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彷徨人達の異世界生活記  作者: 香鈴
第2章:街での新しい生活
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46.

「じゃあ、今日はお疲れ様でしたー!」

そう言って酒の入ったコップを掲げるイルミアに合わせ自分も軽くコップを掲げた。

「さっきの依頼分の報酬、分配したいんだけどここで済ませて良いか?」

「大丈夫だよ」

ファイとソウ兄がそんなやり取りをする傍らで、飲み物に口を付ける。お酒は相変わらず詳しくないのでイルミアに選んでもらった。あまり強くない、切った果物が入った物。炭酸を使っているのでシュワシュワする。果物の果肉を潰して飲んだ方がより美味しいらしく、付いてきた長いスプーンで時々潰しながら飲んだ。

「アヴィみたいに詳しくはないけど、よく食べる物頼んだから食べてね~」

「うまーい」

シュウ兄は早速料理に手を付けている。肉の香草焼きや煮込み、芋の揚げ物などお酒に合うのだろう味の物が多い。シュウ兄は一緒に頼んでもらったパンを片手に食べてるけど。

「これ、美味いな」

「花びらの塩漬けなのよ。珍しいでしょ」

リツ兄が口に運んでいるのを見て自分もひとつ食べてみる。何かの花びらを漬けた物らしいが随分と肉厚で、何かの野菜の様でもある。塩味は結構強いが、これが酒に合う味なのだろうと思う。

ゼーレはいつの間にかテーブルに降りて肉の下に敷かれている野菜の葉を引っ張って食べようとしていたので千切ってやった。


「アキ、こないだの探索の報酬も渡しておく」

「あ、ありがとう」

先日四人と一緒に迷宮に行った時の報酬だろう。銀貨と銅貨を数枚もらった。ここの四人のチームでの金銭関係はファイが取りまとめているらしい。何か分かる。

「でも、俺はほとんど何もしてないよ?」

「皆で話し合った結果の報酬だ、気にしないでくれ」

「私達の魔法の勉強に付き合ってもらったから授業料もって事でね~。アキのおかげで迷宮内なら少し魔法使える様になったわよ」

「すごいね」

元々苦手と言っていたけど、使う感覚的な話を自分とした事もあり、知識以外の部分で補完が出来たのか時々迷宮内でも反復練習していたとの事。

「ちっちゃいけど火の玉は出せるわよ! 土と水の魔法は操作が難しくてまだ全然だけどニャ~……」

「アキは地面から棘を突き出す様な魔法を使っていたな」

「うん。土に魔力を通したら硬く出来るかもと思って……威力の調整がへたくそだから、もっと経験を積めってギルドからは言われたけど」

あれも思いつきで咄嗟(とっさ)に使ったにしては予想以上の威力だった。魔法や魔力なんては元々なかったものなので、未だに使用した際の自分の力が把握できない怖さがある。

「威力は申し分なくてもあまり使い勝手良くはなさそうだな」

「場所によっては味方も巻き込みそうニャ」

二人も頷いていた。前回は狭い廊下で前方に使うから問題なかったけど場所によってはそういう危険性も孕む。自分も味方を巻き込みたくはない。


「明日はもう出ちゃうんだっけ」

「そうだね。ひとつ先の町を目的地にしてゆっくり行こうかなと思ってるよ」

「隣町も鉱石を扱ってるがうちの町と違って生活道具を主に作ってる。規模は小さいが朝市もやってるから見ていくのは良いと思うぞ。野営用の調理器具なんかがもしほしいならお勧めだな」

