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78話 戦後

俺達に追い返された帝国の軍隊はそのまま戻って来なかった。指揮官達が無事であれば再集結して再び攻めてくると言うこともあったかもしれないが、俺とアイラで倒せたようで完全な敗走となった。まあ指揮官が生き残っていたところで向こうは大量の死体があるのに比べて、こちらは傷を負ったものすらいない。この状態で攻め込んでくるのはよっぽどのアホだろう。


行きは整然とした侵攻だったため魔物たちもほとんど手を出せなかったが、帰りは個々人がばらばらに逃げたため、多くの軍人が魔物の犠牲になったようだ。攻めてこないことを確認した後、俺とアイラで森の見回りをした結果、あちらこちらに打ち捨てられた鎧を見ることが出来た。この分では俺達の攻撃から助かった人間も、そのほとんどが森に飲み込まれることになっただろう。そもそも森の出口は遠く、帰り着くまでにもかなりの時間がかかる。また攻めてこられては困る俺達としては、一安心と言ったところだ。




戦後処理としては俺達がやることはほとんどなかった。捕虜はとってないし、怪我の治療もない。唯一あったのは人間の死体を片付けるのと、その装備の処分ぐらいだ。それも大きな穴を掘ってあげたぐらいで、あとはうちの軍隊が処理した。彼らは訓練をたくさんした割に、今回出番がなかったので体力は有り余っていた。一応俺達も手伝おうとしたのだが、これぐらいはやらせて欲しいと村長達に懇願されたため、暇しながら屋敷の中でお茶を飲んでいた。さすがに死体見ながらお茶を飲む趣味はない。


死体は放って置くと大変なことになってしまうので、そこだけは時間との勝負で頑張って処理していた。最後は大穴に向けてゴルラドがブレス一発。予定では白骨にして、そのまま埋めるはずだったのだが、すべてが溶けてマグマのようなどろどろの地面だけが残った。完全にやりすぎである。


「おっとすまん。良いところを見せようとし過ぎたわ。ガハハ」


ガハハじゃねえよ、この残念ドラゴンが!

結局俺達はもう働かないでいいと言う話だったのに、マグマ地帯を魔法で補修する羽目になった。畑などからは遠い所に穴を掘ったとはいえ、マグマが固まったようなところではこの後の生活に支障が出ないとも限らない。完全に余計な仕事である。


ゴルラドは当然殴っておいた。おまけでイレーネさんにお仕置きを頼んだ。涙目になっていたけど、いい加減調子に乗ってやりすぎるのは止めて欲しい。でもこれだけお仕置きされても改まらないところを見るとこいつのお調子者具合は治る見込みがなさそうだ。とてつもない出力を誇るお調子者・・・。俺が死んだ後に恐ろしい未来がこないことを祈ろう。




それからしばらくの後、俺達は何人かの国の代表を連れて人間の帝国、その中枢にに乗り込んだ。具体的に言うと、皇帝が住んでいる城の謁見の間をノーアポで訪れた。


「何だ貴様は!?」


「衛兵!衛兵!侵入者がいるぞ!近衛は皇帝陛下をお守りしろ!!」


当たり前だけどこちらの話を聞く状態じゃないので、一通り衛兵とか近衛兵が揃ったところで全員を威圧した。衛兵は言うに及ばず、近衛兵もそのほとんどが動けずに座り込んだ。大臣などの高い服を着込んだ貴族達の中には漏らした者もいた。かちかちと口を鳴らすだけでもマシな方で、耐性のない人間は概ね気絶してひっくり返ることになった。


ほぼ全滅の状況の中で、かろうじて耐えたのが近衛の隊長と副長の二人だ。この辺はさすが戦いに身を捧げた現場上がりの武人と言ったところだろうか。まだ全力じゃないとはいえ、俺の恐怖スキルに耐えるなんてなかなかだな!ちなみに本気でやるとたぶんこの部屋の9割は発狂して壊れるだろう。


