“隼人さんの、修業先”と、恋の行方。
「はい?」
と聞き返した橋本 和希に、佐木 隼人はこう言ったのだ。“好きな人が出来た”と。
× × ×
「は?」
和希から話を聞いた美津原 敦之は、そう言った。“隼人君、気になる人が出来たんだってさ”と、言われたからだ。
× × ×
「で? 結局御前、住む処迄世話してやったの?」
敦之にそう言われた、和希で在った。
「あ〜………まあ。」
和希は濁したが、結局吐いたので在った。敦之の詰問で。
「知り合いに頼んだ。」ーーーーと、和希は答えた。
× × ×
「そんなで大丈夫なのか?」
「あ〜まあね。信用出来る人だから。」
「で? “誰”?」
「それ聞いちゃうか、敦之さん。」
「誰が敦之さんだ。」
「嫌御前だろ。」
「気持ち悪い呼び方すんなよ。たくっ」
「あのね〜敦之君。」
「“君”も、だよ。巫山戯んな。」
そう言った敦之の言葉に、和希は急に笑い出した。
「…………、何だよ?」
「あ〜………、悪い。此の前“隼人”が、さ。…………」
「は? 何だ?」
「“高校の頃”ーーーーとか、言い出したからさ。」
「は?」
敦之はイケメン台無しな程に、思いっ切り其の顔を顰めたのだった。“はあ?”と。××××××××
「“文化祭”の、せいかね?」
「は?」
和希がそう言うので、敦之は益々顔を顰めた。和希はふっと笑ってから、又言った。
「久々に高校行って、何か色々思い出したんじゃ無えのかな? “隼人君”は、さ?」と。
「結論言えよ。何なんだよ。」
敦之は意外と気が短かった。××××
「嫌、彼奴なりに、“自分の悪評”気にしてたんだなあ〜と、ね。“悪い事”したな、と。」
和希はそう言った。敦之は呆れて返した。“其れ別に御前のせいじゃ無えだろ”と。
「“連中”が勝手に“思い込んでた”奴だろ。寧ろ“御前”のが“Boss”だったろ。」
「誰が“暗躍好きの、影の独裁者”やねん。酷えな、敦之君。」
和希が真顔でそう言うので、敦之も返した。“其処までは言って無えわ。”と。××××××
「“隼人”みたいな“馬鹿”を、苛めっ子だと思い込む方が、どうかしてるだろ。彼奴にそんな“知恵”なんてーーーー無い。」
「そもそもって、あれだろ? 隼人が血の気多くて、さ。来なくて良いのに、乗り込んで来ちゃって、さ。 あん時隼人が“照れ隠し”に、言った台詞だよ。」
「ーーーー忘れた。彼奴何て言ったんだ?」
「『俺の“財布”に、手え出すんじゃ無え』。『和希やんなら御前等を“財布”にするぞ』。ーーーーだな。」
「は?」
「後、『和希程、俺に“奢れ”無えんなら、大人しく平伏しとけ。雑魚野郎共が。』ーーーーだったかな。」
「………………、は?」
「俺ね、奢ってた訳では、無いのよ、敦之君ーーーー夏央さんと夏美さんから、“隼人君”の“財布”預かってた、『だけ』でね。あ、勿論『隼人』には、『内緒』だった。だって『高校生』にも、成って、さ?
