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第52話 久々の王都

「ん? なんだもう起きたのか」


「……なんで俺のベッドにミーナがいるんだ?」


「昨日は一緒に寝ただろ!?」


とりあえず朝からミーナを揶揄っておく。ちなみに俺の寝所の鍵は何故かみんな持っているので夜一緒に寝た記憶が無くても朝誰かが一緒に寝ているなんてことはしょっちゅうある。


「とりあえず起きるか」


「ああ」


リビングに行くと既にフィーが朝食を作ってくれていた。エプロン姿なのが新妻みたいで良い。


「あ、おはよー。ちょうど起こしに行こうと思ってたんだよね〜」


そう言われると起こしに来てくれるのを待ってても良かった気もする。もったいないことをしたなぁ。次からは起こしてもらおう。


「トワとココは?」


「トワお姉ちゃんならお顔を洗いに行ってるの!」


てっきりいないと思っていたココが壁からぬる〜んと出てきて教えてくれた。なんて心臓に悪い登場方法だ。


「今日は何する予定なの?」


「そうだな……ちょっとここらで自粛してもいいかもな」


思えば俺たちは帝都に来てから悪目立ちしすぎた気がする。

とりあえず俺たちが帝都に来てからやってきたことをざっと振り返ってみる。


冒険者ギルドで絡んできた奴らを毎度毎度防具を破壊して『装備壊し』と呼ばれる。

帝都の最大手クラン『月と太陽』の勧誘を断る。

これまで誰も住まなかった幽霊屋敷に入居。

商業ギルドで大儲け。


うん、改めて考えてみると目立つ要素ばっかりな気がする。一応トワは王都ではお尋ね者ということになっているんだからこんな目立っちゃダメだよな。でも隠遁の日々を過ごさせるのも可哀想だしなぁ。追われる心配を無くすならトワの指名手配を解除してやるのが1番だけど、その指名手配は第一王子と第二王子が協力して1番の政敵となり得るトワを排除しようと画策して出されたものだからな。王都民はその指名手配が政権争いによるものだと分かっているだろうけど、民主主義国家じゃないからいくら国民が不当なものだと嘆いたところで状況は変わらない。これを解除するには第一王子か第二王子よりも上の立場の権威が必要だな。


「よし、王都に行くぞ」


「「王都に!?」」


トワが指名手配中であることはみんなが理解しているところだ。そんなリスクを負ってまで何がしたいのかと思うのは至って普通な思考だろう。


「テンマ様、何故王都に?」


「そりゃ、お前の父親の病気治してバリバリ働いてもらうんだよ」


トワの父親は話によると不治の病だとかそういう類のものらしい。それならば俺ならば治せる可能性が高い。なんたって今は『白魔道士』の最上級職の『純白魔道士』だからな。


テンマ(18):レベル324

 体力:1438

 攻撃:1134

 防御:1072

 魔力:3814

 器用さ:1321

 精神力:2236

 素早さ:1725

 職業:『純白魔道士』レベル1

 レベル325までの経験値298423

 純白魔道士レベル2までの職業経験値100000

 

うーん、相変わらずレベル2までが遠い。『純白魔道士』に焦点を合わせるとその説明が出てくる。


『純白魔道士』……白魔法を極め神の領域に足を踏み入れた者。その魔法は世界の理すら超越する。


でた、世界の理すら超越する。そしてレベル1で使えるスキルは『エクスヒール』というものだった。どうせなのでその説明も読んでみる。


『エクスヒール』……呪い、四肢欠損、疾病、そのほかあらゆる状態異常を解除しながら体力を大幅に回復する。


疾病も呪いも治せるみたいだからトワの父親にも効果があるだろう。けどこれ安易に使ったらダメなやつだ。呪いとか病気みたいな目に見えないものを治すのは納得できるけど四肢欠損を治したら流石にだぞ。これって無くなった腕とかにょきにょき生えてくんの? ファンタジー越えてホラーだわ。


「ん〜? お兄ちゃんたちお出かけするの?」


「ちょっと王都まで行ってくる。家のことは任せてもいいか?」


「りょーかいなの!」


ココはこの屋敷から出ることができないのでお留守番だ。可哀想だと思うが本人は別に不満はないらしい。むしろ仕事があることが嬉しいみたいだ。でもこうしてココが意欲的に家を守ってくれるので安心して家を離れることが出来る。お土産買ってきてやらんとなぁ。



王都は貴族街へ入ろうとしない限りは門番などがいない出入りが自由な街だ。街の中央には王城があり、その周りを取り囲むように貴族街、そして貴族街とは壁を隔てて市民街と大まかな区分けがされている。


俺たちは王都に到着してまず市民街の宿に行く。冒険者活動をしていた時に利用していた宿だ。ドアを開けると看板娘のリルルちゃんが出迎えてくれた。


「あ、テンマさんじゃないですか! お久しぶりです!」


「4人部屋って空いてる?」


「空いてますよぉ! うぇへへ……テンマさん、また綺麗な人をお仲間に…………」


リルルちゃんは女の子が出しちゃいけない下卑た声を出しながらミーナ、フィーと順番に観察していく。そしてトワに視線を送った瞬間にリルルちゃんはフリーズした。


「もしかして第三王女様……!?」


「あー、やっぱ分かっちゃう?」


声を抑えてくれたのは流石の配慮だと思う。正体が一瞬で露呈したことにトワも驚いていた。


「わたしの顔を一般の方が知る機会なんてそうそう無いと思うのですが……」


「すみません。私、王女様のお顔はあの日の広場で見ているんですよ」


あの日というのはトワが第一王子と第二王子の画策で処刑されるとなった日のことだろう。トワが顔を晒したのは馬車を降りてから処刑台に登るまでのほんの1、2分だ。なので一般街ならそうそうバレないだろうと思っていたのだがその目論見は一瞬で外れた。いや、こればっかりはその一回をちゃんと覚えているリルルちゃんが凄いわ。


俺は逆に開き直ってたらバレないと思っていたが、万が一を考えたら表立って歩くのはやめた方がいいか。


「とりあえず髪型変えればいいんじゃない?」

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