ご主人様の好感度を上げる為に頑張ってたのに……僕の今までの苦労は何だったんです?」
「まあ、大丈夫だろ! ケツに木の棒を差し込んだ奴らは、みんな余所者の冒険者だしな!」
「ハァ……まあ、そうですけど……」
と、歩きながら、話していると、突然、ソロの猫耳冒険者と鉢合わせた。
「アッ……!」
俺達に気付いた猫耳冒険者は、わざとらしく、魔法の鞄を俺の目の前に突きだし倒れる。
「何だこれ?」
「これですよ! 僕が言ってたの!
アムルー冒険者ギルドに所属してる冒険者達は、みんな僕の前で、わざとらしく、倒れるんです!」
「へーー」
俺は、初めて見る冒険者の行為に、チョット戸惑ってしまう。
というか、この娘、見た事あるな……。
前に、イタズラした猫耳娘に間違いない。
俺は、思わず、スカートを捲りあげようとする。
「ダメですよ! ご主人様! この人、死んだフリしてるだけですから!」
「そうなの?」
「そうですよ! だから、魔法の鞄を物色して良さそうな物が有れば、物々交換するだけにしといて下さい!」
俺は、仕方が無いので、魔法の鞄を物色してみた。
中に有ったのは、高価そうなミスリルのナイフに、ターコイズのネックレス。
ミスリルは、腐るほど持ってるし、ターコイズには興味が無い。
「要らね! 行くぞ、 シロ!」
「ハイ!」
俺は、イタズラ出来ない女に興味は無いのだ。
なので、そのまま立ち去ろうとしたら、突然、
「チョット、待ってください!」
と、猫耳娘が、俺の骨ばった足を
掴んで来た。
「何だってんだ?」
俺は、足にしがみついている猫耳娘を見下ろす。
「お願いします! アラクネさんの服が欲しいんです!」
猫耳娘は、瞳をウルウルさせて、俺におねだりしてきた。
「しかしな……お前、対価になるような物、何も持ってなかっただろ!
ってか、お前、俺の言葉が分かるのか?」
「分かりますよ?」
猫耳娘は、不思議そうに俺の顔をみる。
よく分からないので、俺は、鑑定で猫耳娘のステータスを確認してみた。
種族: 猫耳族Lv.35
職種: シーフ
スキル: 聞き耳、探索
力 95
素早さ 150
HP 150
MP 65
やはり、この娘は、前にイタズラした娘に間違い無い。
このステータスには、覚えがある。
ホーンラビットに襲われてた猫耳娘だ。
でだ、俺の言葉が分かるのは、多分、聞き耳というスキルのお陰だろう。
「で、何を対価にすれば、アラクネさんの服を下さるのですか!」
猫耳娘が、俺の思考を無視して、グイグイ質問してくる。
というか、この娘は俺の事が怖くないのか?
どこから見ても悪魔の化身にしか見えない俺に向かって、対価って……。
悪魔の対価って、前の世界では、自分の魂って相場が決まってるのに。
でも、俺の対価は、魂とか崇高なものではない。
言ってしまっていいのか……。
サクランボを弄らして欲しいって……。
「ご主人様、何、妄想してるんですか!
こんな欲の塊のような女には、言ってやって下さい!
『スケルトンの王には、この世に欲しい物など何もない!
欲しいのは、人間の肉のみだ! ヒヤッハッハッハッハッ!』 って!」
何だそれ……。
完全に悪役じゃないか……。
まあ、見た目は骨なので、悪役に見えるのは仕方がないけど。
猫耳娘の方を見ると、恐怖の為かブルブル震えている。
そりゃあ、人肉欲しいって言われたら、誰でもビビるよな……。
チョット、可哀想になって来た。
ハーレム勇者を目指す男は、可愛い女の子限定で優しくしないといけないのだ。
「そしたら対価の代わりに、俺の拠点で働いてみるか?
俺は、暫くの間、下層に探索に行く予定だ。
その間、俺が趣味でやってる家庭菜園の世話をして欲しいんだが?」
「ご主人様! 正気ですか?!
この強欲な女を、僕達の愛の巣に入れるなんて!」
シロが、絶対反対と抗議する。
「まだ、決まった訳ではないだろ?
この猫耳娘が、拠点に来る訳ないしな」
「私、行きます!」
猫耳娘は、即答で返事をした。
ーーー
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