趣味
お城が広すぎて、まだ全ての部屋は見れていないのだけれど、クリスに教えてもらって図書室があることを知った。
暇な時は本を読んでることが多いんだけど、正直面白くない。
この世界の娯楽が肌に合わないというのもあるんだと思うけれど、図書室の本を集めているのがクリスだってところが大きいのだろう。
クリスは頭でっかちだから、頭の良い本ばっか読んでいるのだ。
だから世界がどうのというよりも、クリスと私の趣味が合わないってだけなんだろう。
そんな中でもいくつか私の眼鏡に適う本があった。
最近は刺繍の本だ。
どう見てもクリスの趣味とは思えなかったので、何故こんな本が置いてあるのか聞いたら、私の服のデザインの見本として買って来たんだと言う。
考えてみれば、畑も、洋裁場も、家具を作るのだってクリスの指示の元で行われているのだから、私の快適な生活を実現するために、クリスがどれだけ勉強したか分かるというものだ。
そんなクリスの苦労も知らずに、私はのほほんとした日々を送っていたわけだ。
まあ、それが分かったところでクリスの考えていることとか、私にはまったく分からないし、手伝おうとしても邪魔にしかならないと思うので、手伝う気すらないのだけれど。
だから私は、時間があれば趣味に走れるというわけだ。
最近の趣味は刺繍だ。
たまたま本を見つけたのと、なんかお嬢様っぽくない? っていうのが始めた理由だ。
ほら、お姫様とか、高貴なご令嬢って刺繍を趣味にしてるイメージってない?
悪役令嬢とか大体刺繍してるよね、うん。
それで適当な男にあげたらなんでか惚れられちゃうの。
ってなわけで女子力アップには刺繍だ! と私は刺繍をしているわけだ。
まだお月さまくらいしか出来ないけどね。
私もお城に住んでいる女性だし、もう広義では高貴な女性って言えるんじゃない?
言えるよね?
言えるともさ。
ご令嬢と呼ぶにはあまりにもマナーが出来ないけどね。
今度本を見つけたら練習しとこう。マナー。
私は不老になったらしいし、長いだろう人生、いつかは役に立つはずだ。
まあ、不老って言っても殺されたら死ぬらしいから、人生が長くなるかどうかはこれから次第なのだけれど。
殺されるような生き方は、出来ればしたくない。
こんな城でアンデッドの主を気取っていれば、いずれ何かに巻き込まれそうな気もするけれど。
最近はよく部屋で刺繍をしているが、飽きたらクリスのところに遊びに行く。
邪魔はしないようにしているけれど、ポーションを作ってたり、魔道具を作ってたり、見てるだけで面白い。
最近出来た物として石鹸がある。
ついに石鹸が出来たので、私の身体はピカピカだ。
髪用の石鹸――まあシャンプーだ――もあるので、髪がギシギシすることもなくなった。
ドライヤーも作ってくれているというのでそろそろ完成するだろう。
ノックして部屋の中に入ると、クリスは作業中だった。
テーブルの上に山と積み重なった魔石がある。
今回は何を作ってるのだろう?
「おお、主よ。何か用かね?」
「別に用ってほどじゃないよ。暇だから見に来た」
「ふむ、では椅子に座って見ていると良い」
「何を作ってるの?」
「剣だ」
そう言って一本の剣を取り出す。
剣を作るのに剣がいるの?
この剣はまだ未完成?
素材なの?
どう見ても普通の剣だけど。
普通の剣を使って普通じゃない剣を作るの?
普通じゃない剣って何?
魔法剣?
剣先が燃え上がるような?
そのイメージで合ってる?
魔法剣ってどうやって作るの?
魔石を使って付与魔法?
付与魔法とかあるんだ。
なんか凄そう。
魔法剣を一個作るのにこれだけの魔石がいるの?
これってスケルトンたちが集めたやつ?
何個あるの?
千五百?
そんなに使うの?
っていうかそんなに集めてたんだ。
私がここに来てまだ十日くらいだよね?
一時間に十個集まるとして、二十四時間体制でLV上げしてるから一日で二百四十個。
十日もあれば二千四百個になるか。
千五百ぐらいは余裕だね。
そのバケツ何?
なんか緑の液体入ってるけど。
飲んだら不味そう。
うえっ!
薬品の臭いがする!
固定剤?
そのまま付与すると時間の経過で魔法剣じゃなくなっちゃうの?
固定剤に浸けておくことで付与した魔法が逃げなくなるんだ?
何その判子?
焼印?
これで魔法を刻印するの?
最初は五百個の魔石を使って事前付与?
うわっ!
すごい光!
一瞬で魔石五百個なくなっちゃったね。
んで、刻印を入れて固定剤に浸けるの?
そこに付与魔法が逃げないように仕上げ付与?
こっちも凄い光だね。
千五百個もあった魔石があっという間になくなっちゃった。
あとは三日置いとけば完成?
なんか呆気ないね。
燃える剣とか、私も使ってみたい。




