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第57話 フィーとの休暇

フィーの様子は俺から見てもいつもと違ったし、ミーナが思わせぶりな目線を送ってきたから間違いなく本調子ではないのだろう。俺はフィーの部屋の前で積極的にコミニュケーションを取りに行くべきかそれとも放っておくべきか3分くらい迷った。


「フィー、飯食べに行かないか?」


迷った挙句積極的に行こうと思ったのだが、理由をつけないと話しかけられない男がここにいます。自分でも情けないと思うよ。けどアクションを起こしたことは評価してほしい。そんな俺の覚悟とは裏腹に中から返事は無い。


「フィー?」


寝ているだけならいいがもしかして返事もできないくらい具合が悪いのか? もしそうだとしたら急いで中に入らないと、そう思ったところでドアの鍵が開錠された。つまりドアのすぐ向こうにはフィーはいるんだろう。しかし待っててもフィーは出てこない。


「入るぞ?」


相変わらず返事はないが、鍵を開けたのに出てこないというのは入ってこいという意味か。まぁダメならダメって言わない方が悪い。俺がドアを開けるとその開けた手を掴まれて中に引っ張られた。


「フィー? どうしたんだ?」


部屋のランタンはついておらず、外光もカーテンで遮断していたのでもう昼になるというのに仄暗い。そんな中でフィーは俺に抱きついてきたかと思うとそのまま胸に顔を埋めてきた。


「ごめん……」


え!? 泣いてる!? いつも元気な彼女のこんな弱った姿を見るとは思わなかった。一体何があったのか気になるが、今はフィーを落ち着かせるのが先だろう。そう思って俺がフィーの背中に手を回すと、女性特有の柔らかい感触。なんで服を着てないんだ!? 気持ちいいからそれはそれでいいんだけどさ。


「テンマ君、好き、大好きぃ……」


俺もフィーのことは好きだけどなんだこれ!? 甘えられるのも大歓迎だけどほんとにどうした!? 


「どうした? 今日は甘えたい日なのか?」


甘えたい日ってなんだと思うけど普段の感じとは全然違う。普段のフィーはもっと友達としての好きみたいな感じだからここまでガッツリと甘えられたことはない。まぁ、やることはやってるんだけど……。それだけ聞くとなんか俺がクズみたいだな。いや、ちゃんと合意の上だから。


「テンマ君はさ、私のこと好き?」


「あぁ、好きだぞ」


え、何か怖い。そんな倦怠期の彼女みたいな質問されると身構えるんだが? 


「ごめん……今私めんどくさい女だよね」


「めんどくさいとは思わないけど心配だ。だから悩みや不安があるなら教えて欲しい」


俺には女心の機微を察することなんて出来ない。デリカシーの欠片もない上に格好も付かないが、俺に出来るのはそのくらいだ。


「だって私って軽い女じゃん……所詮私はミーナのおまけで付いてきただけの女だもん……私よりミーナやトワを大事にするよね」


「フィー」


「違うの、そんなことが言いたいんじゃないの……嫌だよ、これ以上嫌な女になりたくないよ」


フィーは俺が思っていた以上に深刻に悩んでいた。たしかにフィーはミーナやトワとは違って成り行きで今の関係になった。だけどそれでミーナやトワに劣るかと言われたら断固としてNOだ。全員大切にすると決めた。そこに優劣なんてない。けど、フィーはそう思わなかったんだな。


つまり俺がもっとちゃんと気持ちを伝えていればフィーがここまで悩むことは無かったのか。完全に俺のせいじゃないか。


「ごめんな。フィーがそんなに悩んでいるなんて気付けなかった。でも安心して欲しい、俺はみんなのことを等しく愛している」


「私が1番とは言わないんだね」


「それは……」


「ううん、いいの。その方が信じられるから。ちゃんと私のことも愛してくれてるんだって」


あぁ、信じて欲しい。みんな俺と一緒にいることを選んでくれた大切な人だ。そこに優劣なんてない。


「ごめん、不安にさせて」


「言葉だけじゃ足りない……信じられるように私のこと愛して」


ヤバい。こんな状況だっていうのに不謹慎にも可愛いと思ってしまった。まさかフィーからそんな言葉が聞けるとは思ってなかったから完全に不意打ちだよ。


「ねぇテンマ君……私これでも本気で悩んでたんだけど……なんでこんなに元気になってるの」


「誘ってきたのはフィーだろ。俺はそんなつもりなかったのに」


このあと俺たちはご飯も食べずに日が暮れるまで愛し合った。最後の方にはいつも通りの元気なフィーに戻ってくれたので俺の気持ちが伝わったんだと思う。


何回戦やったか分からないくらいして完全に体力の限界を迎えた。終わった時にはお互い全身何かの体液塗れになっていた。


「ご飯食べに行くにしてもこんなんじゃ流石に行けないよな」


「うん、お風呂とは言わないけどせめて身体は拭きたいかな」


俺たちが泊まっているような大衆宿にはお風呂なんて贅沢品は付いていない。王都で1番のホテルとかなら付いているかもしれないがそういうものだ。


とはいえ俺も風呂には入りたい。


「そうだ。ちょっと外に行かないか?」


贅沢に湯船に浸かるのは諦めよう、そう思った時急に天啓がきた。そうじゃん、無ければ作ればいいじゃん。俺たちは着替えを持って宿を飛び出す。目指すは王都の外。ちょっと、どこまで行くの〜!? というフィーのツッコミを無視して街道をずっと進む。無論、人の気配が無くなるところまでだ。


「よし」


「また汗かいたんですけど!」


なんだかんだ数キロ全力疾走だ。体力を使った後にこんな運動をさせられるとは思わなかっただろうな。けど、その分いい思いはさせてやるつもりだ。


「『サンドウォール』」


まずは魔法で70センチほどの高さの壁を作る。それを東西南北に繋げれば一瞬で浴槽の出来上がりだ。


「『ウォーターボール』『ファイヤーボール』」


そこにお湯を入れれば即席露天風呂の完成だ。本職の人からしたらそんな不純な動機で魔法を使わないで!? ってなるだろうな。


「よし、入るか」


「さ、流石に外でお風呂に入るとは思わなかったな〜……」


汗だくで気持ち悪いというのには勝てないみたいでフィーはおずおずと服を脱ぎ始める。ちなみに浴槽は1人なら悠々と入れるが2人だとちょっと窮屈かな、と思うくらいの大きさだ。もっと大きい浴槽も作れるが、これくらいでちょうどいい。どうあがいても肌と肌が触れ合うくらい密着して入ることになる。まぁそれが狙いなんですけどね。


「ちょっ! なんでそこに来るの〜!?」


俺がフィーの背後に回って後ろから抱きしめるとフィーは抗議の声を上げた。


「も〜恥ずかしいよ〜」


「そう言うわりには嫌がっているようには見えないが?」


本気で嫌なら暴れるなり逃げるなりするだろう。それどころか自分からすっぽりはまれる良い位置を探しているのでこの態度が口だけなのはすぐに分かった。なので俺はじっくりとフィーの柔らかい感触を堪能させてもらう。反対に俺はガチガチに固くなるんだけど。どことは言わないが。


「……えっち」


それが分かったのかフィーはそう言いながらキスしてくる。どっちがえっちだ。こうなった俺たちが何もなくお風呂に入っているわけがなく、この後は延長戦に突入した。



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