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彷徨人達の異世界生活記  作者: 香鈴
第1章:迷い込んだ『異世界』にて
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11.討伐者組合

街についた翌日。窓から差し込んでいる光で目が覚めた。今日もいい天気だ。と言ってもこの世界にはまず天候が存在しない。雨も降らないで水不足になったりしないんだろうか。



今日は朝食を済ませたら討伐者の組合へ足を運ぶ予定にしている。身支度を済ませて貴重品類だけを身に付け宿の食堂を覗くと、食堂の給仕の女性が空いている席へつくよう促してくれた。自由に座って良いらしいので近くの四人掛けのテーブルへ座る。

「組合行く前にルスタの所行ってもいい?」

「いいよ、特に急いでないし」

運んで貰った朝食を食べながら、話をする。

掛けたテーブルの中央に人数分置かれている軽く焼かれたパンには何かのジャムが添えられていたので、試しにつけて食べてみた。甘味と、少し酸味が混じっている。パンの他にサラダと目玉焼きと燻製肉を焼いた物がひとつの皿に盛られている物も出して貰った。それらを食べ終わるか位のタイミングで給仕の女性がお茶を運んできてくれた。甘い香りがするが、飲んでみると適度な苦味がある。


「こっちはどこもご飯が美味しくて良いよね」

「そりゃ今までと比べりゃな」

元の世界の自分達の食事情はあまり良くなかった。戦時下なのもあったし、ある程度限られた食材で工夫していた。でもこっちの世界はそれなりに安価に、且つ量も味も満足出来る様な食事を提供してくれる所ばかり。リズルが基本的に争いも無いと言っていたし豊かなんだろうと思う。

「もし仕事が出来るんなら、合わせて住む所もどうにかしたいね」

「旅もしたいな〜」

「結局金をどうにかしないとだろ……」

まだこっちに来て数日。何も今後は決まっていない。やっぱりまずは仕事かな、と思うけど。


ルスタのいる馬房を覗くと、管理担当の人が気付いてこちらに来てくれた。ルスタも勝手に担当の人の後ろについてきている。

「おはよう。馬の引き取りかい?」

「いえ、まだちょっと用事があって……薬草を食べる分だけでもと思って」

「そうかそうか〜っておわ! いつの間に!」

いつの間にか隣に来ていたルスタに大分驚いている。まさかついてくるなんて思わないだろうな、普通。

「主人の事好きなんだなお前……特に問題なく大人しく過ごしてましたよ」

「そうでしたか。ホントは連れて行きたいけど流石に宿には置いてやれないから……ごめんな」

ルスタを撫でると頰に顔を擦りよせられたのでちょっとよろけてしまった。薬草をあげると喜んで食べている。また夕方様子を見に来る事をルスタと担当の人に伝えて、組合の方へと向かう。



中央の広場にある案内を確認してギルドの区画に向かうと、各組合についての案内の看板が設置されていた。見ると討伐者の組合以外にも薬師の組合や商業の組合等いくつも組合がある。建物はそれぞれ外観や色味に特色があり、組合ごとの意匠の看板も下げられているので分かりやすい。剣と盾の意匠が討伐者の組合だった。

「此処か〜」

「立ち止まってても何だし、とりあえず入ってみようか」

入り口をくぐると、すぐに組合内の案内図が掲示されていた。

資格証希望の場合はまず受付に行く必要があったので、そのまま提示されている受付の方へと足を運ぶが、ちょうど無人だ。

それ以外の受付カウンターは朝の為かどこもそれなりに混んでいる。急ぎでもないので少し待とうかと思っていたら此処の職員であろう女性に声を掛けられた。


「おはようございます。今日は何かをご依頼ですか?それとも討伐依頼の請負ですか?」

「いえ、資格を取るのに来てみたんですけど」

「では此方にどうぞ」

くすんだ金の緩い巻き髪をした綺麗な女性は、笑顔で自分達を受付へ促してくれ、カウンター内に入って書類を用意してくれた。

「皆さん全員資格証の取得をご希望ですか?」

「そうだよ〜」

「かしこまりました。それではこの書類に必要な事を記入して貰えますか?」

女性は人数分の書類とペンを差し出してくる。受け取って記入箇所を教わりながら書こうとしたが、名前と年齢くらいしか書ける所が無い。

「不明箇所や事情でどうしても書けない箇所がおありでしたら、全て埋めなくても良いですよ」

出身とか住所とかで困ってた所にそう言われた。まさか別の世界です、なんて書けないもんな。それ以外にも職業とか学校名とか、技能の自己申告欄とか設けられていたんだけどどれも埋められなかった。結局名前と年齢だけ書いた書類を女性に渡す。

