↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/4

第4話 なんでいきなり怪獣映画になるのよ!!

「うわー、奇麗だね!!」

挿絵(By みてみん)


 林萌香は感動の声を上げていた。ここは知床五湖のひとつ、三湖だ。まず萌香と魔女の美崎葵《みさき あおい》は森の入り口に入ると、木々が空を覆い隠す細い道を抜けると、ふっと風の匂いが変わったと思った。土と苔と、どこか冷たい水の気配が混じった、山の奥の匂いがする。

 足もとには、何十年も前に倒れた木が苔むして横たわり、その上をまた新しい木の根がまたいでいる。人の気配は薄く、代わりに鳥の声と、枝葉を揺らす風のささやきだけが道案内をしてくれている気分になる。

 

 森がふいに途切れると、三湖の水面が現れた。

 一湖や二湖のように開けた眺めではなく、三湖は森の懐にそっと抱かれていて、外の世界から隠されているかのようだ。風が止むと、知床連山の稜線が水の底からせり上がってくるようにくっきりと映り込み、その境目が分からなくなる。

 ときおり、水鳥が一羽だけ水面を横切り、静寂を割るように小さな波紋を広げていた。その輪は岸近くの草むらまで届き、足もとにまで静かな揺れが伝わってくる。


 萌香はそんな大自然を見て感動していた。生まれ故郷の四国も自然の宝庫だが、北海道は別格だと思った。四国は神秘的な雰囲気があり、北海道は原始の世界が広がっている感じだ。


「さてここで千孤《せんこ》の方々と待ち合わせしています。もうじき来ると思いますが……」


 美崎は腕時計を見ようとしたら、森の奥から黒い影が現れる。千孤の炭治郎《すみ じろう》を筆頭に複数の男女が控えていた。気の弱そうな二十代の青年から、太った中年男性に、中年女性。あまり強そうに見えない集団だ。


「林さん、今回は来てくれてありがとうございます。さあ、我々についてきてください」

「そうはさせません!!」


 治郎がそう言った途端、遠くから叫び声がした。それは白いスーツにロングの茶髪。清楚そうな美人だ。彼女は木のてっぺんに立って、腕を組んでいた。


「!! お前は結城桐《ゆうき きり》!! なぜここに!?」


 美崎が叫んだ。彼女の調子から相手は敵らしい。萌香は木刀を構える。治郎たちも戦闘態勢を取っていた。

 

「あなたたちを止めに来たのよ!! 北海道を支配して京都を滅ぼすなんて夢物語は見ないことね!!」


 結城はえいっとジャンプすると、治郎たちの前に着地した。


「野郎!! たった一人で何ができる!!」

「一人じゃないさ!!」


 治郎たちが後ろを振り向くと、そこに190センチほどの大女が現れた。70歳ほどだが筋肉隆々で赤いスーツを着ている。スーツ越しでも肩や胸の筋肉が盛り上がっており、両足はカモシカのように太かった。

 さらに両脇には白いゴスロリドレスに身を包んだ、双子の女性が控えていた。前髪をぱっつんにした黒髪のツインテールだ。さらに表情はダウナー系で、どこか退廃的な雰囲気があった。


