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第56話 こっちは弱いまま

 翌日、トワパパは病状回復を王都民に知らしめるべく声明を出した。また、王城を襲撃した賊──ミーナとフィーのこと──については老朽化していた建物が崩れた音だとして事態の収集を図っていた。

 その狙いはドンピシャというか、王都民はトワパパの病気の詳細は知らないとはいえトワパパが相当悪かったこというのは有名だったので、それが治ったというのは他の話題を吹き飛ばすほどには衝撃的なニュースになったみたいだ。


「指名手配も解除されたし、トワも安心だな」


「テンマ様とお姉様方のご助力のおかげです。ありがとうございました」


 ちなみに言うとトワパパはトワの指名手配の原因がユリウスとヴォルフガングの政権争いであると発表した。それを聞いた王都民の内心は怒り心頭であったが、仮にも相手は王族であるわけで王族批判は表立って出来ない。そんな王都民の心を汲んだのか、トワパパは自分の目の黒いうちは2人に好き勝手させないことを約束すると高らかに宣言した。それで溜飲が下がるというのだから、トワパパの優れた統治の賜物だろう。


「けど、王位継承権を持ってる2人がそんなんだと次の王様はどうなるんだろうな」


 あれ? 俺なんか変なこと言ったか? なんか一瞬で空気が固まったんだが。


「最悪わたしに白羽の矢が立つでしょうね。私自身は王国を捨てたつもりではいましたが、国民に支持されて持ち上げられてしまったらわたしが王族としての責務を果たさなければなりません。もしわたしが女王になったら、テンマ様は王婿(おうせい)として王城に迎えられるでしょう」


「そうなると次の王はテンマとトワの子になるということだろう? これならちゃんと王族の血が継がれているというわけだ。無論、そこに私とフィーの居場所はないがな」


「わたしもお姉様方からテンマ様を略奪するような真似はしたくありません。なので、もしもわたしが女王になることになった場合、わたしは潔く身を引くことにします」


 なんか話がどんどん悪い方向に向かっているんですけど。それにトワパパもバリバリ現役だしそうなるのなんて何年も先の話だろうに。


「こういうことは決めておいた方が良いですから」


「なら私はトワの覚悟が無駄になるよう第一王子と第二王子が成長してくれるのを祈るとしよう。私もトワと別れるのは寂しいからな」


 たしかに第一王子か第二王子がしっかりしてくれればトワに頼る必要もないな。それを含めてトワパパには頑張ってもらわないと。


「それでこれからのことなんだが。しばらく王都を拠点に活動しようと思う。というのも、急に王様が復活して混乱するだろうからその混乱に乗じて悪さをする不届き者が現れる可能性がある。目の届くところくらいは取り締まってやろう」


 トワの生まれ故郷だからな。なるべく早くクリーンな環境に戻った方がトワも安心だろう。なんだかんだトワは王国を愛しているんだ。さっきトワは俺か王国かを選ぶとなった時には王国を選択すると言ったが、実は俺もその方が良いと思っている。


 何故なら俺と一緒にいることを選んだ場合、少しずつ滅んでいく王国の様子を黙ってみているということになるからだ。その時トワには色恋にうつつを抜かし王族としての責務を放棄した第三王女というレッテルがはられ、それは後世にまで伝わることになるだろう。そんな汚名を着させるわけにはいかない。


「テンマ様、王国のダンジョンはよろしいのですか?」


「あぁ、そうか。トワはまだちょっと厳しいだろうけどフィーはこっちで50階層やった方が良いな」


 バトルマスターをマスターしてるフィーはダイヤモンドゴーレムではなくマンティコアの方が楽々攻略出来る。銭投げで倒してもマンティコアの素材で元が取れるので金の心配もいらない。


「フィー?」


「あ、ごめん。ちょっとぼーっとしてた」


 うーん、反応が薄いと思ったけど珍しく元気がないように見える。まぁ昨日頑張ったからな。休養は必要だ。


「王都にいる間は各自で好きなことをすることにしよう。部屋で休むも良し街に繰り出すのも良し。まぁ本音を言うと俺がレベル上げのモチベーションがないだけだ。もちろんダンジョンに行きたかったら行ってきてもいいぞ」


 帝国のダンジョンを隙あらば周回していたおかげでトワのレベルも150に到達している。一人で行動しても危険はないだろう。ここからダンジョンまでは馬車で1日かかるのでダンジョン組は別行動になる。


「わたしはダンジョンに行きます」


 レベル150に到達したとはいえ、ミーナやフィーと比べたらまだまだと思っているトワはレベル上げに意欲的だ。俺は別に劣等感を感じる必要はないと思うが、それがモチベーションに繋がっているのなら無理に説得することもないか。ただ、うちのメンバーは努力家なのでそうそう追いつけないだろう。


「私もついて行こう。早く最上級職を試したいからな」


 ミーナがトワに同行を申し出る。レベル300を目指すと言うのも本音だろうが、トワを1人にさせないというのが目的みたいだ。そんなミーナは目配せで何かを訴えてくる。フィーのことを頼むということらしい。それなら俺よりもミーナの方が適任な気がするんだがどうやらそれは違うらしい。よく分からないがフィーと長い付き合いのミーナがそう言うのならそうなのだろう。


 話し合いで俺とフィーが王都に残り、ミーナのトワはダンジョンに行くということになった。なんだかんだでここまで大きく別行動をするのは初めてだったりするが、まぁ心配はいらないだろう。


 ミーナとトワを見送ってフィーと2人きりになる。


「ごめん。なんか気を遣わせちゃったね」


「別にそんなことはいい。けど元気がないのは心配だな。どこか具合が悪いのか?」


 それなら純白魔道士の力でパパッと治せる。まぁそんなことはフィーも承知しているか。だから病気とか怪我とかそういうことじゃないんだろうな。


「ううん、疲れちゃっただけだから。ごめんちょっと部屋で休んでくるね」


 そう言ってフィーは宿に戻ってしまう。うーん、なんだろう。ただの疲労とは違う気がする。明日には戻っているのだろうか。こう言う時は構った方がいいのか、それともそっとしておいた方がいいのか……恋愛経験レベル1の俺には難しすぎる選択だ。

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