「皆さんお名前と年齢以外は未記入ですね……」

「その……ちょっと書けなくて」

「そうですか。分かりました。少し空いた椅子に掛けてお待ち頂いてもいいですか?」

差された方向には広めの待機スペースがある。指示通りに椅子に座って呼ばれるのを待つ事にした。


「……住所なんて書けねえよな」

「無いものは書けないね。嘘書くにしても地名も分からないし」

「俺ら捕まるかな〜」

「うーん」

やっぱり不法入国で投獄されたりするんだろうか。不法入国なのは間違いではないから投獄されても何も言えないけど。

などと言っていたら、対応してくれた女性が書類を抱えながら自分達の方へ来てくれた。

「答えるのがお嫌でなかったらあちらでいくつかお聞かせ頂きたいんですが」

「はい」

女性が促してくれたのは応接室だ。適当にソファに座ると、女性は挨拶してくれた。

「私、討伐者ギルドのイローシェと申します。気軽にロシェとお呼びください」

ロシェさんは先程自分達の書いた書類をテーブルへ広げる。

「まず……皆さんのいらっしゃった地域はどんな所ですか?」

「……戦争を、していました」

「そうですか……」

ソウ兄が答えてくれたけど、その返答に女性は少し困惑した様な表情をしていた。

「後、戦ったり何か武術を学んだ経験はお有りですか?」

「ああ」

「あるよ~」

「戦闘技能は有る可能性……と」

女性は聞いた内容で先の書類を埋めてくれている様だ。

「あの」

「はい。どうしましたか?」

「自分でも、資格は取れるんですか?」

折角なので聞いておきたい。足の事でそもそも引っかかるかもしれないし。

「そうですね……個人で動かれるとなると取得は厳しいですが、多分皆さん四人で動かれる予定でしょうから、他の方々が良いのであれば大丈夫ですよ」

「そうですか」

少しホッとした。戦闘技能というものの辺りに引っかかりはあるけど、何か補える物があればと思う。

その後も二、三個質問をされ、それに回答した。


「ありがとうございます。では、資格の取得に当たっての講習がありますので私についてきて貰えますか?」

「はーい」

促され応接室を後にし建物の二階へと上がる。一階は先程見渡した限り受付の窓口と多分職員の人がいる部屋、後は応接室くらいしかない。二階は上がってすぐ会議室らしい部屋が数部屋ある。奥は何か別の部屋の様だった。

「では皆さん此方へどうぞ。前の方の好きな席に座ってくださいね」

入った部屋は長机と椅子が綺麗に整列され、一番前に講師が立って話をするらしい壇があった。適当な椅子へと腰掛けると書類を渡される。

「書類に書いてあるのはギルドの規定や決まりです。他にも受ける方がいるので揃うまでちょっと目を通しておいてくださいねー」

「分かりました」

自分達以外にも今日講習を受ける人達がいるらしい。ロシェさんはその人達の案内の為か一旦部屋を出て行ってしまった。指示通りに渡された書類に目を向けると、依頼についてや禁則事項なんかが箇条書きに書き連なっていた。

「目が滑る……」

「読みたくない……」

「リツもシュウもいきなり弱音吐かないで」

元々読書をあまり好まない兄二人はなんだか辛そうにしていた。文章量そんなに多くないから頑張って欲しい。

しかしこうやって違和感なく書かれているものを読めているのが少し面白い。



「アンタ達も今日講習受けるのか」

不意に声を掛けられた方向を向くと、四人組の男女が興味深そうに自分達を見ていた。

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