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敗北

 深呼吸をして一度落ち着く。


 放っておくと怖くて震えてしまいそうだ。


 クリスがいるんだから大丈夫だ。

 きっとクリスがどうにかしてくれる。


 大分クリスに依存してるな、私。


 スケルトンたちはまだあんまり強くないし、私自身は無力だから仕方ないんだけど。


 正直、城を防衛するにしても何するにしても、クリスで駄目だったら終わりだ。


 せめてもうちょっと、スケルトンたちが強くなってくれるのを待ってくれたら嬉しいんだけど、いきなり城を攻めてくる人たちがこっちの都合を考えてくれるはずもない。



「クリスは、他の町や村を攻めたりしてないんだよね?」


「うむ、必要ないからな」



 人間と違って、クリスには領地が必要ないらしい。


 この城と墓場だけで、数十万から数百万くらいのアンデッドを置いておくことが出来るし、彼らには食糧が必要ない。


 疲れることもなく、一日中立っていられるので住む場所も必要がないし、骨だから服もいらない。


 人間のように農地もいらないし、娯楽だの、宝石だのもいらない。


 クリスの研究には必要な素材もあるが、あくまでも個人の研究なのでそれほどの量がいるわけでもない。


 クリスの作った魔道具なんかを売り払えば、研究資金には十分だし、結界や魔道具の維持に必要な魔石はダンジョンからいくらでも取れる。


 人間を襲うメリットがないのだ。


 だからまあ、クリスは人間を襲わない。


 墓地にいるスケルトンたちはテイムもしていないし、死霊術で操っているわけでもないから外に出て悪さをする可能性もあるが、そもそもスケルトン程度の低位アンデッドは、日の下で行動が出来ない。


 この周辺が常闇の地域だから二十四時間平気で活動しているが、人間の住む村は常闇の地域の外にある。


 スケルトンたちがわざわざ行動しづらい場所に行くとも思えないし、人を襲った可能性は低いだろう。


 なのに、人間は攻めて来た。


 こんな土地でも領土が欲しいというだけなのか、それ以外にも理由があるのかは分からないけれど、ここに住んでいる私としては理不尽なものを感じてしまう。



「どうするの?」


「撃退する」


「でも、多いよ?」



 そう、今回の敵は多かった。


 前回来た冒険者は六人だけだったが、今回は二十……いや、三十人はいるだろうか。


 だから、怖いのだ。


 前回の人数ならクリスは負けない。

 なんかもう、滅茶苦茶チートじみた人間でもいなければ、クリスは倒せないだろう。


 勇者のような存在か、それとも私のようなチートを貰った転生者か。


 でも、今回は三十人。


 どがぁん、ばごぉん、という爆発するような音を聞いていると、彼らの能力は人間を超越している。


 私も前世に比べると身体能力が上がったが、まだ人間の域を出ていない。


 せいぜい、トップクラスのスポーツ選手くらいの身体能力だろう。

 それでも十分に凄いんだけど。


 結界を攻撃している冒険者は、人間兵器と呼んで良いレベルの化け物だ。


 勝てるの?

 倒せるの?


 相手による?


 まあ、そうだろうけど。


 楽観は油断だから、簡単に倒せるって言い切らない精神は凄いと思うよ?


 けどそこは、嘘でも『心配ないよ』って言うのがお約束じゃないの?


 そうしたら私が、『骨でも良い! 素敵!』ってなるかもしれないのに。


 ならないとは思うけど。


 さすがに骨は嫌だ。


 私の周り、骨しかいないんだけどね。


 レイスも何体かいたっけ?



 クリスが杖を掲げる。


 すると、墓地で数体のスケルトンが組み合わさり、合体した。


 前回の襲撃者の際にも登場した骨の巨人だ。

 それが、結界を攻撃していた人たちの背後に現れ、襲いかかる。


 不意打ち気味の攻撃ではあったが、攻撃を受ける前に気づいたようで、即座に対処していた。

 三十人で半円形の布陣を作り、骨の巨人を囲む。


 魔法が次々と飛んで、骨の巨人に直撃した。



『ぐおおぉおおお!』



 骨の巨人のうめき声が城にいる私にまで聞こえる。


 ぶん、ぶんと骨の剣を振りまわして魔法をいくつか打ち消すが、多勢に無勢で打ち消せなかった魔法が直撃する。


 骨の巨人は魔法攻撃に曝されるのは諦めたのか、包囲した冒険者たちに突っ込んで行く。


 勢い良く剣を振り下ろすが、一人の男が前に出て盾で受け止めた。


 いや、さすがにその重量を受け止め切れなかったのか、受け流したようだけど、ほとんどダメージは入っていないように見える。


 陣形は一瞬崩れたが、盾を持った人が剣を受け止めている間に、再び半円形の陣を作られてしまった。


 魔法が飛ぶ。



『ぐわぁああああ!』



 骨の巨人が悲鳴を上げて崩れ落ちて行く。


 どうやらあっさりとやられてしまったようだ。




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