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第86話 sideアロエ 楽しい?学校生活

 今日はいつもとクラスの様子が変でした。どことなくソワソワしてるというか、落ち着きがないというか。隣のカレンちゃんもどこか心ここに在らずという様子。


 もしや、これは恋……? まさかクラス全員が一斉に恋の季節ですか!?


「ア、アロエちゃんは気にならないの?」


 私も恋する乙女の1人です。たしかにお兄様と会えない時間、気になってしまう時はあります。けれど、私はそのお兄様に人脈作りを任され……


「今日は前の学力テストの結果が貼り出される日だよ」


「ほぇ?」


 学力テスト……? 恋の話は……?


「は、貼り出されたみたい……。うぅ……緊張する〜」


「掲示板見に行きます?」


「……うん」


 緊張しているカレンちゃんが可愛い。私の制服の裾を掴んできて離してくれない。もう毎日テストでもいい。


「うへへ」


「アロエちゃんちょっと怖いよ……」



 試験の結果は掲示板に貼り出されます。掲示板前は早速結果が気になっている新入生で溢れかえっていました。試験の内容は『国語』『数学』『スキル学』『職業学』の4教科計400点満点。総合成績だけでなく各科目でも点数と順位が出ているみたいです。


「アロエちゃんすごい……! 1番だよ!」


「あ、ほんとですね」


 私の成績はもちろん400点……とはいかず390点。帝国特有の慣用句が全くピンときませんでした。悔しいですがこればかりは仕方がないです。


「あ、でもカレンちゃんも数学が満点ですよ!」


「よ、良かったぁ……」


 数学は高得点がかなり多くて満点が20人と、それに30人近い人が90点を超えていました。高得点者は貴族ではなくカレンちゃんのような商会関係者で埋め尽くされています。


 カレンちゃん以外にもほっと撫で下ろしている人がちらほらと見受けられました。数字を扱う職業というだけあって流石に数学では下手な点数を取れないみたいです。


「『職業学』『スキル学』が満点なのはアロエちゃんだけだよ!」


「そうみたいですね」


 こちらは数学と違ってほとんどの人が点数を落としていました。満点が私だけなのもそうですが、職業学の2位が92点、スキル学の2位が88点とこの2教科で私と20点差がついています。


「アロエさん凄いね。断トツじゃん」


「あ、アレン君」


 実は職業学とスキル学の2位はこのアレン君の成績です。総合成績でも370点で2位でした。


「職業学とスキル学満点は凄いね。僕は軍部を任されている公爵家の嫡男として人より覚えている自信はあったけど、まさかサポート職のスキルまで完璧だなんて」


「た、たまたまです……」


 そんなの一通り経験しているからステータス欄を見ればそのまま載っている。ズルしているみたいで公には言えないけど。


「たまたまねぇ……」


「平均点が60点のテストをたまたま100点……」


 ひぇっ……。アレン君はともかくカレンちゃんまで。アレン君の含み笑いがなんか怖い。カレンちゃんはじとーっとした目で見てくる。こっちは可愛いだけです。


「ん?」


 ……っと、なんか周りの視線が。あんまり悪目立ちするのは良くないですね。


「どうかしたの?」


「いえ、なんでもないです」


 アレン君と一緒にいるのも目立つ原因なんですよね。当の本人は分かっているのか分かっていないのかよくわかりませんが。順位と点数も分かったことですしさっさと教室に戻りますか。




「あなた、ちょっと付き合ってくださる?」


 あれぇ……目立たないようにしたのになぁ……。帰りのHRが終わっていざ帰ろうと思っていたらローザ・ランページ侯爵令嬢とその取り巻きの男爵令嬢と子爵令嬢に絡まれてしまった。


「あ〜、カレンちゃんは先に帰ってていいよ」


 厄介ごとになるかもしれないのでカレンちゃんには先に帰ってもらおう。私たちはどこに行くのかと思ったら学校でもどんどん人気のないところ。運動場の裏だ。


「それで、何か私にご用ですか?」


「なんですのその態度は? わたくしは侯爵家の娘ですのよ?」


「ローザ様と対等に話をしようなんて何様のつもりなのかしら」


「そうよ! 身の程をわきまえなさい!」


 えぇ……何の用かくらい聞かせてくれてもいいじゃん……。もう帰っていいですか?


「だから嫌なのですわ。価値のわからない卑しい平民が学校に通うだなんて。帝国の品位が下がってしまいますわ」


 うわー……典型的な選民思想だ。なんかここまで来るとイライラするよりも同情しちゃいますね。なんでこの人侯爵令嬢なのになんでこんなに貴族としての自覚がないんだろう……。こんな時トワさんだったらなんて言い返すかなぁ。


「平民を広く受け入れるように言ったのはその帝国の第一皇子なんですが。はぁ……皇族批判は聞かなかったことにしてあげます。ビリー先生もおっしゃっていましたが、そういう考えはいい加減改めた方がいいですよ」


「なっ……!」


 いや、なっ、て……。最初のホームルームの時に先生が前時代的な考えはやめろってわざわざ第一皇子の名前を出して言ってたのに何を聞いてたんだろ。あれは遠回しな皇族批判になるって意味でしょうに。


 取り巻きの2人もそうですが、侯爵令嬢のローザさんが言ってるから大丈夫なんて思ってるんでしょうか。それともこの2人も皇族批判だって気付いていなかったのでしょうか。


「あなた方も付き従っている以上は無関係とは言えませんよ。まさか自分たちまでは累が及ばないとでも?」


「う、うるさいわね!」


「ちょっとアレン様に気に入られているからっていい気になって!」


 別にアレン君はどうでもいいんだけどなぁ……。まぁ客観的に見てアレン君が優良物件で気に入られたい気持ちは分かるけどさぁ……。この人たちは気に入られる努力はしたのかな?


