癒しカフェ
王太子の視点になります。
最近お気に入りのカフェがある。父上に聖女に逃げられた事で叱りを受け、全力で探して俺の花嫁に来て貰う。それがダメなら弟の嫁に来て貰う事を言い渡された。必死に探すのは俺で弟の嫁候補であると言うのも可笑しな話しだ。だったら俺の嫁で良いと思う…が、難しい。
南の魔女アテナが森で俺に見せた映像は、俺が彼女エメラディアを殺す場面だった。しかも憎々し気に一度は俺自身が剣で刺して、二度目は近衛騎士達に矢を射させた。矢尻には毒まで仕込んで。エメラディアが知らなければ問題無く、俺が2回分を誠意を持ってすれば。と思う事もある。しかし、何処に逃げたのか検討も付かない。一度目の時に近衛騎士で止めようとしていた奴が居た。先ず彼を調べさせた。容姿を伝えるとあっさりと断定が出来た。キャラメルカラーの髪に深いネイビーブルーの瞳はそうそう居ない。
名前はラルクアン・アシアン・ド・イマジンと言う。
彼を尾行させると必ず仕事終わりには隣町のカフェに行くと言う。女性が一人で経営しているらしい。
ラルクアンの家族構成では、姉妹は居ないと言う。
恋人かと言うと違うと言うらしい。
命の恩人
とラルクアンは言うらしい。これを考えると、彼は俺が剣で刺した後
『彼女が湖を浄化した聖女です!』
と叫んでいた。俺があの湖に向かったのは、聖女が現れて聖水を飲ませてくれたから助かった。今動ける者で湖の水を汲んでくるべき。と唱えた者が居たから。
それはラルクアンではないのか?可能性は高い。
ラルクアンを尾行していた騎士に場所を聞き、ラルクアンが勤務中にそのカフェに行ってみた。
ブルーシルバーのボブヘアにアメジストの瞳の明るい女性が一人で回していた。中の席数も少なく四人掛けテーブルが4つにカウンター席が5席。俺は一人でドアを開けた。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか?カウンター席にどうぞ。」
テーブル席は満席で暖かい雰囲気で居心地が良かった。
「なんだ兄ちゃんもエリーの噂を聞いて来た輩か?」
ガタイの良い男が茶化す様に言う。店主のエリーは慣れているのか、
「マタイさん余り揶揄わないのよ。ごめんなさいね。メニューは壁を見てね。」
お冷のグラスを置きながら、キッチンと客席をクルクルと良く動く。彼女がエメラディアならこのお冷に毒を仕込むかも知れない。と思いながらも口を付けると、スッキリとした甘い水で飲み易い。あっと言う間に飲み干してしまった。常連と思われる男性が、ピッチャーから注いでくれた。
「ここには昼を食べに来るんだけど、ここの水を飲んだだけでも疲れが取れて、午後は力が漲るんだよ。だから、ついつい来ちまうんだ。俺らみたいな奴が居たら営業妨害かも知れんがな。」
豪快に笑いながら背を叩かれる。
「ヤンギルさん。ミートパイ出来ましたよー。」
エリーがミートパイを乗せた皿を持ってキッチンから走って来た。皆んなが、あぁーっ!と叫んでいる。彼女は勢い良く滑ってミートパイが空を舞い俺の顔面に飛んで来た。
「また、やったかぁ。エリーちゃんはそそっかしいからなぁ。」
勝手知ったるで皆んなが布巾をキッチンから取って来て片付け始める。手際の良さを見る限り良くやるらしい。顔まて拭いて貰った。
「ごめんなさいね。大丈夫でした?」
顔を覗き込む彼女の顔とエメラディアの顔が頭の中で交差する。
「大丈夫だ。」
「エリーちゃん美人だから、焦ってんのか?エリーちゃんは皆んなのものだから独占はダメだぞー。」
「いや、いや騎士の彼氏が居るもんなあ。俺見ちゃったしぃー。イケメン彼氏だよなぁ。」
エリーは、頬を膨らませて腰に両手を置いて
「あの人は親戚の人だって言っているでしょ!あんまり言うともうお料理提供しませんからね!」
怒っている態度も可愛いと思えてしまい、吹き出してしまった。
その後ミートパイとアイスティーを頼みゆっくりと食した。中々の美味さだ。食事が終わり頃には頭もスッキリして身体も軽くなっていた。
エメラディアは魔法を使っていた。だとすれば、魔法で姿形を変える事は造作もない事だろう。
彼女エリーがエメラディアの可能性が高い。
ゆっくりと食べていたお陰で最後の客となった。会計の時に、
「また来る。」
と言うと、微笑むだけで
『お待ちしております。』
も言わない。それから毎日昼はこのカフェに通っている。ただ毎日品は変わるが何かしらの食べ物が俺の顔面に飛んで来る。今日は、レアチーズパイで顔面が脂で酷かったが、さした仕返しが食べ物を顔面に当てる位なら可愛い仕返しだと思ってしまう。
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