61話 呪われた武器
ゴルラドが扉に手をかけようとしたが、その手は扉の少し手前で阻まれた。感知用の結界だけでなく障壁も張ってあるようだ。
「おっと、本当に厳重になったな。といってもこの強度じゃ我ら相手では不足だな」
言うや否や障壁があると思われるところへ拳をたたきつける。そこまで力を込めてはいないようだが、バキッという音を立てて障壁は砕けた。確かにたいした防御力は有してなかったようだ。一国の宝物庫にかける防御としては薄いかな?
だがそんなことをしているうちに結界が破られたことに反応した魔法使い?と警備が動き出したようだ。シーンとしていた城内にがやがやと人の声が聞こえだした。
「お、なかなか素早い反応だな。のんびりしていては奴らがきてしまうぞ」
いまさら引き返すこともできないのでゴルラドに続いてささっと宝物庫の中に入る。中はかなりの広さであり、棚がいくつも並んでいる。その棚にはお宝と思わしき物がきれいに整頓され並んでいた。奥のほうには棚に入らない大きさのものがいろいろと飾られているようだ。
「ふーん、宝物庫なんて始めて入ったけどすごい数だな。これが全部値打ち物だとするととんでもない量だが・・・。こんなに溜め込んでなんの役に立つんだ?」
「なにを言う!宝物とは所持していることそのものがすばらしいことである!このよさがわからないというのか!?特にこの王冠なんて非常にすばらしいものだ。各種宝石は一つ一つのサイズも大きくていい物を使っておるな!それに王冠と言えばこの金の輝き。磨きぬかれたすばらしい輝きであるな。おおっ!?この一番上のシンボルはオリハルコンではないか?」
めっちゃテンションあがってるな・・・。
「なあ、それ王冠なんだろ?そんなの頭に乗っけたら首折れないか?」
・・・
どうやら余計な一言だったらしい。むすっとしてしまった。お宝に実用性を求めてはいけないみたいだ・・・。
扉の向こうではゴルラドが張った障壁を叩き割ろうと必死なようだが俺達は美術館かのごとくのんびりと見て回った。最初はさっさと出て行く予定だったが、障壁が破れないようなので気にせず見ることにしたのだ。今更焦って出ようとしても結果は変わらないからね。
ゴルラドは美術品や宝石、金で作られたものなどに興味心身で、先ほどの王冠に代表されるようなものを好んで見ていた。ちょっと違うものだけどビー玉とかも好きそうだが、俺の力じゃ再現できないので、ガラス工芸の技術が進むまでお預けだな。
「ドラゴンってこういう金色のものとか好きなのか?」
「そうだな。割と好むのではないか?ただまあ、我が特別好きであるのは否めんがな」
「お前の家に宝物庫があるとか?」
「もちろんあるぞ!イレーネが良いと言ったら今度案内してやるが、我らで集めた様々な物があるのだ!ふふふ、今から見せるのが楽しみだな」
この夫婦は特別好きなようだ。皆が皆じゃなくてよかった。金ぴかをめぐってのドラゴン同士の争いとかしゃれにならんからな。
俺はゴルラドとは違って武具に興味がある。色々な鉱物でできた各種武器が所狭しと飾られていて楽しい。剣、槍、斧、弓、など良く見られるものから変わった形で知られるシミターやアイラも使うハルバード、刀まであった。刀といえば一度は触ってみたい憧れの武器だろう。前の世界でも実物となるとハードルが高かったからここで直に見ることができたのは嬉しい。せっかくだしちょっと抜いてみようと思ったのだが・・・なんかやばそうな黒い霧が漏れ出ている。
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竜切
刀鍛冶師:竜之介の作
世界で初めて竜の因子を用いて作られた刀
人の幸せを守ることを願って作られた刀だが結果として数多の争いを生み出した
多くのドラゴンの命を刈り取っており、重度の恨みを抱えている
最終的には製作者もこの刀により切られている
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うん、やばそうだ。竜殺しの武器を抱えているとはさすが人間の城と言うべきか。この近さでもゴルラドは大丈夫なんだろうか?