流石に『そんな』の、本人に『言えない』だろ? 大和君からも『頼まれてた』し、な。」
「………………、おまえ、本当に何してんの?」
敦之は絶句しそうだった思いを、抑え込んで、そう言ったのだった。“隼人の子守りかっ!”と。
「子守り、かあ。………………。子守りとは、違う、なあ。………………」
和希は何か、考える様だった。××××××
「そもそもは、さ。隼人の金銭感覚が狂ってるのは、中学行って、気付いたみたいだしな。」
「それは仕方無い。」
「敦之も他人の事、言えん類いだったし、なあ。ーーーーまあ、御前は自力で修正したけど。 隼人はなあ、其の辺、“不器用”だったよね。大和君、言ってた。“甘やかしちゃった”ってね。」
「ま、其れも仕方無い。」
「なあ、その“チーズケーキ”、美味いだろ?」
「は? 何だ又、唐突に。 嫌“美味い”ーーーーけどさ? 其れが?」
「んじゃ此れ、ーーーー“置いてく”わ。“金沢”さんに、“差入れ”な? 持って行って。“俺”、帰るからさ。」
「………………、唐突“過ぎる”ーーーーだろ。 何だよ? 一体…………」
「“運命”は『一瞬の擦れ違い』で、出来てるーーーーと、思わん? 俺は『そう』ーー思う訳だよ。」
「…………………………。だから?」
「『選択肢』の、『掛け違い』ーーーーだな。」
「………………、だから?」
「『白』と『黒』は、『いつでも入れ替わる』ーーーーと、言う訳だよ。だろ?」
「だから?」
「『機会』を『放置』すると、手駒が『入れ替わる』って『話』だよ。」
「…………、おまえは先程から、何が言いたいの?」
「………、『隼人君』の、ーーーー。『恋』の、話。」
「…………………………………………………………………………………………………。つまり?」
「『俺』の『勘』が、外れると、『隼人君』がーーーー『幸せに成れる』ーーーーーー話。…………。」
「…………………、つまり…………………っ」
「『間違い』だと、『良いなあ』って。」
敦之は和希に渡された、ケーキの箱を見たのだった。…………………………。
「俺は『それ』を、聞いた方が、良いのか?」
敦之は和希にそう聞いた。表情を変えぬまま、敦之を見ていた和希だったが、ふっと陰りをちらつかせた。
一瞬だったが。直ぐに又平坦に戻って彼は言った。“知らなかった事に、すれば良いーーーー”と。“出来るだろ?”と。××××××
「敦之は“金沢さん”に、『ケーキを差し入れた』ーーーー“それだけ”だよ。だろ?」
和希はそう言った。敦之は苦味を噛み潰して、聞いてみた。「ーーーー何処で“遇った”んだ?」と。
和希は伸びをして、う〜と言ってから、話し始めた。“憂莓さん処”ーーーーと。
「ーーーーっ、は?」
「“最初”は、ね。最初っていうかさ?」
「は?」
「順に話すなら、“カフェラテ”から『始まってる』んだよね。」と、和希は言ったのだった。××××××
「隼人さ、最初は本当、“憂莓”さん目当てーーで、店に行ったらしいーーーーてか、そうなんだけどさ。
その日さ? つまり『敦之』が初めて『金沢さん』と、会った日な? あの日隼人君は、何故か“絵理撫”に、興味を抱き始めました。ーーーー此処迄良いか? でもほら、『隣り』のテーブルに『美彩チャン』と、御友達ーーーーも、『居た』訳だよね? 『其処』なんだよ、なあ。ーーーー」
「ーーーー何か、大体解って来たけど、ーーーーつまり?」
「敦、さ? 『美彩』ちゃんにーーーー、憂莓さんの『お店』、ーーーー教えなかったか?」
“教えた”と敦之は渋い顔で答えた。××××××××。つまり。此のマンションに『越して来た』敦之の『隣り』の部屋にも、『住人』が越して来たのだが、其れが偶然だったのか、どうかはさておき、
『金沢 美彩』という、若い女性だった。其の『女性』は、先日和希達が『プリンセス・カフェラテ』の『カフェ・ショコラーラ』にて、出会った女性だったのだ。それだけならば、敦之は気付く事は無かったのだろうが、もうひとつ『事件(?)』は、起きていたのだ。
