7話 克服
そんなこんなであほなことをやりつつも一週間ほど安全なこの場所でレベルとスキルをあげることができたのはとてもよかった。
今のステータスはこんな感じだ。
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伊東 健太 14歳 男 人間族
レベル:8 経験値:55/171
HP :1202/1202 才能:S
MP :1212/1212 才能:S
力 :722 才能:S
知力 :649 才能:S
素早さ:679 才能:S
器用さ:742 才能:S
運 :691 才能:S
魔法
火魔法Lv1 水魔法Lv1 風魔法Lv1
土魔法Lv1 光魔法Lv1 闇魔法Lv1
空間魔法Lv2
魔法適正
火 :C
水 :C
風 :C
土 :C
光 :B
闇 :B
時 :A
空間:A
スキル
賢者の瞳 経験値上昇(10倍)スキル習得率大UP
魔力感知 無詠唱
剣術Lv4 身体操作Lv4 魔力操作Lv4
毒耐性Lv5 麻痺耐性Lv3 睡眠耐性Lv3
称号
転移者 迷子
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ステータスは置いておこう。比較対象がいないのでよくわからないが、たぶんめちゃくちゃなことになっている。なにせステータスだけで言えば一番最初に出会ったブラッディタイガー(Lv38)より俺のほうが強いのだ。さすが才能Sだな。ちょっとやりすぎたかもしれないけど安全には変えられない。
魔法はとりあえず使ってみてLv1にしたがそれ以上はあがらず。
常時使っている空間魔法だけLv2になっている。やったぜ。
範囲が3倍ぐらいになり、結界に入ったものが何かわかるようになった。奇襲対策はばっちりだ。
残念ながらアイテムボックスはまだだ・・・。
称号は気にしないで欲しい。俺が悪いんじゃない!
この拠点は今日で最後にする予定だ。人間のいる町を目指して本格的な移動を開始する。
というのも昨日の探索の時に遠目だが町らしきものを森を抜けた先に発見している。
野宿が怖かったので一度戻ってきてしまったが、最初からそのつもりなら日がくれる前にたどり着けるだろう。ステータス高いしね。
それと装備が限界に達している。具体的に言うと剣が折れた。正直俺のステータスにこの銅の剣は見合ってないようだ。魔物の硬さとかそういう話ではなく折れた感じがする。料理にも使っているのでこれがないと非常に困るのだ。手ではやりたくないしな・・・。
野宿が怖い理由だが、ワイバーンだかドラゴンだかわからないがドラゴンが空飛んでました。
いくらステータス高めとはいえLv8でドラゴンは勘弁してもらいたい。
それにしても・・・そう!やっぱりドラゴンがこの世界にはいたのだ。
遠目からだけでもかっこよかった。見た瞬間テンションが跳ね上がったね。思わず叫びそうになったぐらいだ。ファンタジーといえばドラゴン!ドラゴンと言えばファンタジー!
現実世界にもいればいいのにとか思うほどだったドラゴンがこの世界ではいるのだ。とても楽しみである。竜騎士とかあるのだろうか。もしなくてもテイマー系のスキルはあって欲しい。大きいのと小さいのと二匹はペットにしたいな!
卵から孵す必要があるとかかな?それだとでかいドラゴンに育つ前に俺が死にそうだな。条約とかで保護されてたらどうしよう。もしくは人間の敵とかだったら、飼っちゃだめって言われたりするのかな?人間ごときを乗せるなんて!ってパターンもあるかな?友達になったらいけるかな?あとはあとは・・・はっ!?
楽しみだな・・・!
拠点にしていた木に感謝を捧げ、無事を祈っておいた。
その後町っぽいものがあった方向へ向かって走りだす。ドラゴンにあわないことを祈りながら・・・。
襲ってこなくて可愛いのなら歓迎するけどな!