「丸子温海《まりこ あつみ》!! なんであんたがここにいるのよ!!」


 美崎が叫んだ。どうやら彼女の登場はイレギュラーのようである。


「そこの結城さんが教えてくれたんだよ!! 治郎!! もう千孤は北海道が故郷なんだよ!! くだらない夢は見るな!!」

「長老!! なんで理解してくれないんだ!! 俺たち千孤は京都が故郷だ!! こんな永久凍土の未開地なんか故郷じゃない!!」

「生まれ故郷に対して何て言い草だ!! そこのガキにそそのかされたんだね!! 許さないよ!!」


 丸子と治郎が言い争いを始めた。萌香は置いてけぼりになったが、いきなり腕を引っ張られる。それは60歳くらいの女性であった。白髪頭だが美人である。

 彼女は萌香を森の奥へ連れて行った。美崎はそれを見て追いかけようとしたが、結城が前に立った。


「邪魔はさせませんよ!! あなたの野望はこれまでです!!」

「おのれおのれ!! お前に私の願いを邪魔する権利はない!!」


 そう言って美崎の拳が蒼く光る。彼女は拳に魔法を付加したのだ。ボクシングスタイルで結城を殴ろうとした。だが結城は見事な手さばきで相手の攻撃をかわす。

 治郎たちは怒りに燃えており、全員がキツネに変身した。銀色の毛皮に狂暴そうな顔つき。上半身は裸で、黒いタイツとプロレスシューズを履いていた。ひと昔で言えば力道山《りきどうざん》スタイルだ。

 

「右乃《うの》、左乃《さの》!! こちらも変身だよ!!」


 丸子の命令に双子もポーズを取った。すると丸子はビキニアーマーを着たキタキツネになった。右乃と左乃はゴスロリビキニを着たキタキツネになっている。


 治郎は空手チョップを繰り出した。丸子は両腕で受ける。チョップが当たるたびに青白い電撃が走った。

 左右からギンギツネが襲撃するが、丸子は右側の敵に右足で腹を蹴り、吹き飛ばした。さらに体を回転させて、左側の敵に右ひじを胸にかます。敵は悶絶して倒れこんだ。

 

 右乃と左乃も迫ってくる敵を一本背負いで投げ飛ばしたり、合気道で敵をはじいたりしていた。

 美崎は分が悪いと思ったのか、萌香を追いかけていった。


 ☆


「ちょっと離してよ!!」


 萌香は無理やり引っ張られてイライラしていた。見知らぬ女にわけもわからず連れていかれては不機嫌になるというものだ。今の彼女は沸騰したやかんで、湯気が出そうになる。


「萌香さん、私は敵ではありません。味方です。お願いですから話を聞いてください!!」

「黙れ!! 無理やり美崎さんを引きはがして、味方なわけないだろ!!」


 萌香は木刀を構える。今の彼女は冷静さをかけていた。なぜ目の前の女性に対してここまで腹が立つのかわからなかった。とにかく虫が好かない。なんとかしてこいつを叩きのめさないと気が済まなかった。


 女性はそれを見てため息をついた。


「仕方ないわね。私の名前は大城戸孝美《おおきど たかみ》。日本魔女機構の一人よ。美崎葵も魔女だけど、あの女は春醒《はるさめ》に寝返った裏切りものなの。あなたの本当の味方は屋住三葉《やすむ みつば》さんなのよ」

「あのおかま野郎の味方ですって!? なら敵に決定じゃない!!」


 萌香は孝美の頭をめがけて木刀を振り下ろす。相手が女性でも敵なら容赦しないのが萌香だ。

 孝美はハヤブサのように襲い掛かる萌香の剣戟を紙一重で交わしている。

 彼女は戦闘力は皆無だが、回避能力はぴか一のようだ。だが萌香を止めねば話にならない。


「美崎さんの悪口を言うなんて許せない!! お前も敵だ!!」

「相当強力な魔法をかけられているわね!! なら荒療治をさせてもらいます!!」


 孝美は萌香の木刀を素手で止めた。だが彼女は慌てない。木刀を手放すと、孝美の腹部に蹴りを入れる。孝美の体は吹き飛んだ。ちょうどヒグマがのっそりと歩いていたが、孝美に衝突され、ヒグマは気絶する。そこに小熊が二頭来て、母熊にすがりついた。

 萌香はそれを見て冷静さを取り戻す。萌香はその場を立ち去った。

 彼女が見えなくなると、孝美はむくりと立ち上がる。そして右手から白く淡い光が発生した。ヒグマの体を優しく包むと、ヒグマは起きだした。そして孝美を見てぺこりと頭を下げて小熊とともに森の奥へ消える。