「へぇ。面白いモンがありそうだな」


それから二時間程話をしながら飲食をし、二人は明日出立の時に見送りに来ると言って帰っていった。




宿に戻ってすぐに少し慌てた様にリズルが来た。

「あれ、どうかした?」

『えーと……皆様、少しご報告が』

「なんだ、そんな顔して」

いつもコロコロと表情が変わるリズルだが、今日はまた眉根を寄せて難しい顔をしている。

『他の管理者が皆様に興味津々でして、何か事を起こすかもしれなくてですね……』

「はあ」

「アンタらホント自由だよな」

リツ兄はため息を吐きながら言っている。


『そう言われると反論出来ません……何せ管理の仕事は短い期間ではあまり変わり映えのない物なので、皆変化に過敏なのですよね』

「なるほどね~」

「何か起こすって、そんなに力の範囲が及ぶものなんだね? よく分からないけど」

ソウ兄が不思議そうにしているけど、言われてみるとそうだ。大陸ごとに管理者を配置しているのだから互いには干渉しないのかと思っていた。


『彷徨人である皆様に関しては、範囲の及ぶモノと言えばいいでしょうか』

「あー分かった。俺達は此処の住人じゃないから此処の規則が当てはまらないって事か」

『はい』

どうも自分達はこの世界の人間ではない為に干渉がしやすいらしい。住民であっても干渉する管理者はいるらしいけど。


「でも何か起きたとしても俺達には対処なんて出来ないだろう」

『それを言われてしまうとそうですとしか言えず大変申し訳ないのですが……』

「だろうな~」

『心の準備をして頂ければと……』

そっちの方か。確かに事前に伝えられているのとそうでないのとでは段違いではあるが。


「リズルが止めようとしても止められないって事」

『……アスアは私より権能も強いですからね』

「ふーん」

アスアは以前名前を聞いたことがある神だ。リズルよりも魔法に詳しいらしいけど神としての序列も違うのか。



「分かったよ」

『重ね重ね申し訳ありません……』

「リズルは悪くないしなあ」

止めようとしたけど無理そうって話なら仕方のない事だ。

「何かあったら当事者に文句言うから気にしないでくれる?」

「そうだな。それがいい」

「そうだそうだ~」

『それは好きなだけしていただいて構いませんので!』

いいんだ。兄達もそれでいいんだ。




次の日。

宿を軽く掃除して鍵を閉め、管理室へと返しに行く。おおよその時間を前日に伝えていたためイルミアとファイはそこで待っていた。

「ハァイ。昨日はお疲れニャ」

「おつかれ~」

「しばらく会えないんだと思うと少し寂しいな」

ファイにそう言われ、四人とはあまり会う期間をあけていた事はないなと思い返す。

「一月かそこらなんだからそういう事言うなって」

「意外と長いわよ~。戻ったら教えてよね。私たちだけじゃなくてアヴィとディルにも」

「もちろん」

二人と握手を交わす。


そのまま少し話をしながら正門まで歩き、二人と別れた。

身分証を出し門をくぐる。警備の人に次の町までのことを尋ねると、徒歩で数時間程度の場所との事だった。

「じゃあとりあえず向かうか」

「お~」

自分もルスタの首を軽く叩き乗せてもらう。街道も隣接した林も静かなもので人の往来も無い。

「しっかしどこも森やら林が多いよなあ」

「そうだね、人の住む土地や開発地を増やすって事もないようだし。世界的な決まりなのかもしれないな」

確かに地図を見た時も森の方が広かった様に思う。この世界が魔力ありきで存在している事も理由のひとつなのかもしれない。



一時間程歩くと、不意に声が掛けられた。

『あ~いたいた。君たちが例の』

「?」

一応あたりを見回すが周りには人の気配は無く、もしかしてと思う。

『さすがに姿は現せないから不便だなあ。声だけで失礼』

「はあ」

明るく軽い口調の、恐らく男性の声。

『君たちをね、招待しようと思ってたんだ! ちょっと眩しいけど気にしないでね』

「待て、招待って何……」

「いきなり話しかけてきていきなり何する気なんだよ」

問いかけてみるも、そのあと特に返答もなく。声の通りにとても眩しい光に思わず強く目を瞑った。


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