地下牢⑨
通路を歩き続けると突き当りが見えてきてその手前には扉があった。
要塞の外から見ると数百メートル程度だったが地下内部はそれよりも長い作りのようだ。
松明の明かりが暗い通路を照らす。
壁の松明は燃え尽きている物が多いが、時折不自然に光っている物があった。断定的だが魔法的な力じゃないかと考えてしまう。
扉には鍵がかかっておらず自由に出入りできた。
爆発があった際に看守が逃げ出したのか、理由はわからない。
扉の向こうには机と見たことのない文字で書かれて紙があった。
紙は茶色のザラザラとしたもので、植物かなにかの繊維を平たく加工した物なのだろう。
机わきにはもう一つ扉があり、扉の格子が嵌められた小窓からは中の様子を確認する事が出来た。
部屋には野菜のようなヘタのついた緑や茶色の丸い物が木箱に入っている。
複数木箱があり、その中にはいつも食べていたパンや木桶に入っている白い液体があった。
きっと、ここは食糧庫的な場所だ。しかしここの扉には鍵がかかっている。
鍵がないので力づくで開けられないかと色々試したがびくともしなかった。
蹴った時の振動の無さからここにも魔法的な力が働いている気がした。
「魔法的な力が働いている鍵のかかった扉をあけるためにはどうしたらいい?鍵はない。」
「魔法的な力が働いている鍵のかかった扉を開けるためには、いくつかの方法があります。扉の周りを調べる。解呪の魔法を使う。魔法を使って壁を壊す。魔法の力を借りる。……。」
魔法を用いるってことはスキルが必要ってことだなよ。
残念ながらスキルを2つしかもっていない俺には無理な方法だ。
扉の周辺も調べたけど鍵なんて落ちていないしな。
「以上の方法は一般的に用いられる方法ですが、鍵のついた扉を開ける際には鍵穴の形状や構造を理解する事で、特殊な道具を使って鍵の内部機構を操作することができます。」
つまりピッキングってことだよな。素人にもできれば苦労はしないけど。あと道具なんて手元にないし。
「ステータス閲覧の使用について、ステータス閲覧機能を起動すると、物の情報が表示されます。一般的には、物の名前、種類、特徴、能力などが表示されます。
表示された情報を分析し、その物がどのように使えるのか、またはどのような強みや弱みがあるのかを判断します。これによって、物を有効に活用することができます。」
AIさんがたくさん教えてくれる!!
本当に困っている時にこの情報量だから、俺の感情とか外観で判断しにくい物を読み取ってくれているようだ。
おかげでどうしたら良いのかわかってきた。
この部屋の周囲や怪しいところをステータスを確認することで、状態を詳細に確認することができるんだな。
このスキルは自分の身だと思っていたけど、利便性が高いスキルだったのか。
「ステータス閲覧!!」
ステータスオープンでわかったけど必ずしも口で唱える必要はなく、念じるだけでスキルなどは発動する。
けれど声に出した方が念じるよりも負担が少ない気がする。
『鍵穴 ピンタンブラー式鍵穴 配置されたピンがすべて正しく揃うと鍵穴が回転する構造』
名称まで出てきた!
この世界でピンタンブラーという名称は存在しないはずだから俺が認識できる言葉に翻訳されている。
鍵穴の種類は全然知らないけど、針金か何かで鍵穴のピンを押すことで解除できる気がする。
ただし、そのための針金とかがないんだよな。