結構長い時間を森の中にしてはかなりのスピードを出しながら走り続けている。剣も使えないので魔物は見つからないようにして全部無視だ。のどが渇いたときに水を飲む以外ではほとんど止まっていないが、そこまで疲労はない。地球にいたころではとても考えられない。こんなスピードで走ったら300mぐらいで倒れる自身がある。このスピードなら日没どころかお昼までに到達できそうだ。
走り続けていると右後方に空間感知が反応する。狼のような魔物だった。こちらが見つけるより早く見つけられたようだ。またスライムの森は抜けたらしい。
無視してしばらく走っていたがいつまでもついてくる。判断を誤ったかもしれない。なんと4匹に増えていた。今の俺の結界は15mほどしかないのでそれ以上遠くを走られると気づけなかった。これ以上増えてはたまらないと迎撃することにした。
足を止め、半分になった剣を構える。ひとまず鑑定をしよう。
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アッシュウルフ Eランク
レベル:38
称号
なし
集団戦を得意とする狼
個別ではEランクだが単体で出会うことはまずないだろう。
数によりランクが上がる。最大でCランク程度
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「ぐるるる・・・」
そんな威嚇音を出しながら、ぐるっと囲もうとしてくる。全員が結界の範囲に入っているのがすくいだが、こんなにたくさんの敵を処理したことがない。俺の脳のほうがパンクしそうだ。囲まれるのは二重の意味でまずい。
「ハッ」
先手必勝と気合を入れながら右の狼に切りかかるが当たらない。役割が決まっているのか、俺が切りかかった狼は後ろに下がっていき替わりに左の狼が俺に飛び掛ってくるのが結界でわかる。
内心は焦っていたが、体は動いた。左手であごをかちあげ、右手の剣で首を切る。
首が飛んだりはしなかったが、血がふきだしている。致命傷だろう。やったことに自分でもびっくりしたが、狼たちはもっと驚いたようだ。
俺への警戒を強め、かなり広く輪を作っている。今がチャンスと踏み込もうとした時、後ろからばきばきっと音がする。あわてて振り返るといつぞやの虎がいた・・・。
「グアアアァァーーー!」
威嚇の声で最初の時の恐怖がよみがえり、手が震え汗もふきだす。頭が働かず動けない。
やつは強者の余裕かのんびりとこちらに向かってきている。
数秒狼のことを完全に忘れていたが、すでに逃げ出した後のようだ。
狼に擦り付けて逃げることができない以上戦うしかない。
しかし動悸が止まらずへたり込みそうだ。眩暈もする。
そんな俺に向かってやつはからかうように右手を振り上げたたきつけてくる!
「ああああっ」
悲鳴を上げて何とか体をひねり間一髪直撃は免れたが、よけそこなった左肩が熱い。
痛みと恐怖から何かのスイッチでも入ったのだろう。
浮かんでくるのは怒り。こんな世界へ送った神への怒り。なんども襲ってくるこいつへの怒り。
そしてなによりたくさんの生物を殺してステータスを得たにもかかわらず、震えることしかしていない自分への怒り。
震えは収まった。左肩も『光魔法』で治療中だ。すぐに治るだろう。
改めて剣を構えやつを見据える。今まで戦ってきた奴よりは強いだろうが、それだけだ。ステータスは俺のほうが上。強くはないが魔法もある。
「殺すっ!」
獲物のちょっとした抵抗はスパイスなのだろう。やつはまだ余裕の様子で、さっきと同じように右手を振り下ろしてくる。
今度は左前に踏み込み躱しざま虎の右前足に剣をたたきつける。
「グギャ」
前足を半分ほど切ったようで血がどばどば出ている。代償に剣は折れ曲がってしまった。
さすがに使い物にならないだろう。残りは徒手空拳と魔法だ。やってやる!
やつは思わぬ反抗に怒ったのだろう。
「グアアァァーーー!」
再度威嚇の声を上げてくるが、今の俺に恐れはない。威嚇のために思いっきりあけた口をしたから殴りつけてやる。
「燃えろっ!」
流れるように顔面に向けて火の玉をぶちこむ!
驚きと熱さでひるませることができたが、倒しきるだけの火力がない。手数で倒すしかなさそうだ。チャンスを逃すまいと横に回りわき腹に思いっきりパンチをいれる。
ぼきぼきっと音がした。奴のわき腹を砕いたが、自分の右手の骨も砕けたようだ。
内蔵でも傷めたのだろう、腹ばいになって苦しんでいる。
無駄に苦しませることはないだろう。首に向かって『風魔法』でカマイタチをつくりだし、打ち込む。
何度か繰り返すと、首から大量の血を流して奴は死んだ。
疲れた・・・。そして右手が死ぬほど痛い。痛みに耐え、泣きそうになりながらなんとか治す。
骨折を治すのには時間がかかるのか、集中できなかったからか、5分ほどかかってしまった。
なんにせよ勝った。勝ったのだ!
死なずにすんだ。喜びより安心感が強かった。