「ゴルラド、竜殺しの武器がここにあるけど大丈夫なのか?」
「なに!?・・・・・・特に違和感はないな?ああ、抜いてなければ効果はないはずだぞ。ってなんなのだその思い切り呪われた武器は」
「竜殺し武器の一番初めての作品だってさ。いっぱい殺してるらしいよ」
「ほう、これが我らが悲劇の原因か。ん?そんなことどこにも書いてないがどうしてわかったのだ?」
「ん?ああ、お前の竜眼と同じような感じだけどものの詳細が分かる目を持ってるんだ。神様に貰った」
ドラゴン達は細かいことに拘らないから自分の能力のこととかは話してなかったな。
「ほほう、それは便利そうな能力だな。にしてもこの武器は持って帰るかの?こんなもの人間のそばには置いておけんし」
「そうだな。これ使われたらやばそうだもんな」
と言う訳でこの武器は失敬することになった。ついでに先ほどの王冠も。俺はやめとけと言ったんだが、ゴルラドが夢中だったので諦めた。人間では頭に載せられないというなら不要だから、我らが使うのだ、だそうだ。どう聞いても詭弁だが、まあいいか。俺がこの城や国に帰属しているわけでもないしね。
扉の向こうでは物理的にぶち破るのを諦めたようで魔法がガンガンぶつかってきている。いくら破れないからって城内で火の魔法はやめた方がいいと思うんだ。ほら、案の定余波で絨毯が燃えてるじゃないか。
「人間の魔法は弱いのぅ。わっはっは。ぐぬっ!?」
余裕かまして笑っていたゴルラドが膝をついた。攻撃を受けた様子はないし、障壁も無事だ。だがすぐにゴルラドの障壁は消えてしまった。
「おい、どうした!?攻撃を受けたのか?」
「いや、この感じ・・・そばに竜殺しの武器を持った奴が来たようだ。ち、力が出ぬ」
そういえば王城に忍び込んでると自慢してたが、竜殺しの武器持ってる奴のそばにもし近寄ってたらあっさり死んでたのでは?
「我としたことが、抜かったわ!ど、どうしたものか。踏み込まれたら抵抗もできずに死んでしまうぞ」
うん、わざわざ自分からピンチになりに行くとは間抜けすぎる。ゴルラドのステータスを見てみると呪い(竜)というものがついていてその効果はこんな感じだ。
全ステータス99%封印
固有能力消失
行動阻害
魔法発動阻害
やばすぎる能力てんこ盛りだ。これを見るにこの世界の人間族は呪いに特化した存在なのではないだろうか。最強の種族にエリアでこれだけ重い呪いがかけられるというのはすさまじい能力だ。しかもそれを個人に依存するのではなく道具に持たせられると言うのはすごいとしか言いようがない。
などと俺は感心していたものの、ゴルラドは青い顔をして汗をだらだらたらしていた。
「まずい、変身が解ける。ドラゴンの姿に戻ってしまう・・・」
ってこんな所で戻られたら守れねえよ!?
「ちょっとだけ耐えろ!今潰してくるから!」
フードを目深に被り、顔だけを一応隠して扉から出る。外には50人以上の兵士が詰め掛けていた。
「盗人め!王のいらっしゃるこの城に盗みに入るとはいい度胸だな!大人しく死ね!」
ご立腹である。まあそうだよね。俺達を殺せなきゃ警備の責任者は物理的に首だろうし、他の連中もピンチだもんな。だが大人しく切られてやるわけには行かないし、時間をかけてる余裕もない。
「本当にすまん」
一応形だけの謝罪をした後、制圧を開始した。戦闘はすぐに終わった。一人一発。殺さないように加減はしたが、気絶しなかったら意味がないのでそこそこは痛かっただろう。最後に一人、竜殺しの武器を持った兵士が残った。
「馬鹿な・・・一般兵だけでなく近衛まで一瞬だと・・・!?」
彼が驚いているうちに手に持っていた竜殺しは鞘にしまわれ俺のバックの中に入った。これでゴルラドの呪いは解除されただろう。
「なっ!?お、俺の武器をどこにやった!?」
「迷惑かけて本当にすまんな。叱っとくから許してくれ」
「し、叱っとく?貴様が泥棒ではないのか?」
「うーん。主犯ではないと言ったところかな?」
「くっ訳の分からんことを!」
「本当にスマン。俺達はこれで帰るから、倒れてる連中を治療してやってくれ。それじゃな」
復活したゴルラドといっしょに廊下を走る。追っ手は・・・こなかった。




