庭園での出会い
ようやくシンデレラの相手が出てきました。
『あれ? 先客がいたみたいだね? 』
こちらに1人の男性が向かってくる。
顔は暗くて見えないけれど……カイル様と同じ金髪のように見えた。
綺麗な方だわ……
どこかで、見たことがある気がした。どこで会ったんだろう?
……わからない。
その事は気になったが、聞かないでおく事にした。
『こんばんは』
男性は挨拶をしてくれ、私も挨拶を返した。
「こんばんは」
その人は、私の横に来て尋ねてきた。
『隣よろしいですか? 』
「えぇ。どうぞ」
『今日はお1人で? 』
「いいえ……家族と参りましたの」
『そうなんですか』
「えぇ。あなたも息抜きですか? 」
『はい。ここの庭園で、休もうと思っていた所です』
「私もです。疲れてしまいましたわ」
私とこの人は、お互いに賑やかな場所が苦手なようだった。
『お名前を何と言うのですか?』
「私ですか? 私は、シンデレラと申します。あなたは?」
『私は、クロウとお呼び下さい』
彼と話していて、楽しかった。話している最中に、会場の外にも曲が聞こえてきた。
『シンデレラ? 僕らも踊りませんか? 』
彼から誘われ、私はその手をとった。
「はい。喜んで」
私とクロウ様は、広場の真ん中で踊り始めた。
****
彼のダンスは、とても踊りやすく、私が間違えそうになったときも、上手くカバーをしてくれた。
「ダンスがお上手なんですね」
『ありがとうございます。あなたも上手いですよ?』
「ふふ。私は、お母様に習ったんです。教えが良かったんですわ」
『そうなのですか? 』
「えぇ」
曲が終わり、私達のダンスも終わりを告げた。
「楽しかったです」
『私もです。あなたが相手で踊りやすかったですよ』
****
『そろそろ、私は行かないと……あなたはどうしますか? シンデレラ』
「私は、もう少しこちらにいようと思います」
『そうですか』
彼は、私から視線を外すと、私に薔薇を渡した。
『では、これを。シンデレラ、あなたに』
渡されたのは、彼の胸元にあった白い薔薇だった。