海が隼人から『逃げ』る為に、和希の部屋を訪れた日は、『ショコラーラ』で金沢 美彩と出会った『日』と、『同日』であった。故に敦之は『言われ』て、辛うじて『記憶して』いたので在った。
和希の部屋からの『帰り道』で、道に迷い変な男達に絡まれていた『美彩』を、偶然救けたのだ。男達を追い払うと、救われた美彩が言ったのだ。「昼間“カフェ”でお会いした方…………っ、…………ですよね?」と。
敦之にしてみれば、“…………、言われてみれば?”程度の記憶で在ったが、美彩の方は違った様だった。
勿論危ないからと、送って行く羽目ーーーー嫌、事と為った。××××そして。“続き”が、在った“訳”だ。
敦之は和希に言われた後直ぐに、引越しについて、行動を起こした。手際良かった。もともと敦之は父親の所有物件のひとつに住んで在たので、引越し手続きは、楽だった。敦之が越して来た日に、敦之は和希からこう言われた。“お隣さんも借り手がついた。”と。
正直、“危なかった”と、敦之は冷汗を流したのだ。こんな半端な時期に、此のマンションに入れたのは、Luckyなのだと。因みに和希は借り手探しは不動産屋さんにお任せである。陽藍との古い付き合いの、不動産屋なので、信頼していた。
和希に聞かれた時、敦之は実は即決だった。其の場で不動産屋に連絡した和希だが、その時既に、『悩み中』の客が、ちらほら来ていたらしい。が、ーーーーオーナー権限で、ねじ込んで貰ったので在った。
実はこの時『悩んでいた』客のひとりが、美彩だった訳なのだ。住みたいーーーーけれど、自分には少し贅沢かーーーーーーと。悩んだ彼女は、つい、足が『マンション』へと向かってしまい、けれど。ーーーー『お嬢様』育ちの彼女は、慣れない夜道で、道に迷ってしまったのであった。そして『絡まれた』と。
歩きながらーーそんな説明を聞いた敦之であったが、正直『再会』するまで『忘れて』在たのだった。××××
敦之のそんな『素っ気無い』態度に、美彩は落ち込んだ。気にした和希は『手土産』を持たせて、『挨拶』へ向かわせたのだった。ーーーー正直、和希にしてみれば、結果は如何あれ『失恋』したての敦之の、『気晴らし』にでも成れば『吉』位の心持ちで。
『恋の芽吹き』に、気付きながら。
けれど。
真逆『隼人』が、
「ーーーー俺も知らなかったんだよね。『金沢さん』、『此の』チーズケーキ好きなんだって、さ。ーーーーーーっ」
“真逆”ーーーーと、流石に敦之も引き攣った顔をしたのだった。
「『三回』も『偶然』出遭うのは、『運命だと思えた』って、『隼人サン』が…………………………………………………………………………………………………………………。
ごめんね、敦君。 俺、謝る。 隼人“サン”は其の“チーズケーキ”の『お店』の二階に住んどります。ーーーーーーーーっ、ごめん。」
「嫌、ーーーーーー運命、つーか、『美彩』チャンは馴染みの店に『いつも通り』、『チーズケーキ』買いに行った『だけ』ーーーー、なんだろ? それーーーーーー。」
「『そう』思え無い『ところ』が、隼人君なんだよね?」ーーーー和希は真顔でそう答えた。××××
“因みに美彩ちゃん『持ち帰り』出来る事『知らん』らしいから、持って行っておやり。”ーーーーーーと、和希は言ったので在った。美津原 敦之は、言われた通り、『差し入れ』た。『彼女』へと。××××××『隼人』には『言えない』がと、思いながらも。
“隼人”は“兎乱獲”に行って、『獲物を見失うタイプなんだろうな』と、和希は言ったのだった。敦之は、
「“獲物”狙って無きゃ、ざっくり“狩る”のにな、彼奴。ーーーー」と、項垂れたのだが。
「? 美津原さん? どうかしました??」
チーズケーキを嬉しそうに受け取った“金沢 美彩”に、そう訝しまれた。“食べないんですか?”と不思議そうに。“食べて良いよ。俺はもう食って来たから”と、敦之は彼女へ言ったのだ。
「でも二切れ入ってますよ? 肥っちゃいますから、一緒に食べてくれませんか? 珈琲淹れますから。…………………………っ駄目ですか?」
“敦之”は「良いよ、分かった。」と返すしか無かった。“愛らしさ”に。“ごめんな隼人君”という和希の声が、聴こえた様な気がした。“空耳”でも無く。




