60話 宝物庫
ドラゴンのそばに住み始めても俺達の生活リズムはあんまり変わらなかった。ただその生活のあちこちに隣人が飛び込んでくるだけだ。
戦闘訓練にも参加してくるし、毎日の食事にも結構な数が来る。人間の料理が気に入って、料理を習い始めた奴もいた。肉はそこらじゅうから集めてきてくれるから足りるけど、野菜がないということで家庭菜園?も始めた。森に食材収集に行くときは連れて行ってくれる。メイド軍団が森に行くのも安心して送り出せるようになった。一人に一匹の空飛ぶ護衛がついてる安心感は大きい。
野菜は当たり前だけどすぐに食べれるようにはならないので当座の分は町へ買いにいった。実は町に盗みに入ってる奴はちょろちょろいて(年配が中心)、意外と人間の生活に詳しかったよ。若い連中はその事実に呆気に取られた後憤慨していた。だまされた!とかって怒ってた。まあその後に続いた言葉がこんなおいしいものを教えてくれなかったなんて!だから笑ってしまったけど。
それからオリヴィアの仲間探しも手伝ってくれることになった。一応と思って話を振ってみたけど案の定誰も見たことはないらしい。
ただ狩をするのは大きい魔物だけだし、森の中を注視して飛んでいるやつなんていないので見逃している可能性は大いにあるとのことだった。大きい魔物は魔力もでかいのでそれ目指して飛んで、倒し、帰る。直行直帰だそうだ。それからこんだけでかい体を支えるのにどれほど食べているのかと聞いてみたらあんまり食物はいらないらしい。食事?のメインは魔力で狩りは趣味もかねたおまけらしい。デザートって所だな。だから今までは味とかにもこだわらず捕まえたものをそのままかじるだけだったそうだ。なんなら木の幹を丸かじりするだけでもいいってさ。まともな生物と呼んで良いのか不安だ。
「なあ、やっぱり止めない?」
「しっ、声を出すな!ばれたらひと悶着じゃぞ」
そう思うならこんな事しなきゃいいのに・・・。
今俺はゴルラドと一緒に人間の国のお城の一つに忍び込んでいる。前に言ってた泥棒につき合わされているのだ。昼ごはんを食べた後でゴルラドに誘われ、人間の町に遊びに来た。ゴルラドが冒険者登録しているので獲物を売って買い物もできるぞ、と言われたのだ。俺の悪名がどこまで広がっているかは分からないので俺は冒険者ギルドに入れないが、ゴルラドはそもそもドラゴンだとばれてないので普通に利用することができるのだ。俺は女の子達を誘って皆で行こうと思ったんだけど他のドラゴン達との約束があるからとのことで断られてしまった。
しかたなく二人で出発したのだが、すぐそばの町ではなくそこそこ遠くの町までゴルラドは飛び続けた。
「なあ、どこまでいくんだよ?これじゃ帰りが遅くなっちゃうぞ?」
「イレーネには告げておいたから大丈夫だろう。それにもうじき着くぞ」
もうじきってそろそろお日様沈みそうなんだが?と言えば
「お主下手すると捕まるかも知れんのだろう?だから暗くなってから潜り込むつもりだぞ?」
という返事が返ってきた。一応気にしていてくれたらしい。遠く離れた町だから冒険者証を出さなければ普通に入れると思うんだけどね。それでもわざわざ危険を冒す必要はないし、心遣いを受け取って暗くなってから侵入を果たした。
ギルドに寄り、獲物を複数売り払う。スピード優先で買い取り価格を下げてでも即金を出してもらった。これでなにか欲しいものがあっても困ることはない。さすがにそろそろ貯めてたお金が厳しくなってきてたので、これは大助かりだった。
と、ここまでは予定通りでよかったんだ。ゴルラドにとっても感謝したぐらいだ。だが、その後は微妙だった。
「前城が見たいって言っておっただろう?ここの城はなかなかでかくてな、お勧めなのだ。今からなら好きに見れよう?」
へー、それは確かに気になるって思ったけど真っ暗じゃ俺には見えないから!
