12.討伐者組合Ⅱ
だいたいギルドについての説明回です。
「うん……そうだけど」
「ふーん?」
答えると、聞いてきた少年は不思議そうな顔をしている。
「珍しいな、そんな年で資格取るなんて」
「ちょっと色々あってね」
「色々? まあ事情は人それぞれだろうけど……」
自分達に声を掛けてくれたのは濃茶の髪の少年。背中には大きめの弓を背負っている。話をしていると少年の隣に濃紺の長い髪の少女が来た。彼女は腰に剣を差している。後ろには猫耳の獣人の女性と、長柄の武器を持った薄茶の髪の青年。四人共自分と同じ位か、少し下の年齢に見える。
「……他の人にいきなり絡まない」
「はいはい」
少年を制していた少女は自分達に軽くお辞儀して近くの席に腰掛けていた。後ろの二人もお辞儀してくれたので自分も頭を下げる。四人は席について雑談をしていたので既にチームを組んでいるのだろうか。
「資格って彼等位の年で取るもんなんだなあ」
「そうみたい」
四人が部屋に入った他はいないらしく、ロシェさんはそのまま壇上に立って説明を始めてくれた。
「では、まず弊ギルドについての簡単な仕組みをお話します」
ギルドとは組合の名称であり、ここに限らず様々な職のギルドが存在している。来る途中に見た限りでもそれは分かる。
で、討伐者のギルドの中身はというと、依頼人と請負人の仲介所兼街の近隣に存在する地下迷宮の管理所である。他にも討伐を生業としたい希望者の為の訓練・試験を行う場所でもある。仕事の紹介も訓練所も備えられているのは担当職員の行き来等の手間を省く為だそう。つまり職務が複数あるのか。大変そう。
因みに討伐依頼は時折素材の採取も兼ねていて、討伐対象の魔物がいる場所に自生している薬草等を採って来たり、討伐した魔物そのものを持ち帰ったりするそうで、案外やる事の種類が多い仕事みたいだ。
地下迷宮の方は、単純に探索をしたり討伐訓練の場になったり、此方側から希望して行く所らしい。迷宮だけで手に入る素材はある様だがあまり縁は無さそうだ。
で、ギルドの所属証明・身分証明の為の資格証を得るには、訓練を一定期間受けた上で試験を突破するか、元々戦闘技能がある場合は一度実技として訓練指導者と模擬戦をして判断して貰うかのどちらかである。流石に勝敗を決めるまではやらないらしい。
合格ラインはギルド側しか分からない。多分個々の実力を見た上で規定に従って振り分けるんだろうと思う。
あと戦闘技能があるかどうかというのは魔道具をもって調べられるそうだ。個人情報の開示が出来るのだろうか。魔法は奥が深い。
討伐者の実績によって階級が存在し、資格証を得ると基本は一番下の階級から始まる。例外も勿論存在するが依頼を受け実績と信頼を積んでいくとの事。個人の強さも加味するのかと思ったが、スタートラインは平等らしい。ただ昇級の審査為の実績について通常よりは免除があるとか。基本的に実力主義かというとそうでもなく、周囲からの評判とか、依頼者からの評価とか、いくつか審査基準はあり且つ厳し目の様だ。
「いくら強くても人当たり悪かったら雇ってる側もやだよね〜」
「そうですね。そういう人が何かを起こすとひいてはギルド全体の評判や評価の下降に繋がりますので、問題を起こした際の罰則は厳しくなっています」
信用問題に発展する可能性を考えると厳しくても仕方ないのだろうと思う。
「では次にギルドの歴史について……」
「歴史は知ってるよ。俺ら先に実技の方行ってもいいですか?」
「早く合格して魔物討伐したい……」
一緒に説明を聞いていた四人組は早く終わらせたい様子。武器を所持しているから既に戦闘技能とやらは持っていそうだ。
「分かりました。それでは下の受付で実技の希望を伝えて頂けますか?」
ロシェさんもこれといって気にせずに部屋の扉を開けて退室を促していた。こういう事は珍しくないのかもしれない。四人組が出て行ったのを確認して溜息を吐いていた。
「やっぱり成り立ちとか改めて聞く気はないわよねぇ……」
「そうなんですね」
「あらっ。皆さんはいいんですか?」
「俺ら急いでないしー」
「全部聞いてからでも遅くないんだろ」
「はい。それでは続けさせて頂きますね」
「お願いします」
再びロシェさんは説明、ギルドの歴史の話を続けてくれた。
元々は各地の国・店・個人等様々な規模の討伐や採取、迷宮探索依頼を冒険者が個人個人、もしくはチーム単位で請け負って報酬を得ていた。ただ報酬もバラつきがあったり、請けた依頼の難易度がその冒険者の強さと差異があった為死亡者が出て完遂できなかったり等問題も多かったそう。
その為引退した冒険者達が集い、依頼の報酬や依頼の難易度の基準作り、冒険者達の強さの階級制度の導入、希望者の素質を判定する・鍛える為に必要な試験や訓練内容の組立等を行い、仲介所を始めたのが最初らしい。
いつしかそれをある国が仲介所や訓練所を整えて国営として討伐者の組合を確立させた事で、他国も模倣をして国営、ないしは民間であちこちにギルドが存在する事になった。で、同じ大陸内では国と国の間を通る為の簡易の身分証として役割を持たせられる様にもなったらしい。とは言えまず取る為には試験を突破する必要があるのでそう簡単に手には入らないし、資格を持っていても、国を移動した時は改めてその国のギルドで簡易な試験を受け資格証を得る必要もある。まあ偽装とか怖いし妥当じゃないかと思う。
「弊ギルドは国営になります。村単位にはないのですが町は規模によらず各地にギルドがありますので、宜しければ別の町に行った際には一度訪れてくださいね」
資格を持っている以上、自分の仕事場とも言える場所に顔を出すのは当たり前か。あと町にはあるけど村には無いらしい。セーナの村にも無かったから村じゃ運営するのに規模が小さ過ぎるのかも。
「質問はありますか?」
「依頼ってどうやって受けんの?」
「ギルドの一階で先程見たと思いますが、依頼の受付カウンターがありますので、資格証を見せて頂ければ受付側で依頼候補を幾つか提示させて頂きます。皆さんが初めて依頼を受ける際にまた説明がありますよ」
提示を受けた依頼から受けられる物、受けたい物を自分達で選択して条件などの説明に移るそうだ。
「例えばその中に受けたい物が無かったらどうなりますか?」
「その際は皆さんの受けられる範囲内で、別の依頼候補を提示しますよ。他にあれば、ですが」
「無かったらそれまでって事だね〜」
依頼自体毎日のように舞い込んでくるものでもなく、受けると場所によっては一日二日で終わるというものでもない場合が多い。受けたい受けたくないという希望よりも受けられるかの可否での判断が望ましいとの事。
「実際に過去問題を起こした人はいる?」
「残念ながらいます。違反者は軽いものであれば謹慎や依頼請願の一定期間禁止……重いと資格の剥奪になります」
「ホントに重いね〜」
「期間を置いた後に再試験は出来ますよ。でも…問題を起こしたという履歴は残りますからね。此方も依頼の提示は絞ってしまいます」
「ま、そうだろうな」
「試験大丈夫かな〜…」
「シュウ珍しいな、自信なさそうじゃん」
「りっちゃんはなんで余裕なの」
「ふふ、無事資格証が手に入る様に応援してますよ」
ロシェさんは微笑んで、次の場所へ案内してくれた。




