5話 野生
さて食材を確保したわけだが、当然生では食べられないので料理する必要がある。
これは任せて?欲しい。
なにを隠そう地球では
料理なんてほとんどしたことないのだ!サバイバル経験もない!
・・・
・・・
・・・
うん、基本は知ってるよ?
塩辛かったからって砂糖ぶち込んだりもしないよ?
一応オムライスとかハヤシライスぐらいなら作れるのだ。
ご飯ないけど。
そういえばルー売ってないからハヤシライスは無理か。
カレー?カレーは嫌いだ。辛いものが苦手なんでな!
どっちにしろ配合とかわかんなかったわ。
野菜炒めも作れるぞ。塩振って火入れるだけだけどな!
あ、塩もなかったわ。ついでにフライパンもコンロも。
・・・
やめよう余計にめげてくるだけだ。
枝に肉を刺して焼くぐらいしかできないから今の時点では誰が作っても味なんて変わらないだろう。
とりあえず空腹を紛らわすために木の実を食べながら火の支度をする。
あ、木の実はジャンプして木に登り、取れるだけ取った。食べられるものは何でも欲しいからね。ちまちましてめんどくさかったので枝ごと切ろうかとも思ったが、俺の命の恩人?恩木?であることからやめておいた。実を食べるのは許して欲しい。
酸味が強いが食べられないというほどではない。
うまい!という感じではないが贅沢は言ってられないのだ。
早くこの森を抜けるだけの強さが欲しいな・・・。
火をおこすには・・・『火魔法』だな。
先ほどの『水魔法』を使ったときを思い出しながら、今度は指先に魔力を集める。
指先からライターのような火がでるのをイメージして・・・
ボッ
だせた。『水魔法』とやることは同じだったので簡単だったな。
木の枝を集めてきてそこに火をつけた。
焚き火って石とかで囲うんだろうか・・・。よくわからない。
ひとまず木を入れ、消えかけては火を追加するをしばらく繰り返した。
たぶん乾燥してない木を放り込んでしまったのだろう。なかなかいい感じに燃えないし、煙も出る。
魔法がなかったら火を起こすのにもとても時間がかかっただろう。
ライターもなくて木をこすり合わせて火をつけるとかだったら、当分木の実生活だな。
MPを無駄遣いした気もするがレベルが上がったおかげで今すぐ困ることもないだろう。
ちゃんとした解体のしかたなんて知らないので、とりあえずできるだけ肉が多くなるように切った。剣しかないのですごい切りにくかった。包丁が欲しい。
骨と内臓は穴を掘って埋めた。ちゃんと処理をすれば食べられるのだろうが、チャレンジする気にはなれない。安全第一である。
木の枝に刺して火に当てる。焼けるまでしばらく放置だ。
枝が倒れて土が付いたり(洗った)、生焼けで食べられなかったり(塊がでかすぎた)と、
うまくはいかなかったが、なんとか腹は満たせた。
塩もないので味もいまいちというか肉の味だけだったが、ご馳走様でした。
ひとまずこの木を拠点にレベルを上げてから森をでよう。スキルと才能値のおかげでそう時間はかからないはずだ。今のところこの近くにでかい生物もいないようだしな。
この先の方針としては『剣術』と『身体操作』のスキルレベルを中心にあげていくことにする。
この二つをあげる理由としては、森を抜けるために魔法よりもこちらだろうと言うことがひとつ。
視界がよくないので遠距離戦よりは近距離重視だろう。
そしてもうひとつが剣への憧れだ。RPGといえばまずは剣だろう。
テレビでみた剣の振り方をイメージしてぶんぶん振り回す。
『剣術』スキルがなければ子どものチャンバラだったのだろうが、ある程度の動きを剣術スキルが教えてくれる。次第に自分の持っていたイメージではなく、『剣術』スキルの補正そって体を動かすようにしていった。
夕方までには『剣術』と『身体操作』が3にあがっていた。
「今日はここまでだな。」
心地よい疲労感に満足し、汗を拭こうとしてタオルがないことを思い出した。
そして当たり前だが風呂もシャワーもない。魔法で作れそうだが・・・。
乾いた布がなければ拭く事もできない。温風の魔法はまだ練習していない。
もっと早く気づけばよかったのだが、あたりはもう暗くなりそうだ。
この世界で生きることを覚悟したわりには、向こうの世界の感覚が抜けていないようだ。
はやく気持ちを切り替えないと大事なところでぽかをやりそうだ。我ながら不安だ。
汗はちょっと気持ち悪いが今日は諦めよう。早く文化的な生活に戻りたい。
寝床はかわらずうろの中だ。だが気絶していた前回とは違い今回は危険な森の中だという認識がある。この中に入っただけではぐっすりは寝られないだろう。
『土魔法』で壁を作るか空間魔法で結界を張るかだな。
『土魔法』で大きな壁を作るのもいいが、目だってしまうかもしれない。
今まで出会ってきた魔物だけなら『土魔法』で十分だと思うが、この森にどんな魔物がいるかはわかっていない。
ここは予定通り?『空間魔法』の出番だろう。こういう時のために時とあわせて適正をあげてあるのだ!
そんなわけで『空間魔法』の練習を始める。要領としては今までと同じだし、適正も十分。
結界を張るのは簡単だった。
ただ期待したような魔法やら物理やらを跳ね返す壁のようなものではなかった・・・。
探知結界と言えばいいのか、そこになにかが入ってくればわかるというものだった。
地面に結界を展開し、そこに石ころを投げ込んでみれば、確かになにかが横切ったことを感じることができる。これはこれで有用だろう。
レベルが低いせいか、結界を横切ったものがなんだかはわからなかったが。
それともうひとつ問題がある。
小さいのだ。
寝る空間の周りと言うことで20mぐらいの結界を作ろうとしたがうまく発動しなかった。魔力の高まりや集まりは感じるのだが、それが一向に魔法になろうとしないのだ。
自分を鑑定してみると『空間魔法』のLvは1である。たぶんこれが原因で小さいサイズの結界しか張れないのだと考えられる。いずれレベルが上がると大きくなるのだろう。
とりあえず今のレベルでできる大きさを知るためにイメージを変えながら何度か結界を張ってみた。すると5m以上大きな結界を作ろうとすると不発であることがわかった。
5m・・・。
微妙である。感知したところで起きる前に飛び掛られたらアウトではなかろうか。
ないよりはまし、のはずだ・・・。
またこの結界はいつまでもつのかもわからない。
Lv1であることを考えると短い時間で消えてしまうかもしれない。
とりあえず体も頭も限界だ。この結界で我慢しよう。
「明日は風呂を作ろう」
おやすみなさい。