第78話 sideアロエ イケメン?公爵令息
お兄様から3割くらいは平民がいるとは聞いていましたが、周りの人がみんな貴族に見えてしまいます。ひぇぇ……私の場違い感が凄いです。まずは案内通りに私に割り振られた教室に入ると、同年代の歳の子たちが1……2……、30人くらいいました。ここにいるのは私と同じで今年入学した生徒さんたちだそうです。
「えっと……私の席は……」
横6列、縦5列に席が並んでいて、各々の席は決まっているらしく、私の席は左端の前から2番目でした。席に座って周りの子たちを観察します。前の席には姿勢の正しい金髪の男の子。雰囲気だけでなんとなく良いところの貴族様な気がします。私の隣は黒髪の女の子、私と一緒でどこか落ち着かない様子で周りをキョロキョロとしています。この子とは仲良くなれそうです。
人間観察をしていると強面の男の人が教室に入ってきました。教壇に立つとパンパンと手を叩いて注目を集めました。
「担任のビリー・ヴァロワだ。まずは担任として一言。入学おめでとう。諸君らはこの帝国第一学校に合格した優秀な生徒であり、そこには貴族も平民も優劣はない。俺は生徒を貴族だ平民だと家柄で贔屓したり差別するつもりはないが、この学校内でも選民思想が根絶したとは言えないし、まだ若い君たちの中にはそういう考えを持っている者も少なからずいるかもしれない。しかし帝位継承権第一位、ジュリアス第一皇子がその考えに否定的であり、そういった思想は前時代的なものになりつつある。家名持ちの諸君らには早々説教になってしまって申し訳ないが、学校では勉学に励むことはもちろんのこと、それと同じくらいの次の時代の生き方も学んでいってほしいと思っている」
と、とても厳しそうな方ですね。先生の言葉にいきなりのことで面食らってる人もいれば、当たり前のことだと何食わぬ顔をしている人もいます。流石は帝国で1番歴史のある名門校です。でも、ご主人様の期待に応えるためにはここでやっていかなくてはいけないんですよね。
「では、まず出席番号が若いものから自己紹介をしてくれ。1番のアレンから」
「はい」
はっ! 私の前の男の子!? ってことは次は私!? わ、わ、わ、何も用意してなかったよ〜。何を言えばいいの!?
「アレン・ランカスターです。ビリー先生の仰るように、ここは社交界というわけでもないですし、僕に対しては家格や身分を気にせず仲良くしてください」
有名な方なのでしょうか。複数人の女子生徒が「アレン様ぁ……」とうっとりとしています……って、呑気に人間観察してる場合じゃなかった!
「次!」
「ひゃい! あ、アロエです。家名はありません。えーっと、趣味は人間観察……とか……レベル上げ……とか? よ、よろしくお願いします」
ひぃぃ! なんか変なこと言っちゃったよぉぉ!!
「人間観察〜?」
「やだ、根暗っぽーい」
「レベル上げ……?」
怖い! 同年代の子怖い! でも私がここにいるのは有力貴族とパイプを繋いでお兄様の力になるため! その人を見極めないと!
「ねぇ」
わぁぁ! びっくりしたぁ! アレン君だっけ……。恥ずかしい話しかけられてビクッてなっちゃった。話しかけられたら対応しないとですよね。
「人間観察が趣味って面白いね。それって特定の人を観察するの? それとも知らない人を対象にするの?」
「ど、どちらでも……例えば、今あなたのことを見ている人がこの教室内に3人いて……この列の1番後ろの席に座っている子、右から3列目の1番前の子。そして対角位置にいる1番右後ろの子が特にこちらを睨んでます」
「え……うわ、ほんとだ凄い睨んでる。あの子はたしかローザ・ランページ侯爵令嬢だね。パーティで何度かお会いしたことあるけど、あんな怖い顔は見たことなかったなぁ」
それはおそらくあなたに好意を持っているからだと思いますけどね。あなたが私に話しかけるまではうっとりした目であなたを見つめていましたよ。けど伯爵家のご令嬢が好意を寄せるようなこの人って……。
「……ちなみにアレン様、ランカスター家の爵位は」
「様なんてつけなくていいよ。一応公爵家の人間だけど、僕が偉いわけじゃないからね」
こ、公爵令息様でしたか……。それは貴族のご令嬢はほっとかないでしょうね。まぁ私はそんなのに興味ないのでそんなライバル視されても困るんですけど。とはいえご主人様から下された使命を考えればこの男、圧倒的重要人物。ついでにあっちの伯爵令嬢も要チェックですね。
「それにしてもなんであんなに睨んでくるんだろうね」
「さあ……見なかったことにすれば良いかと」
自覚がないのでしょうか……。どうか鈍感な男が有罪になる法律が出来ますように。まぁそれを言うと気付いていて女心を弄んでいるケースの方が余程タチが悪いですが。そういう男はいつか刺されれると思います。全く、こういう時は見なかったことにしてあげるのが良い男と言うものです。お兄様ならきっとそうします。
「あ、目が合った。ははっ、表情が一瞬で戻ったよ。凄いね女の子って」
ははっ、じゃないですよこの人。女の敵ですね。
「そういうのは気付かなかったフリをしてあげてくださいね。女の子は繊細なんですから」
「え? ごめんウィンクしちゃった」
「え、何やってんの?」
ちょっと信じられなくて思わず素が出ちゃいました。でも本当に何してんのこの人!? だって喜ぶこと分かってやってる人の対応じゃんか! あ、分かった! 一度刺されて痛い目に遭わなきゃ分かんない人だ! 重要人物だと思ったけど距離を置かないと私まで危ないかもしれない。
「それ、私には絶対しないでくださいね。主に私の身の安全のために」
ほんとに、変に気があると思われても厄介ですからね。私にだって選ぶ権利がありますから。あぁ……こんな人と近くの席になっちゃうなんて……。先が思いやられますね……。