「お前、この闇の中でも見えるのか?」
「当然じゃろ?ドラゴンの瞳ならこのぐらいの暗さは問題に・・・あ、お主には見えないんだった・・・」
「人間には見えない時間だから潜り込めたってのを忘れてない?」
「ぐぬぬぬ・・・」
どうしてこう竜族の男って抜けてるんだろう・・・。
「そうだ!夜の闇で見えないなら近づけば良いのだ!外観は見えずとも内装なら見えるぞ!よし、忍び込のだ!」
はあ!?
「待て待て!忍び込むって前に言ってた泥棒に入るって奴か!?」
「大丈夫じゃ、何度もやっておるから」
「そういう問題じゃないんだけど!?俺は一応人間だから倫理観って物があってだな!」
「ええい、騒ぐな。見つかったらめんどくさいであろうが。ほれほれ行くぞ!」
とゴルラドに押されるまま来てしまった。いや、興味がなかった訳じゃないから本気で抵抗したのかと言われると困るのだが・・・。
二人してこそこそと廊下を移動する。空間魔法で兵士の動きは完璧に把握できるし、俺達の気配を察知できるような達人はいないようなので、今のところ怪しまれることすらない。廊下で行き会いそうになったら天井に張り付くだけだしね。悪いことをしているという罪悪感半分、忍者ごっこをしているような面白さ半分だ。だんだん面白さのほうが勝って来ている気がする。いかんとは思いつつも、ちょっと楽しい。
内装は良く分からないけど高そうなものがいっぱいだ。絨毯然り、柱飾り?然り。基本的には松明が明かりなのだが、所々魔道具のようなものも見える。鑑定してみると魔法の力で動く電灯だそうだ。気になるお値段は一個につき金貨10枚だそうです。これ20個で俺のお屋敷が買えるのか。ん?電灯20個で家って単価おかしくね・・・?これたくさん飾ったら家より中身の方が高くなるのか。意味がわからんな。
あれかな、見得のために配置するものなのかな。メインと思われる通路にしかないからたぶんそういうことだろう。
「それで、どこに向かってるんだよ?」
「ん?ひとまず宝物庫だの。人間のお城で一番面白い所と言えばそこだからな」
確かにちょっと気になる。忍び込むだけ忍び込んでみたいな。
ゴルラドの案内で宝物庫の前に無事到着。ただ扉の前には5人も兵士がいた。ちょいちょいとゴルラドに呼ばれて少し離れた所へ移動する。ちなみに俺達は天上にくっついている。こそこそ動く姿はごk、昆虫のよう。ちなみに土魔法で突起物を出してそれに捕まってるだけだ。
「おかしいのう?前は結界が2枚張って有っただけなんじゃが、兵士がたくさんおる」
いや、それ絶対お前達のせいだよ。前に入られたから警備厚くしたんだろ。
「むう、全員気絶させるしかないか」
「そこまでして進入するのか?それに泥棒はまだ気が咎めるんだけど・・・」
「いやぁ、あの光景は一度見ておかんとな。それに泥棒ではないぞ。代わりの獲物をちゃんと置いてきたからな。それなのにこんなに警備を厚くするとはどういうことであろう?」
いや、金銭的には文句ないかもしれないけど、泥棒に入られてまんまと盗られた挙句、宝物庫血だらけにされて怒らない王様はいないと思うよ。
「結界はどうするんだ?触ったらばれちゃうだろ?」
「うむ。だからささっと入って、見るもの見て、貰うものを貰ったらさっさと脱出だの」
「なにそのごり押し。完全に勢いだけじゃないか」
「解除した時点でばれるのだから仕方あるまい?」
まあ、それはそうなんだが・・・。
「では、行くぞぃ!我に続くのだ!」
「あ、ちょっ」
ゴルラドは俺の制止?なんて当然聞かず、すでに兵士の懐に入っていた。次の瞬間には5人全員がばったりと倒れ込む。
「お前、手馴れすぎじゃ・・・」
「わはは、そう褒めるでない!」
断じて褒めてねーよ。




