表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

77/168

第77話 不審者注意

今日はアロエの初登校だ。初めての学校にちょっと緊張していたのか、昨日の夜は眠れないんですと俺の部屋に来たので一緒に寝てあげた。特に何かしたわけではないが、ちゃんと良く眠れたみたいだ。


そのアロエは制服姿のお披露目会をしている。もといみんなが勝手に囲っているとも言う。


「よく似合っているな」

「かぁいい〜!」

「可愛いですよ」

「可愛いの〜!」


「あ、あの、そろそろ行ってもいいですかー!?」


お前ら、早く行かせてやれよ。


学校への道のりは徒歩でおよそ20分程度。距離的にはそんなに遠くないのだが、貴族邸宅の並ぶ住宅街という事もあってそこまで人通りが多い道ではない。生徒や教員などの人が増える学校の近くまでは不審者に注意しないといけない。


だから俺たちはアロエを影から警護することにした。


「いいか? 絶対に気付かれないようにしろよ?」


「……それは分かっているがその格好はなんだ?」


ミーナが俺の姿にツッコミを入れてくるが、変装のために芸能人のお忍び3種の神器である帽子、マスク、サングラスを装備しているだけだ。何もおかしなところはない。


「テンマ君が不審者だよね……」


「ですね……それにあんまり隠せてないです」


「いや、これでもな……ッ!」


「! やばっ……!」


反応してからの行動はみんな一瞬だった。ミーナは天空闊歩で街灯の上に移動するとじっと身を潜める。フィーはどこから取り出したのか大きな布を持ってトワと一緒に壁と同化するように隠れた。


俺はというとただの通行人のフリをして堂々と歩いたのだが、怪訝そうな顔をしているあたりこれは悟られたか? アロエも最近かなり実力を伸ばしているからな。それにサポート職を任せているため占星術師の『看破』スキルも取得済みだ。


「が、学校に急がなきゃ〜」


とはいえ、上手く使いこなせているとは限らない。最近取得したばかりというのが俺たちに味方したな。俺たちが体勢を整える前に走り出してしまった。早く追いかけないと、そう思った瞬間だった。


「そこです!」


なんとアロエが勢いよく振り返った。流石に隠れるのが間に合わず、まさに犯行の現場を捉えた衝撃の瞬間みたいになってしまった。


ミーナもフィーもダメだな。俺は変装をしているからな。下手に狼狽えた方が怪しいから堂々と歩くぞ。そう堂々とだ。堂々……と……。ちょっとアロエさん、早く歩き出してくれませんか? いつまでも歩き出さないので隣まで来てしまった。流石にこの距離は無理だ!


「お兄様……?」


「おお、アロエ。奇遇だな」


嘘をつくにしてももっとマシな嘘をつけないのか俺は。ミーナ達も一緒になって尾行してるのに奇遇わけないだろうが。視線が痛い。


「そんな格好してるお兄様と歩きたくないです……」


よーし、この変装セットは帰ったら暖炉の燃料だ! アイテムボックスのインベントリ名ゴミにぶち込んでおこう!


「これなら一緒に行っていいか」


「はい」


ふぅ……どうやら嫌われずに済んだみたいだ。これからは尾行なんてせずに最初から一緒に歩くとしよう。



sideアロエ


ついにこの日がやってきてしまいました。一体何の日かというと……なんと今日は入学式なのです。し、正直緊張してます……。なので今日はいつもと違って制服を着ています。


「よく似合っているな」

「かぁいい〜!」

「可愛いですよ」

「可愛いの〜!」


「あ、あの、そろそろ行ってもいいですかー!?」


この家にいると締まるところも締まらないんですよね……。


気を取り直して初登校です。感慨深いですね。学校までは徒歩で20分ほどの道のりですが、人通りが少ないのでこの20分ですら油断ができません。


「はっ!」


人があまりいないはずなのに背後からたくさんの視線が……! 


そう思って振り返ったのに1人2人の通行人の姿があるだけで、その人たちも私のことを見てるって感じではありませんでした。 


うーん、みんなが追ってきてると思ったんですけど、気のせいだったのでしょうか。でもみなさん達人ですから上手く隠れているのかも? 


仕方がありません、ここは一芝居打ちましょう。


「が、学校に急がなきゃ〜」


うっ、なんか酷い棒読みになっちゃった。けどこれで追跡者は釣れたはずです。走って行く、フリをして勢いよく振り返る!


「そこです!」


「あ」


えー……そこには天空闊歩で空中に逃げようとするミーナさんの姿が。ばっちり目が合っちゃいました。あ! よく見たらフィーネさんは壁と同じ色の大きな布を持って隠れようとしてる! トワさんも一緒にいるけどそれで隠れられると思ったの!? 普段はあんなに頭が良いのになぜ!?


「お兄様はいない……よね?」


うん、いない。良かったぁ……お兄様まで浮かれてたらどうしようかと思いました。



いやちょっと待ってください……。あの黒の帽子に黒の眼鏡をしためちゃくちゃ怪しい人、こっちに向かってきてるあの人、背丈も歩き方もお兄様にそっくりだ!


何食わぬ顔で(顔見えないけど)私の横を通り抜けようとしてるけど、ほらやっぱりお兄様だ!


「お兄様……?」


「おお、アロエ。奇遇だな」


し、白々しい! 普段そんな格好で出歩かないのに!


「そんな格好してるお兄様と歩きたくないです……」


もしかするとクラスで一緒になる子が近くにいるかもしれないのに……こんな変な格好の人と登校してきたら変な子だって思われちゃいます。そう言ったらお兄様は変な変装道具を外してくれました。よかった、これでいつものカッコイイお兄様です。


「これなら一緒に行っていいか」


「はい」


うへへ、手を繋いでなんてちょっと恥ずかしかったですけど、さっきまで緊張してたのがちょっと和らいだ気がしました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