二限 東方魔術
先日、ロールベルさんから説明を受けた時には、とても上手に説明できると感心したものだったが、自分がやるとなると緊張するな。
それでは、ジン・ランから、アコクと魔術について説明する。
アコクは正確にはアコク連邦という名前だ。元々はいくつもの国があったが、数十年前に丹という国が平定し、国際化のためにアコク連邦と名を変えた。山岳地帯が多く、特に類を見ない高度のミレアコク大陸の中央山脈を、龍の背に見立てた民間信仰「龍教」が普及している。
今回はアコクの魔術について説明するが、その前にアコクの文化について軽く触れる。アコクには「千武握天」という考え方がある。これはアコクにおける武人が持っている概念で、千の武術を極めると天下が取れるという意味だ。まぁ実際は武人の数だけ武器があると思った方がいいから、千どころではない。アコク人は伝統に固執しないから、武人は自分なりの戦い方を構築する。だから千の武術では全く足らない。
それらの武術は全て武術連という武術を管理する団体が管理しているんだが、そこが定める特に重要な十の武術がある。それらは十天と呼ばれ、俺は十天を修めている。
弩術
杖剣術
多刀術
鎖術
多節槍術
撃拳術
柔術
手斧術
連刀術
槌術
アコクの武人たちは、自分が開発した武術を武術連に認可、登録してもらうために技術を磨く。そして自分の武術が十一番目になることを夢見ている。
何でこの話をしたかと言うと、武術連が特別に扱う「特定種別武術」と呼ばれるものがあるからだ。そのひとつが「魔導術」、君たちミリー人が東方魔術と呼ぶものだ。
なぜ魔導術が特定種別とされているか。それは魔導術の登場により、もともとあった武術の内容が一新されてしまったからだ。例えばそれまであった杖剣術に対して、魔導術を組み込んだ魔導杖剣術なるものが登録されそうになる。これは確かに強力なものだったため、武術連としても検討しないわけにはいかない。しかし内容は明らかに杖剣術を下地にしていて、武術的な革新性があまりない。武術連が方針を悩んでいる間に、今例に出した杖剣術のような事例が他の武術においても次々発生した。武術連は魔導術の革新性を認めた上で、特定種別武術として魔導術を登録。これを既存の技術に組み込んだだけの武術の申請を全て却下した。
魔導術がなぜそんなに広い範囲に影響を与えたか。それは魔導術の容易さにあった。魔導術は西方魔術とは全く異質の技術と言っていい。
アコクの山岳地域。とある歴史ある民族が偶然にも特殊な合金を開発した。その合金は、運動のエネルギーを溜め込み、特定の方向から衝撃を与えることで放電することができた。その後の改良により、放電をコントロールすることで、与えた運動を直接エネルギーに変換することができるようになったんだ。この合金が魔導合金。組成は極秘、門外不出の代物だ。
しかし当時、この魔導合金はあまり民間に普及しなかった。確かに物体を動かすことで、他の出力に加工しやすい電気としてエネルギーを取り出すことができるのは確かに魅力的だけど、人々の生活や文化を変えるものではない。何故なら人々は、自ずと発生するエネルギーで物を動かしたいのであって、人力で物を動かしてエネルギーを得ることはあまり意味がないと考えていたからだ。電気の使い道がもっと発展すれば、文明の発展は加速するだろうけど、残念ながらアコクはまだその段階になかった。それでもこの技術に目を向けた人々がいた。武術家たちだ。
彼らは自分たちの武器を振り回すことで物体を動かしていたし、そこで発電して物を動かせるのなら、技術は飛躍的な進化を遂げることができる。結果として魔導合金を活用した武術「魔導武術」と呼ばれるものが生まれた。
俺がさっき見せた、ペンを回転させるというのは簡単な実演だ。金属製の糸の先に魔道合金製の小さな金属球をつけたもので、投げるとその運動でエネルギーが溜まり、衝突することで放電する。そのペンは金属製だから、電気的な偏りで磁場が発生し、変な動き方をしたってことだな。
以上がアコクの魔術、魔導術の全てだ。あとは俺の実力を信頼してもらうしかないが、それは決闘すればわかるよ。




