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ニジェールの熱い一日(ほぼ実話)  作者: ニジェールまきこ
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村の生活〈2〉

村では、朝、太陽が昇らないうちに、アザーンというイスラム教のお祈りの合図が村中に鳴り響く。

街ではスピーカーで鳴らすが、この村では電気がないのでおじいさんが大きな声で叫んでいた。


アッラーーーーーーーーフアクバル!!!

アッラー――――――――――――フアクバル!!!!

ラ――――イッライッラッラ―――――――――!!!


このアザーンを合図に、村の男たちはぞろぞろとモスク(礼拝所)に集まっていく。女たちは家の中で各々お祈りする。

のぞみの家のすぐ裏にモスクがあったため、のぞみは毎朝、このおじいさんのアザーンの声で目が覚めた。


朝のお祈りが終わると、男の人たちは少し仮眠をしたり、おしゃべりをしたりして過ごし、女の人たちは、主食であるハイニ(トウジンビエ)を大きな臼に入れ、棒でトントントントンとついて粉状にする作業をしていた。

このハイニを粉にする作業が重労働で、のぞみも試しにやってみたが、村人は軽々やっているように見える棒はとても重く、なかなか同じ個所に下ろすことができなかった。女性たちに「ニシワーニ!!」(あなたはできない!)と口々に言われ、からかわれた。

村の女性たちは、この棒で臼をつく作業を一日中しているので、手には固いマメがいくつもできていた。それを見せ合って、「ホラ、私の方が固い」と言いながら、自慢し合っていた。

「先進国」の人間からは、効率が悪い重労働で、改善すべきというように見えるこの作業も、村の女性たちは誇りを持ってやっている。


村の人たちは、のぞみが持っているものは欲しがるが、食事の時間には必ずのぞみを呼んで、ごちそうしてくれた。2、3メートル離れて立っている土の家が7軒ほどあり、代わる代わる、のぞみを呼び、「ンワ!ンワ!」(食べろ!食べろ!)と言ってくれる。

食事は、鍋で火にかけながらこねて餅状にしたハイニに、バオバブやオクラなどを使ったソースをかけて食べる。それをひとつの鍋にたっぷりいれ、外に地面に置く。皆でその周りを囲んで座り、手を鍋に突っ込んで食べる。

のぞみははじめ、恐る恐る手を伸ばして食べてみたが、柔らかい餅にオクラソースをかけているような感じで、まずくはなかった。

「アガカーーヌ!」(おいしい!)

のぞみはザルマ語で言うと、村人は喜んでくれ、

「ト、ンワ!ンワ!!(じゃあ、食べな、食べな)」と言ってくれた。


ソースは日によって違い、またそれぞれの家で味も違う。

日本の女性たちも昔はお米の炊き方や漬物、味噌などにそれぞれの味があったように、ここの人たちも、それぞれの味を大事にしているのがわかる。


正午ごろから午後3時ごろまでは、暑さもピークとなり、ほとんどの村人は昼寝をする。トントントントン コツコツコツコツという食事の支度の音も聞こえない。午後3時ごろには、また午後のはじめのお祈りがあり、同じおじいさんの声がモスクから響いてくる。


アッラーーーーーーーーーーーフアクバル!!

・・・・・・



のぞみは昼の暑い時は、村人と同じように昼寝をした。

家の中は暑いので、家の前に簡易ベッドを組み立て、蚊帳を張り、その中で昼寝をしていた。

この村に来て2か月、暑い時は外で寝て、ドアも閉まらないような土の家に暮らしていたのぞみだったが、身の危険を感じるようなことは一度もなかった。

毎晩、夜遅くに、近くに住むサラマトゥと呼ばれるおばあちゃんが、のぞみの家に通じる小さな路地に木の棒をつっかけ、そこに布をおろし、仮の柵のようなものを作ってくれていた。その気になればすぐに壊してしまえるものではあったが、年頃の娘がひとりで生活していることに、自分の家族を心配するようにおばあちゃんが気にかけてくれていたことが、のそみはとてもうれしかった。朝早くには、それは片づけられるので、のぞみがそのことに気がついたのは村に来て半年ほどたってからだった。


 ニジェールに出発前、アフリカ、というだけで、「大丈夫なの?」と治安や、何か事件に巻き込まれるような心配をする声を友人からかけられた。だが、村人の予想以上の「おねだり攻撃」はあるものの、犯罪に巻き込まれるような危険は全く感じない。おだやかな村だった。


村人とコミュニケーションをとるには、まずザルマ語を習得しなくては。同じ言語を話せば、村人たちも「アンナサーラ」とは言わなくなるだろう、とのぞみは考え、協力隊の活動を始める前に、ザルマ語を覚えることにした。


昼寝の後、昼のはじめのお祈りが終わったころ、のぞみは外に出て、村人と話をすることを日課にすることにした。サガフォンド村はザルマ族の村で、村人のほとんどがザルマ語を話した。反過去だの大過去だの、女性名詞、男性名詞だの、発音や文法が難しいフランス語に比べ、ザルマ語はシンプルな言語で、日に日に上達してコミュニケーションが取れるようになっていくのがわかった。


「マテアランゴー?(みんな元気?)」

と言いながら、歩いていくと、食事の支度をしながら雑談している女性たちも、路地に座ってお茶を飲んでいる男性も、

「サメイサメイ(元気、元気)」

と返してくれる。


村の男の人たちは、あいさつの次には「日本に連れて行ってくれ」と言ってくる。

のぞみは毎日同じような会話をしているうちに、「私も日本に帰りたいよ。日本に連れて行ってよ 」と冗談を切り返せるようになっていた。「お前がお金を払うなら、一緒に行こう」「いやいや、あんたが払うんだよ」「お前だ」「あんただよ」とくり返すと、周りの男たちは笑い出す。

「アンナサーラ」がザルマ語でなにか言っている、という滑稽さも手伝ってか、のぞみが少し会話するだけで、村の男たちは大笑いした。


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