「ぐううぅう!き、貴様は何者だ!この国の中枢に攻め込んでどうするつもりだ!?」


隊長と副長はその身を叱咤するため、舌をかんでいるようだ。口から血が流れてきている。敵ながら天晴れという場面なのかもしれないが、痛そうだなという感想のほうが出てきてしまう。


「あなた方が攻め込んできた獣人達の国、名をプロヒと言います。そこの代表を連れてきただけの、ただの護衛ですよ」


告げると同時に村長達をかばんから出す。ついでに威圧を解除してあげた。このままじゃ皇帝陛下もお話が出来ないからね。


「軍の生き残りから報告はあがってますか?」


「・・・ああ。報告は、一応受けている」


「そうですか、それではあとはお任せします」


ふう、これで俺の役目は終わりだな。後は村長達の話に邪魔が入らないように護衛だけでいいだろう。


村長達からは奴隷になっている同胞を解放すること、二度と攻めて来ない事、そして奴隷の首輪を出来る限り破棄することといった条件が告げられた。


金銭の支払いはいらないとしてるし、戦争に大敗したほうからすれば結構マシな条件ではないだろうか?奴隷解放となればその分の損失は当然あるだろうけど、この上国が傾くような金銭の支払いを求めるわけじゃないしな。金を払わなければさらに攻め込むぞ!となれば向こうも徹底抗戦になるかもしれない。だがこちらとしても延々と森を通っての軍事行動なんて到底ごめんだし、戦争にいちいちドラゴン達を導入するのは俺が拒否する。今回の戦いで一番頑張ったのは俺たちなのだから、これぐらいのわがままは許してもらうつもりだ。争いのない日常が一番だよね!



こちらとしてはすぐに結論を出して欲しかったのだが、貴族のほとんどをノックアウトしてしまったため、それは無理だと言われてしまった。皇帝の一存じゃだめなのかと聞いたら、戦争に大敗した上に貴族の利権を手放す話を事後承諾でやったら内紛になる。そうなれば奴隷の解放は進まなくなるが、それでもいいか?と言われて引き下がることになった。なんだかうまく言いくるめられた気がしないでもないが、ノックアウトしたのは俺なので強くも出られなかった。反省・・・。村長達はそもそもこの場で返事がもらえるとは思ってなかったみたいだ。事前交渉もなしにその場で話が決まるわけもないか。


後になって思い返してみると、俺の威圧を受けた後でしっかりとした政治判断?が出来ていたのは驚くことだろう。漏らすぐらい怖い思いをさせたのに(皇帝は漏らしていないが)、俺達の要求を鵜呑みにしなかったのはすごいことだろう。気絶した貴族達に比べてしっかりしていた皇帝は軍役経験者とかなのだろうか?それとも世界の覇権を狙うほどの人物ってのはそういうものなのだろうか。



約束の七日後、皇帝と貴族の間でどんな交渉があったか分からないが、こちらの条件はすべて飲むとの事だった。各町ごとに領主が責任を持って引き渡すと言う確約までもらえたのはなかなかいい結果なのではないだろうか。


ただ、教会が保有している奴隷と、奴隷の首輪には手が出せないのでそちらで何とかして欲しいと言われてしまった。


そもそもこの国にある奴隷の首輪の本当の所有者は教会で、その大元はヴァレ教国という宗教国家だそうだ。この世界の人間のほとんどが信仰している宗教の総本山であり、そこに逆らうことは現在の帝国では不可能だ、とのこと。


これは・・・本当に不可能なのか、舐められてるのか。どっちだか区別がつかない。皇帝の話を鵜呑みにするのであれば、軍人も全てその宗教に属しているため無体を働けば軍がまったく機能しなくなってしまう。だから出来ないと言うことらしいのだが・・・。前も思ったが、この世界の人間達の勢力図に詳しい人が一人でいいから欲しかった。この話が嘘か本当かが全然分からん。


・・・。


悩むだけ、面倒くさいな。ここまできたら、全部力押ししてやるぜ!

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