第19話 王都
「お客さん、王都が見えてきましたよ」
アルフの街を離れて5日、途中何度か他の街に立ち寄るなどの寄り道はあったが、問題なく王都へと到着した。
「でっけぇな……」
アルフの街とは大違いだ。街のサイズ感の格が違う。アリサさんがアルフを田舎だと言っていた意味が分かった。
アルフにはほとんど平屋の家しかなかったが、こっちには遠くからでも存在感のあるお城がババーンと建っている。今の俺は側から見たら完全にお上りさんだろうな。いや実際そうなんだけどさ。
王都はアルフの街のように街一帯を壁で囲っているなんてことはなく、道沿いに走っていたらだんだん建物が増えてきていつの間にか街の中にいた。
寄り合いの馬車だったので他にも乗客がいたのだが、その人たちは俺みたいにほげぇーっと口をあんぐりさせるなんてことはなく、澱みない動きで各々目的の場所へとスタスタと行ってしまわれた。俺だけ田舎者だ。
「兄ちゃん、道中の護衛あんがとな」
「いいよ。こういうのは持ちつ持たれつだ。運賃はアルフからだと2万ゴールドだったか?」
「おいおい。流石に兄ちゃんからは貰えねぇよ。ずっと護衛してたのに他のお客さんと同じ料金じゃ不公平ってもんだ。これからもルルムンド商会をご贔屓に頼むぜ」
むしろ俺は少しでも経験値が欲しいからという理由で積極的に護衛役を買って出たんだが。まぁタダで良いと言ってくれてることだしここはありがたくその好意に甘えるとしよう。
遠くに見えるお城の周りだけは立派な城壁で囲まれている。
馬車での道中に御者の人に話を聞いたが、あの壁の向こうを貴族街と呼ぶらしい。たとえ商人であっても許可のない者は入ることが許されないそうだ。
ちなみに初めは冒険者ギルドは壁の内側にあったみたいだが、都市開発が進んで壁の外にまで街が発展していくにつれて壁の内側であるということに付加価値がついて地価や物価が高くなり、その結果壁の内側には貴族や資産家という冒険者ギルドを必要としない者達が集まるようになったために冒険者ギルドは壁の外に移転することになった。神殿に関しては貴族街にしかないようなのでこれに関してはなんとか許可を貰わなければいけないみたいだ。
まぁ貴族街への行き方も大事だけど、衣食住の方が先決だな。幸い、少し通りを歩くだけでも飲食店らしきものが散見された。アルフよりも活気があるので食には困らないだろう。
「どっか良い宿は……」
こればっかりは見ただけでは分からないからなぁ。アルフの時と同じ戦法、ギルドで聞くという作戦で行こう。
冒険者ギルドもアルフの街のものとは比べられないほどに立派な様相をしていた。まぁ、冒険者人口が10倍は違うのだから同じサイズ感では明らかにキャパオーバーなので当たり前なのだが。
建物の中に入ってからもスケールの違いを目の当たりにする。
「おぉ、これ受付何個あるんだ?」
数えて見るとカウンターが30個ズラッと並んでいる。ただ、それが常にフル稼働というわけではないみたいだ。まぁそりゃそうか。
なら先に依頼でも見繕うかな。
流石にシステムは同じで貼り出されているものを受付に持っていくスタイルだった。同ランク以下の依頼は受けられない仕組みなのでBランクの依頼(ランクが上がった)を受けるつもりのない俺は基本的に常設依頼が主になる。
「うーん、やっぱこっちでもスライムが主になるか」
街道が整備されているということはモンスターが少ないということになる。ある程度の強さのモンスターに出会うには少し距離がある森まで足を運ぶ必要があるみたいだ。
少し覗いてみたが、Gランクの依頼には街道の整備や開拓、開墾の依頼があった。こういうのはアルフの街には無かった。
Bランクになると商隊の護衛依頼や貴族のパーティの護衛依頼などややこしそうな依頼がある。まぁそんなの受けるわけないので常設依頼を持っていく。
受付嬢さんはやはりというかアリサさんみたいな美人さんだった。やはり顔が良いのが採用条件なんだろう。
「こんにちは。本日はギルドに登録ですか? ギルドへの依頼ですか?」
物腰柔らかく人当たりも良さそうだ。これ意味一緒か。でも残念、どっちも違うんだなぁ。
「これお願いします」
「あ、すみません……。てっきり冒険者じゃない方かと」
装備で判断したんですね、分かります。一応帯剣してるんだけどなぁ、こんな初心者武器だと護身用としか思われないか。
「ギルドカードをお預かりしますね」
「はいはい」
俺のギルドカードを受け取ると受付嬢さんの顔が分かりやすく青ざめた。え、俺のギルドカードにやばいことかいてある?
「た、大変失礼いたしました。まさかBランクの方だったとは……」
あぁ、そういうことね。これに関しては俺の方が悪いみたいなところあるからなぁ。
けど、こういうやり取りを受付嬢と毎回するのも面倒だな。
「あー、別にいいですよ。あと、俺は多分というかほとんど常設依頼しか受けないんで。ここって担当の受付嬢とか決まってますか?」
「冒険者さんの数が多いので、基本的にはやってないんですけど……冒険者ランクが高い人は担当制にも出来ますよ」
「それってBランクでも出来ます? 出来ればあなたに担当になって欲しいんですけど」
「ふぇ!? い、いいんですか!?」
え? 何この食いつきよう。担当ってそんな価値があるものなの? まぁ俺は別に誰でもいいんだけど。
「そりゃ俺が言い出したことですし。いいですよ?」
「わたし、コロコって言います! 是非よろしくお願いします!」
まぁ俺に損が無くてコロコさんが得してるならいいか。