 萌香は森の中を走っていた。早く美崎と合流せねばならない。

 すると目の前に美崎が立っていた。結城との決着はついたのだろうか。


「美崎さん、無事だったんだね!! よかった!!」

「あなたこそ無事で何よりね。でもこれからあなたには死んでもらわなきゃいけないわ」

「え、なんで?」


 美崎の顔は豹変した。まるで般若のようだ。美崎の身体が光りだす。周辺の気を吸収しているのだ。


「あなたは間抜けね。ここが墓場になるとも知らずにのこのこ来たんだから。せめて一思いに潰してあげるわ!!」


 すると美崎の身体がぴかっと光った。萌香はまぶしくて目をつむった。やがて眼を開けると、萌香は絶句した。

 美崎は天を突くような巨人になっていた。正確には頭は美崎本人だが、身体はゴリラになっていたのだ。赤い腹巻を身に着けており、白字で美と書かれていた。

 空はどんよりと暗く、遠くで雷が鳴っている。

 

 美崎は魔法でミサキコングに変身したのだ。知床五湖に溜まっていた陰気を一気に吸収したのである。

 ミサキコングは咆哮を上げると、胸をゴリラのように叩いた。なまじ美人故に迫力のある顔であった。


 萌香にとってミサキコングはハムスターを追いかける人間のようである。その巨大さに萌香は逃げるしかなかった。


「うわーん!! なんでこんな目に!! というかなんで怪獣映画みたいになったのよ!!」


 ミサキコングが足を踏むたびに地面が揺れる。森の中に住む動物たちは慌てて逃げ出した。鳥たちが一斉に飛び立つ。

 ミサキコングが歩くだけで地震が起きる。萌香は立っていられなかった。このままでは踏みつぶされてしまう。

 どうしてこんなことになったのか。友人のソラをいじめた屋住が気に食わなくて、魔女の美崎と手を組んだのに、彼女は春醒に寝返った敵であった。

 萌香は考えなしに行動するのが多かった。今回も深く考えず、北海道に来ては騒動に巻き込まれている。


 なんだか自分が情けなくなってきた。萌香は涙目になっている。


「助けてソラたん!!」

「あいよ!!」


 後ろを振り向くとそこには黒髪で肌が黒い女性が萌香を抱きかかえていた。

 銀山空《ぎんざん そら》。萌香の友達だ。

 なぜ彼女がここにいるのか、萌香にはどうでもよかった。


 空は萌香を抱えると、いきなり姿を消した。地面に穴が開いたのだ。

 ミサキコングは標的を見失うも、咆哮を上げながら地面を踏みつけている。


「あいたたた、ここはどこよ?」

「ようやく会えたね、林萌香ちゃん?」


 萌香は穴から落ちて、尻もちをついていた。空は無事に着地しており、立ち上がって土を払う。

 そこに金髪の黒ギャルが待ち構えていた。屋住三葉だ。


「え? なんであんたがここにいるの?」

「超能力で先回りしたのさ。もうあーしを見ても腹が立たないね?」

「あ、ほんとだ。なんであんたのこと、憎んでたかわかんない」


 屋住に言われて萌香は気づいた。あれほど屋住に対して敵意を抱いていたのに、今は気持ちが落ち着いている。どうしたことだろう。

 それになぜ空がここにいるのだろうか。


「すべては屋住さんのおかげよ。あんたは美崎に嵌められたのよ」


 空が説明し始めた。

 千孤のメンバーは、劇団サクラのアジフライ軍団という悪役・脇役の集まりである。

 モデルは東映のピラニア軍団で、東映京都の大部屋俳優の集団です。

 脇役の名前を書かないのは、必要ないからです。読者の覚えることが多くなるためです。


 結城桐:佐倉優希《さくら ゆうき》。劇団サクラ所属。

 丸子温海:佐野マリ子。シャイニングプロ所属。

 イノセントシスターズ:セイレーン所属。

 銀山空:倉木理亜奈《くらき りあな》。クリスタルエデン所属。

 佐野マリ子とイノセントシスターズは歌って! りかちゃん!! から登場しました。

 

 キツネの着ぐるみのスーツアクターは全員本人がやってます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。