「はっ! そんな余裕な態度を取っていられるのも今のうちですわよ? あなたのお友達の……たしか、カレンさん、でしたっけ? 可哀想ですわね! あなたと関わっているせいで今頃……」


「あ゛?」


 は? こいつ今なんて言った? カレンちゃんに手を出す? へぇ……。ちょっとお仕置きが必要みたいですね。


「は……離しなさい!」


「お前ら、カレンちゃんに手出してどうなるか分かってんだろうな?」


 私に手を出してくるならいい。けどカレンちゃんに手を出すって言うなら容赦はしない。とりあえず二度とカレンちゃんに手を出そうとは思えなくしてやらないと。


「ろ、ローザ様を離しなさい!」


「お父様に言うわよ! あ、あんたなんか学校に掛け合ってすぐに退学にさせてやるんだから!」


「退学にするのはいいですけど、その前にローザ様を助けなくていいんですか? ほら、首元を締め上げられてローザ様苦しそうですよ。このままじゃ死んじゃうかも」


「ひっ……や、やめ! やめて! ローザ様を離して!」


 あーあ、へたり込んで泣いちゃった。口でやめろって言うだけで助けようともしないなんてローザ様可哀想だなぁ。


「ぐ、ぐるし……しんじゃう……」


「死なないですよこの程度じゃ」


 ここまでやればカレンちゃんには二度と手を出そうとは思わないでしょう。さて、早くカレンちゃんを助けに行かないと。


「アロエちゃーん! だいじょうぶ〜!?」


「え!?」


 か、カレンちゃん!? どうしてここに? 先に帰ったんじゃ……はっ……! まだ右手にローザさんを掴んだままだった! いらないいらない。


「ぐぇっ……!」


「か、カレンちゃん? それにアレン君も」


 こんなところで会うなんて凄い偶然だなぁ。ところで私は断腸の思いでカレンちゃんと一緒に帰るのを諦めたというのになんでアレン君が一緒にいるのかな?


「あ、アレン君がね、私が絡まれてたところを助けてくれたの」


 とんでもない善行ポイント積んでた! そんな中で私は同級生の首根っこ掴んでた! 


「とんでもない場面を見てしまった気がしたけど、無事なら良かった。僕たちの心配は杞憂だったみたいだね」


「あ、アレン様……! ご覧になったでしょ!? この女が暴力を振るってきたんですわ!」


「ローザ・ランページ侯爵令嬢。君が寄り子の下位貴族をそそのかしてカレンさんを襲撃しようとしたことは全部聞いているんだよ。悪いけど君の味方は出来ない」


「ひっ……!」


 おぉ……アレン君ってただの優男かと思ってましたけど意外と凄みがありますね……。断罪はアレン君に任せますか。


「君たちのことは父に報告させてもらうよ。大事にするつもりはないけど、いずれ皇帝陛下やランページ卿の耳にも入るだろう」


「あっ……あっ……」


 うわー……ぐにゃぁって女の子がしちゃいけない顔になってるよ。あれ? なんか股のところにしみができてる。これってもしかしなくても漏らしちゃってる……よね。絶対アレン君も気付いてるし、流石に可哀想かも……。 


「アロエさんもやり過ぎだよ。こんなになるまで責め立てるなんて」


「えっ!?」


 トドメを刺したのは間違いなくアレン君だと思いますけどね……流石にばつが悪いって思ったのかな。まさか責任転嫁されるとは思わなかったです。


「たいへん!」


「カレンちゃん!?」


 驚いたことにカレンちゃんはハンカチを取り出しすとローザさんの太ももを拭き始めました。まったく、その人はカレンちゃんのことを襲撃しようとしたというのに。仕方ないですね。当事者のカレンちゃんが許すというなら私も許しましょう。


「使用していないタオルです。これで拭いてください」


「アイテムボックス……へぇ……そんなの使えるんだ」


 騎士団で訓練することもあるのでアイテムボックスの中に何個か入れておくと便利なんです。というか、アレン君も見てないで何かしたらどうですか? 


「あ、あの……ベタベタで気持ち悪くないですか? 私のアイテムボックスに着替えがあるので……私の下着で良ければ着替えますか?」


「どうして……わたくしはあなたに酷いことをしようと……」


「け、結果としては別に何も無かったですから……」


 目の前で同級生がパンツの受け渡しをしている。うーん、シュール。って、ちょっと待って!? まだアレン君いるから! ローザさん脱ぐの待って!?


「アレン君、あなたはもう帰っていいですよ」


 早く着替えたいとパンツを脱ごうとしていたローザさんの動きがピタッと止まった。そういえばローザさん、好きな男子の前で漏らしちゃったんですよね……まぁ自業自得だとは思いますけど、同じ恋する乙女として同情はしてあげます。


「ごめん! わざとじゃないから! 別に覗こうとかそういう意図はなくて、いなくなるタイミングを逃しただけで向こうはむいてたから!」


「うん、言い訳はいいからとっとと帰りなさい?」


「はい! また明日!」


 アレン君は私たちの返事も待たずに走り去っていきました。やれば出来るじゃないですか。


「アロエちゃん……容赦ないね……」

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